としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

2020年09月

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相川英輔さんの『ハンナのいない10月は』を読みました。

『ハンナのいない10月は』は大学を舞台にした作品ですが、現代の少子化の影響に伴う大学統合をテーマの一つにしているのが独特でおもしろかったです。

また、学生の視点だけではなく、大学教員の視点からみた大学を描いているのも魅力的でした。

以下、あらすじと感想を書いていきます。





『ハンナのいない10月は』のあらすじ


正徳大学4年の佐藤大地は、内定を獲得することができ残る大学生活は単位を取得するだけだ。

就職活動の影響で授業の出席日数が足りないため、大地はそれぞれの授業を担当する先生に単位取得の配慮を願い出るのだが、「文学」を担当する森川先生だけが特殊な条件を提示してきた。

「この部屋にある本から、僕が最も好きな一冊を当ててごらん。正解できたら単位を与えるよ」

森川の研究室には2000冊ほどの本が置かれているが、はたして大地は森川の最も好きな本を見つけて無事大学を卒業することができるのか…。

また、大地の卒業をかけた物語の裏では正徳大学を貶めようとする黒幕が暗躍している。森川たち正徳大学の教員たちは正徳大学を守ることができるのか。

正徳大学を舞台にした青春ミステリ小説が今始まる。


感想(ネタバレあり)



森川先生の本に対する思い


大地は森川の最も好きな本が「さかさま川の水」だと予測し、森川はそれに対して「正解だよ」と言いました。

しかし、実際は以下の台詞から分かるとおり森川は全ての本を大切にしていて本には優劣をつけていませんでした。

本に順位なんてつけられない。どれも同じぐらい大切だよ。格好つけじゃなくて、本当にそう思うんだ。ある意味、僕は本に生かされているようなものだからね。沢山読んで、分析したり論じたりしたからこうやってここで働くことができている。僕に居場所を与えてくれたのは本なんだ。優劣なんてつけられないよ
『ハンナのいない10月は』 p.168より

この台詞を読んで、私は今までこの本は面白かった、面白くなかったなどと本に優劣をつけていたことを反省してしまいました。

もちろん読んでいる本の中にはおもしろくないと感じる本もあるかもしれません。けれども、これからはなぜその本を面白くないのかをしっかりと分析して、おもしろくないから駄目な本だったとすごに優劣をつけるのをやめたいと思いました。





受けてみたい「文学」の授業


『ハンナのいない10月は』を読んで、とりあえず森川先生の「文学」の授業を受けてみたいと感じました。

森川は、最も好きな一冊を見つけた大地に出席日数は足りないが単位を与えましたが、そのことが原因で最終章ではネットで誹謗中傷をあびます。

しかし、「文学」の授業を過去に実際に受講した在学生やOBから、森川先生の授業は少し変わっているがとてもためになったという森川に加勢する意見をもらうことができます。

なかなか印象に残らない教養の授業で過去の受講者がどんな内容だったのかを覚えているなんてよっぽど面白い授業だったに違いありません。

また、森川が大地に単位を与えた場面からも分かるように、森川はただ授業を受けている学生ではなく真剣にシラバスに掲載されている目標に向かい学習している学生を高く評価していることが分かります。

また、単位を落としてしまった学生にどこが悪かったのかを真剣に話したという過去もあり、森川の教育的指導力の高さが分かります。

なので、私は森川の文学の授業を受講してみたいと感じました。


大学の裏側


大学といえば学生を育ている場や研究としての場の印象が強いですが、『ハンナのいない10月は』では大学の裏側についてもしっかりと書かれていました。

この物語の舞台となっている正徳大学はおそらく私立の大学であると考えることができますが、オープンキャンパスの場面では定員割れを起こさないために、高校生に大学の魅力を伝えようと大学全体で頑張っていました。

このことから大学も何もしなくても学生が入学してきてくれるような場所ではなく、会社と同じで大学同士で学生獲得のために激しい競争があることが分かります。

こんかいの物語ではこの競争の裏でスパイが存在していたりしますが、実際に企業スパイ的な人って存在するんですかね?

