としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

2020年10月

芥川賞候補作にも選ばれた、今村夏子さんの『星の子』が文庫化されていました。

さっそく読んでみたところ、ラストシーンがすごく印象的でとても考えさせられる作品でした。

以下、感想を綴っていきますがネタバレもありますので、ネタバレが嫌だという方はご注意ください。



『星の子』の感想

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宗教を信じる父と母

主人公のちひろは幼少期病気でした。その病気を治すために父と母は様々な医療機関に行ったり民間療法を試したりしますが、一向になおりません。

そんなあるとき、父の会社の同僚である落合さんから「金星のめぐみ」と呼ばれる水が病気にきくと勧められました。ガーゼを「金星のめぐみ」で濡らして、毎日ちひろの体をふくと病気が治ると落合さんは行ってきました。

「金星のめぐみ」を使って父と母は毎日ちひろの体をふいてあげました。するとたった二か月足らずでちひろの病気は完治してしまいます。

このことがきっかけで父と母は宗教を信じるようになり、どんどん宗教にのめりこむようになります。


私は宗教を信じていない人間ですが、もしちひろの父と母のような体験をしてしまったら怪しい宗教を信じてしまうかもしれません。

ちひろの病気が治ったのがたまたま「金星のめぐみ」を使っていたタイミングだっただけなのかもしれません。しかし、今までどんな治療をしても治らなかったものが「金星のめぐみ」を使った瞬間に治ったのですから宗教を信じ始めた二人の気持ちは分からなくないです。

世の中の宗教を信じている人の中にはこういった奇跡的な体験をした結果、信じ始める人がすくなくないのかもしれませんね。




宗教家の親を持つ子供は宗教を信じるべきなのか


小学生時代のちひろは父と母が宗教にのめり込んでいる姿を疑問に思わない、とても純粋な子供でした。

しかし、姉のまーちゃんが家出したことや、友人のなべちゃんとの会話がきっかけとなり、ちひろは徐々に父と母と同じように宗教を信じてよいのか疑問を持ち始めます。

この作品は宗教を信じることは否定していませんが宗教を信じるかどうかは自分の意志で決めてほしいという、今村夏子さんの意志がちひろを通して詰められている作品なような気がします。

子どもという生き物は外の世界を知らない狭い世界でいきているため親に勧められたことはそのまま純粋に信じてしまう傾向にあります。
この作品を読んで宗教以外のことでも、もし子どもに対して自分の考えを強要している親御さんがいましたら本当に正しいのか一度考え直してほしいですね。


多くは語らないラストシーン


普通の作品でしたらラストシーンでオチがありその作品がハッピーエンドであったのかバッドエンドであったのかが分かります。

しかし、『星の子』は宗教施設の外で親子三人で星を見ているシーンで終わり、今後ちひろがこのまま親子三人で暮らし続けるのか、高校生になることをきっかけに家をでるのかが明確には語られていません。
最初に読んだときはこのシーンで物語が終わるということに驚かされました。ですが二回目に読んだときは両親に気を遣うちひろとちひろに気を遣う両親のお互いのことを思いやるシーンが描かれているすごく良い作品だと感じました。

ちひろとしては両親だけにするのは不安なのでいつまでも両親と一緒にいたいという気持ちがあります。そのためラストシーンでは両親に叔父の家に住んでほしいと言われる前に、宗教施設に戻ろうとします。

しかし、両親はちひろのことを考えて叔父の家に住んでほしいと言うために、ちひろとまだ星空を眺めていたいと言い続けます。


最終的に両親がちひろに思いを打ち明けたのかは分かりませんが、私としては打ち明けていたらいいなと思いました。

ちひろには一度家をでて宗教にそまっていない生活を送った後に、自分の意志で両親と同じように宗教を信じるのか、それとも信じるのをやめるのか決めてほしいと思いました。


最後に


今村夏子さんの作品ってほかの作家と比べてなんか独特ですがすごく印象に残る作品が多いですね。
もし、この記事を見て『星の子』に興味をもったら是非一度読んでみてください。

また、すでに星の子を読んだという人は他の作品も面白いので是非一度読んでみてください。

『星の子』は2020年に映画化もされるみたいです。

主演は芦田愛菜!