もし存在していたとしたら結構な大問題な気がします(笑)。


また、近年の大学では専門科目に重点が置かれていて教養科目はないがしろにされていることが書かれていました。実際に最近まで学生だった私からしてみても教養科目ってとりあえず単位をとるためだけに受けている授業という印象が強かったです。

しかし、教養科目は学生の視野を広げるために儲けられている授業なので、多様性が広がる今、教養科目はとても大切な授業です。

『ハンナのいない10月は』では教養科目の重要性も伝えたかったのかもしれません。


他にも学内での派閥争いや、講師と教授陣の格差などが他の作品ではなかなか描かれないことがかかれていて面白かったです。



最後に


『ハンナのいない10月は』は、今後の正徳大学がどうなるのかが気になる終わり方をしていたので、もし続編がでるようなことが必ず読みたいと思いました。

本作をまだ未読の方はぜひ読んで見てください。







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C言語やC++でbit演算を使うときに最低限これだけは覚えておいた方が良いという基本的な使い方をまとめました。





AND演算子でマスクする


マスクは特定のbitを強制的に0にしたい場合に使用します。

以下に01010101に対して下位4bitをマスクするサンプルコードを示します。
#include 

#define EVENT 0b11110000

int main(void){
    unsigned char sample = 0b01010101;

    sample &=  EVENT;

	return 0;
}



OR演算子でセットする


セットはマスクとは逆の操作で特定のbitを強制的に1にしたい場合にしようします。

以下に01010101に対して上位4bitをセットするサンプルコードを示します。
#include 

#define EVENT 0b11110000

int main(void){
    unsigned char sample = 0b01010101;

    sample |=  EVENT;

	return 0;
}



XOR演算子でbitを反転する


bit操作を行っているとbitを反転したい場面によく遭遇します。

そういうときは、XOR演算子を使いましょう。

以下に01010101の全てのbitを反転するサンプルコードを示します。
#include 

#define EVENT 0b11111111

int main(void){
    unsigned char sample = 0b01010101;

    sample ^=  EVENT;

	return 0;
}



特定のbitの値を取り出す


"N"bit目を取り出したいというときは、シフト演算子を使えば楽に実装することができます。

以下に01010101の4bit目を取り出すサンプルコードを示します。
#include 

int main(void){
    unsigned char sample = 0b01010101;
    int N =4;
    int nBitNum;

    nBitNum = (sample >> N) & 1;
    printf("%d\n", nBitNum);

	return 0;
}



最後に


bit演算子の使い方について簡単にまとめましたが、随時便利な使い方を見つけ次第記事を更新していきます。







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シェルスクリプト内でsudoコマンドを使用したいことがあり、使う方法を調べたところexpectコマンドを使用すればよいと分かりました。

使い方を防備録として記録します。





シェルスクリプトの中でsudoコマンドを使う方法


最初に結論からになりますが、以下のスクリプトでできます。
#!/bin/sh

PW="password"

expect -c "
set timeout 1
spawn sudo su
expect \"password:\"
send \"${PW}\n\"
expect \"$\"
exit 0
"

passwordには自分のパスワードを入力してください。






expectコマンドについて


簡単にexpectコマンドについて紹介します。

expectは対話を自動化するコマンドです。

expectコマンドを使おうとして、『expect コマンドが見つかりません』というエラーが出た場合は、以下のコマンドでインストールしましょう。
apt-get install expect

上記のスクリプトでは以下の5つのexpectコマンドを使用しています。


コマンド説明
set timeoutタイムアウトの秒数を指定する。
今回の場合、「password:」という文字列が出現しない場合、1秒後にタイムアウトする。
expectマシンからの応答を読み取り、パターンマッチした場合にexpectより下のコマンドを実行する。
今回の場合、sudoコマンドを実行すると「password:」という文字列が現れるので、出現後にパスワードを送信するために使用している。
spawnexpect内でプロセスを生成するコマンド。
今回の場合、sudoコマンドを実行している。
sendマシンに文字列を送信するコマンド。
今回の場合、sudoコマンドで必要なパスワードを送信している。
exitexpectの処理を終了させる。
数値を指定することで返り値として返すことができる。


この5つのコマンドを使いこなせば、シェルスクリプト内でsudoを使う他に、様々なスクリプトを自動化することができます。




最後に


シェルスクリプトの中でsudoコマンドを使用するという特殊なケースはなかなかないかもしれませんが、誰かの参考になれば幸いです。

この記事を見ている人の中でもっといい方法を知っている方がいましたらコメントで教えてください。



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森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』を久しぶりに読み返しました。