映画もどのように描かれるのかが楽しみですね。


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辻村深月さんの『朝が来る』が文庫化していたので読んでみました。

『朝が来る』は2016年にドラマにもなっている作品みたいです。本作を読んだ後にドラマの配役を見たのですが旦那役にココリコの田中さんはなんかピンとこなかったな。

映画では井浦新が旦那やくみたいでイメージにぴったりで安心しました。(2020年10月11日追記)

本作は家族の絆を描いた作品なので家族の関係で悩んでいる人にはぜひ読んでもらいたいです。



『朝が来る』のあらすじ


長くて辛い不妊治療の末、特別養子縁組という手段を選んだ栗原清和・佐都子夫婦は民間団体の仲介で男子を授かる。朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平穏な日々を過ごしていた。そんなある日、夫婦のもとに電話が。それは息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった——。



感想


『朝が来る』は色々と考えさせられる作品でした。物語を楽しんで読むというより特別養子縁組や本当の家族の絆について考えさせられる作品であったという印象が強いです。

本作は40代で子どもを授かった栗原夫婦と10代で子どもを妊娠・出産した片倉ひかりの二つの視点から構成されている作品となっています。

特別養子縁組で朝斗を授かった栗原佐都子の視点では、血のつながりがなくても朝斗が大切であることや特別養子縁組で朝斗を授かるまでの過程が語られており、不妊治療に対する男女間の考えの違いや、養子に対する日本国内での考え方が分かります。

一方朝斗を生んだ実の母である片倉ひかりの視点では、10代で子どもを産むことになった苦難や朝斗を産んだ後の人生について書かれています。若くして妊娠した女性の一例が描かれています。

『朝が来る』では望まれずに生まれてくる子ども、子どもを授かることができない夫婦、避妊の考えが甘く若くして妊娠してしまった女性など実社会で実際に問題となっていることが取り上げられています。

こうした問題に関心のある方にはぜひ読んでほしいです。またこうした問題について詳しく知らない人でも本作をきっかけに興味を持ってほしいと思いました。

私は特に男性に読んでもらいたいと思った作品でした。多くの男性は不妊治療に関して女性だけの問題であると考える方が多いと思いますが男性にも問題がある場合があると知ってもらいたいです。


以下多くのネタバレありの感想になります。







栗原夫妻の家族に対する思い


第一章では、朝斗が養子であるが栗原夫妻にとってどれだけ大切な存在であるかが語られています。

朝斗が大空君がジャングルジムから落とされたという疑いをかけられた場面でも朝斗が大空君のことを落としていないという発言を佐都子は信じようとします。

普通の親ならば大空君一家が同じマンションに住んでいるため問題を荒立ててしまうのは自分にとって嫌なので、朝斗が悪くないと思っていてもとりあえず謝っておこうとなる人が多いのではないのでしょうか。しかし。佐都子は不安になることもありましたが謝りませんでした。

結果的に大空君が親に怒られるのが嫌で嘘をついたということでしたが、佐都子のように朝斗が本当のことを言ってるにしろ嘘を言っているにしろ真実が分かるまで信じてあげるというのは家族の絆を育むうえでとても重要なことなんでしょうね。

また片倉ひかりと話し合いをした場面でも栗原夫妻の朝斗に対する思いが分かります。

朝斗にはベビーバトンの方針であるということは関係なく昔から少しずつ自分たちは産みの親ではないということを教えていました。もし朝斗が産みの親に会いたいと言い出せば夫婦はどうにかして片倉ひかりの連絡先を探し出し合わせたに違いありません。

また栗原夫婦は朝斗のことを大切にしていると同時に朝斗を産んだ片倉ひかりにとても感謝していました。

そのため朝斗をネタにしてお金をゆすろうとする女性が片倉ひかりである信じようとしませんでした。彼女に感謝し尊敬しているからこそ朝斗の年齢を間違うなどの小さな疑問が脅迫してお金を盗ろうとしている女性が片倉ひかり本人ではないと確信をもって言うことができたのだろう。


朝斗を授かるまでの長い道のり


第二章では、特別養子縁組の制度で朝斗を授かるまでの栗原夫婦の長い道のりが描かれています。

30代半ばで母親に不妊治療をしたほうがいいのではと言われたことをきっかけに、栗原夫婦は話し合い不妊治療を始めることを決めました。

当初は妻である佐都子のみが不妊治療に通っており夫はどこか他人事でした。こういった妻だけが不妊治療を行っているというのは実社会でもよくある問題みたいで男性は自分が原因でないと思っている人が多いみたいです。