本作は様々な賞を獲得したり、2017年にはアニメ映画化されるほどの大人気作で、森見登美彦さんの代表的な作品です。

読んでいると自宅にいるにも関わらず、自分も先輩や乙女と京都の街を冒険しているような気分になれました。

以下、あらすじと感想を書いていきます。






あらすじ


「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。

しかし、「黒髪の乙女」は何度出会っても先輩の想いには気がつかない。

先輩も彼女に自分の気持ちを伝えることができず、頻発する偶然の出会いがあるたびに「奇遇ですねえ!」と言うばかり。

そんな二人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者や珍事件との出会いばかり。

先輩は幾多の珍事件のなかで黒髪の乙女に想いを伝えることができるのか。



感想(ネタバレあり)



純粋な『黒髪の乙女』


先輩が想いを寄せる、サークルの後輩の黒髪の乙女がとにかくかわいい作品です。

黒髪の乙女は純粋な性格で人を疑うということを知りません。その日出会った人に何度胸を触られたとしても、偶然手があたっているだけだと思うような人物です。

しかし、その純粋さが原因で先輩が何度偶然を装って出会ったとしても、先輩の「奇遇ですね」という言葉を信じてしまい、なかなか先輩の想いに気がつきません。

先輩が彼女と結ばれるために必死に努力しているのに、想いが実らない様子が読者をやきもきさせます。

ただ、物語を読み進めるにつれて、先輩の想いに気がつき純粋無垢な少女から恋する乙女へと変化していきます。

最後まで読んだ人は恋する乙女になった彼女にやっと想いに気づいたかと安堵すること間違えないでしょう。



とにかく遠回りな『先輩』


『黒髪の乙女』との恋愛を成功させるために、先輩は様々な手を打ちますがとにかく遠回りな方法を選びます。

読んでいる多くの人は、直接遊びに誘ったりしたら気持ちをもっと簡単に伝えられるのにとやきもきしたに違いがありません。

黒髪の乙女が古本市に行くと分かれば、普通でしたら一緒に行きましょうと誘うでしょう。

しかし、先輩は偶然出会い、同じ一冊の本をとろうとして手が触れるという少女マンガのような運命の出会いを求めて彼女を追いかけます。そんな先輩の様子を読んでいるとおもしろいのですが、何だか少しだけ切ない気持ちになってしまいます。

もしかしたら現実でも、人生で恋愛をした経験がなければ、先輩のように草食系の中の草食系のような行動をしてしまう人がいるのかもしれません。

ただ、先輩のように彼女をこっそり追いかけているとストーカーとして訴えられる危険があるので気をつけないといけませんね(笑)。





登場人物の感情や行動が伝わりやすい独特な文体


森見登美彦さんの書く文章は他の作家では味わえない個性的なものです。

特に先輩や乙女の心理を描写する文章が上手で彼らがどのようなことを考えているのかが、伝わりやすいため読んでいるこちらも彼らと一緒に四苦八苦しているような気分になります。

個人的に一番気に入っている文章を紹介しておきます。

彼女が後輩として入部してきて以来、すすんで彼女の後塵を拝し、その後ろ姿を見つめに見つめて数ヶ月、もはや私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威と言われる男だ。

『夜は短し歩けよ乙女』 p.81より

『私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威』という表現がとても好きで、どんだけ彼女の背中を追っかけて来たんだよっていう感じです。

他にも魅力的な文章がたくさんで読んでいてとても楽しい気持ちになります。



最後に


『夜は短し歩けよ乙女』を久しぶりに読み返しましたが、とてもおもしろかったです。

映画を見たことがないのでそちらも見てみたいです。

また、関連作品である『四畳半神話大系』も読み返したくなりました。近いうちに読み返そうかな。







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湊かなえさんの新刊『ブロードキャスト』が販売していたので早速購入して読ませていただきました。

前作の『未来』は10周年にふさわしい湊かなえさんらしいイヤミス小説でしたが『ブロードキャスト』は前作とは打って変わって爽やかな学園青春小説です。

湊かなえが10周年にして初めて挑む学園青春小説に読む前からワクワクがとまりませんでした。

以下、あらすじと感想を書いていきます。







『ブロードキャスト』のあらすじ


町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。

その後、陸上の強豪校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、ある理由から陸上部に入ることを諦め、同じ中学出身の正也から誘われてなんとなく放送部に入部することに。

陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。

目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに参加することだったが、政策の方向性を巡って部内で対立が勃発してしまう。



感想(ネタバレあり)


今までの湊かなえさんの作品とは違い読了後とても爽やかな気分になる作品でした。

イヤミスが得意な普段の湊かなえさんらしさは少ないけど若者に訴えかけたいテーマが分かりやすく私はとても好きな作品です。


物語の終わりでは圭祐が陸上をできなくなったという挫折から立ち直り正也たちと放送部のコンクールで優勝するという新しい夢を見つけることができてよかったです。

圭祐は陸上ができなくなったことがきっかけで良太との距離が離れてしまいましたが終章でのやりとりを読んでいると今後も親友としてうまくやっていけそうですね。


『ブロードキャスト』のメインテーマは挫折から立ち直り新しい夢を見つけることだと思います。

しかし、私はメインテーマ以上にイジメに対する湊かなえさんのメッセージが印象的でした。今までの作品でもイジメをテーマにしているものはありましたが本作は特にリアリティが高かった気がします。

咲楽が中学時代いじめらていてスマホ恐怖症になってしまったという話をきっかけに正也はラジオドラマである「ケンガイ」を書きあげます。

「ケンガイ」はSNSでいじめにあった人間がケンガイという症状を発症してしまい発症者がいる半径1㎞以内ではケータイが県外になってしまい使用できなくなるという内容です。

「ケンガイ」の作中ではイジメの事実を認めない大人やいじめから救われるには家族や友人からの助けが必要であるということが表現されていました。

正也のラジオドラマに関わったおかげで圭祐が咲楽をイジメる生徒にたいしてイジメを助長するようなSNSのグループに入らないという場面もよかったです。イジメが起きているクラスで圭祐や圭祐を助けた堀江、委員長のような存在があればSNSイジメは軽減するんでしょうね。

本作を読んで自分の周りでイジメが起きている人がいれば一人では勇気はでないかもしれないが、仲間とともに圭祐のようにイジメに対して立ち上がってほしいです。また自分の友人がイジメられていたら自分もイジメる側にまわるのではなく友人を支えてほしいです。



ところでみなさんは本作でどの登場人物が好きですか?

どの登場人物も魅力的なんですが私は陸上部の顧問である村岡先生と原島先生が好きです。

湊かなえさんの作品にでてくる教師はだいたいはダークな一面を持っている人物が多いです。

しかし、『ブロードキャスト』の教師陣はそんなことがなく素直に好感がもてる人物ばかりです。

村岡先生は、序章を読んだだけでは単なる熱血教師で自分に酔っているのでは…というイメージがありましたが、終章で自分に酔っているだけではないことが分かりました。

圭祐と村岡先生のインタビューシーンは感動的です。村岡先生は自分が犯した選手生命を失うという失敗を良太にしてもらわないために生徒に恨まれようが良太の選手生命を優先しました。

これを知ったとき、序章を読んだときの私はなんて愚かだったんだと後悔しました。


原島先生も事故で陸上ができなくなった圭祐にもう一度陸上をやらないかと問いかける場面があります。

もし圭祐が正也と放送部で作品を作る良さに気が付かなければ、きっと原島先生の言葉に救われたのでしょう。


また、教師陣で登場が少ない放送部の顧問である秋山先生も私は嫌いではありません。

読む人によってはこんな顧問嫌だなと思う人がいるのではないかと思いますが、私は新米教師は忙しいだろうし全国に行かなければならないというプレッシャーがあるせいで部活に積極的になれないという気持ちが分かります。

ただ今後、秋山先生は自分の行動を反省し、忙しいながらも部活の顧問として生徒と一緒に成長していくような気がします。




最後に


『ブロードキャスト』は本当に爽やかな青春小説で湊かなえさんのこういった作品も今後も読んでみたいですね。

本作でも書かれていましたが物語の捉え方は人によって違うと思うので、皆さんの感想をコメントで教えていただければ嬉しいです。好きな登場人物なども聞いてみたいな。


また、この作品は学生に読んでもらいたいので、早く文庫化して手軽な値段で購入できるようになってほしいです。

続編の『ドキュメント』も読みました。










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