けっきょく妻が夫にも不妊治療に一緒に行くように促したおかげで子どもができない原因は夫にあることが分かりました。

夫は無精子症であるみたいで、原因が分かってから不妊治療を続けるか夫は葛藤しますが最終的に治療を行うことを決意します。女性の不妊治療も過酷ですが男性の不妊治療も多くの時間や痛みが伴うため仕事を続けながら行うのは大変みたいです。

不妊治療を夫婦で続けて四年が経過したころ力尽きた夫の表情を見た佐都子は「もうやめよいうか」と清和に優しい言葉をかけます。

「止めたいって言えなくてごめん」と話す夫の言葉は読んでいて涙が止まらない場面でした。

こうして二人はこれからも二人だけで生きていくことを決めますが、その直後に自宅で特別養子縁組に関する番組を見ます。

特別養子縁組に興味を持ったのは佐都子だけだと思っていましたがインターネットで調べてみると清和が検索した履歴が残っていました。

このことから夫婦ともに特別養子縁組で子どもを授かりたいことが分かり、ベビーバトンの説明会に行くことを決めます。

ベビーバトンの説明会の前半では特別養子縁組を組む条件が厳しいなど暗い話ばかりでしたが、後半には特別養子縁組で実際に子どもを授かった家族が表れて子どもの良さについて語ります。

この説明会の中で特別養子縁組は、「親が子どものを探すためではなく、子どもが親を探すための制度」と説明され栗原夫婦は大人の事情ではなく子どものための制度であるということが分かり子どもを授かる準備を整えます。

それからすぐに広島で赤ちゃんが生まれたという知らせをうけ病院まで直接行き栗原夫婦は朝斗を授かります。その後、片倉ひかりに赤ちゃんを産んでくれたことのお礼を言いにいきます。

朝斗の名前の由来の「朝が来たような思いがしたこと」という台詞から夫婦が朝斗を授かったことで長いトンネルから抜け出せたのが分かりますね。

この章を読んで親のためではなく子どもの未来を助けるために養子をとることは悪いことではないと分かりました。現在の日本では養子は少ないでしょうが、朝斗のような子どもを助けるために養子のための制度を充実させてほしいですね。


片倉ひかりの人生


第三章は、片倉ひかりが赤ちゃんを産む少し前の場面から始まります。

片倉ひかりは四人家族の次女ですがこの家族の父と母は真面目すぎて少しおかしな考えを持っています。

真面目であるがゆえに娘たちの若いうちからの交際を認めなかったり、娘たちが悪い友人と付き合っていないか確認するために携帯を無断で除くなどプライバシーのない家族です。(ここまでするのなら携帯なんて与えなければいいのに)

姉は親の期待通りの私立中学校に合格するなど親の考えていたレール通りの成長を歩みます。一方妹であるひかりは受験に失敗し公立中学校に進学することになってしまいこのあたりから両親との溝ができてきます。

ひかりは中学2年のときにクラスの人気者の巧と両親に内緒で交際を開始します。交際を開始してからしばらくで体の関係を持ちその後ひかりは妊娠してしまいます。

この妊娠するまでの場面は、辻村深月さんが若い男女は避妊についての認識が甘いことを表現したかったのでしょう。またひかりは真面目すぎる親に縛られすぎたばかりにこういった大人びた行動をとりたがったため両親の教育方法にも責任があります。

妊娠が発覚後既に中絶できない段階まできており、出産するしかなく両親はベビーバトンに連絡し広島で出産することが決まりました。妊娠した後も巧も子どもを欲しがっているなどと考えているひかりは読んでいてかなり気の毒でした。

広島では他のベニーバトンの世話になり妊娠している人たちとの共同生活を送ることになりました。同室のコノミは夜の街で働いた末に妊娠してしまった人でした。コノミたちなどからひかりは多くのことを学びました。

もしここでコノミたちに出会わなければひかりの人生はこの先落ちるところまで落ちっていってたのだろう…。

出産が終わり栗原夫婦に子どもを預けたひかりは栃木県に戻ります。母親は世間体を気にして学校には肺炎と伝えていたので妊娠の事実を隠せました。

学校にはひかりが妊娠した事実は伝わっていなかったが母親は

しかしその後も高校受験を失敗し、それを知った母は自分の敷いたレール通りに進まなかった娘に対して「やっぱりね」といいます。

この一言でひかりは母親との関係をたつために高校に入学してしばらくしてから広島のベビーバトンにいくことを決意します。

広島で妊娠中に生活を送っていた寮を訪問したひかりは浅見に住み込みで働かせてほしいとお願いします。それからしばらくベビーバトンで手伝いをしますがその後活動が終了することを知ります。

ベビーバトンの活動終了後も家に帰りたくないひかりは浅見に別の仕事を紹介してもらいそれは住み込みの新聞販売店の仕事でした。

そこで贅沢はできないが地道に働きますが、そこで夜逃げした同僚の借金の保証人になってしまいひかりも同僚と同様に夜逃げしてしまいます。

夜逃げし東京に向かったひかりは横浜のホテルで清掃員の住み込みの仕事を始めます。

清掃員の仕事も給料は安いがコツコツ真面目に働いていたが、そんなひかりのもとに借金取りの男が現れます。

借金から解放されたいあまりにひかりはホテルの金庫の金に目がとまりその金で借金を返してしまいます。

借金は返せたが金庫からお金を盗ったのが管理人にばれてしまいます。盗んだ金を返済するためにひかりは栗原夫婦に金を借りて返済することを決めました。

ここで第一章で栗原夫婦に子どもを返してほしいといっていたのが本物の片原ひかりであったということが分かります。

しかし。栗原家を訪れたひかりは自分がひかり本人でないと言われ、栗原夫妻がありもしない理想のひかりを自分の家族と同じようにみていることに気づき絶望に落ちます。

生きる希望を失いかけたひかりは栗原家を訪れた一か月後ふらふらとホームレスのように徘徊しているのを佐都子に見つけられます。

佐都子の「一緒に行こう」というセリフで物語は終わってしまいますが、その後は栗原夫妻の助けがあり片原ひかりも幸せあ人生が送れているのではないのでしょうか。


最後に


本作は冒頭でも言ったように実際に起きている社会問題を題材として取り上げている作品です。

年代問わず多くのかたに『朝が来る』を読んでもらい様々な問題を受け入れてほしいです。





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CやC++でコマンドを実行(サブプロセスを起動)する標準的な関数としてsystemとpopenがあります。

これらの関数を使っているコードを読んでいるとどういった基準で使い分けをしているのか分からなかったため、今回はsystemとpopenの使い分け方について調べてみました。





まずは結論

まずは結論です。

コマンドを実行したいだけなら「system」を使うべき。

コマンドの実行結果を取得したい場合は「popen」を使うのが有効。


以下にsystemとpopenを使用してコマンドを実行するサンプルコードとそれぞれのメリット、デメリットを記していきます。


system関数でコマンドを実行するサンプル


#include 
#include 

int main(void){
    int ret = 0;
    
    ret = system("rm -f test.txt");
    if (ret == -1){
        printf("ERROR\n");
    }

    return 0;
}



system関数のメリットとデメリット


メリット


  • popenと比べてコードが簡易的なため書き間違いを防ぎやすい

デメリット


  • 実行結果を取得するためには実行結果を一度ファイルに出力するなど工夫が必要
  • popen(コマンド, "w")のように標準入力にデータを与えることができない






popen関数でコマンドを実行するサンプル


#include 
#include 

#define BUF 256

int main(void){
    FILE *fp;
    char buf[BUF];

    fp = popen("pwd", "r");
    if (fp == NULL){
        printf("ERROR");
        return -1;
    }
    
    while(fgets(buf, BUF, fp) != NULL){
        fputs(buf, stdout);
    }
    pclose(fp);

    printf("buf = %s\n", buf);

    return 0;
}



popen関数のメリットとデメリット


メリット

  • 実行結果の取得がファイル読み込みの操作と同じ要領でできる
  • system関数と違い標準入力にデータを与えることが可能


デメリット

  • ploseの書き忘れによりメモリリークの恐れがある



最後に


もしこの記事を読んだ人の中でsystemとpopenに他にもメリットやデメリットがあるということを知っている方がいれば、コメントで教えていただければ幸いです。





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