としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

2021年02月

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本屋大賞受賞作である瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』 を読みました。

最初は、主人公の親が何度も変わっているということで鬱系な感じの小説を予想していたのですが、読み終わってみるととてもすっきりした作品で、爽やかな気持ちになることができました。

以下、あらすじと感想を書いていきます。



『そして、バトンは渡された』のあらすじ


幼いころに母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ森宮優子。

その後も大人の都合に振り回され、優子は3人の父と2人の母を持つ女の子だ。

何度も住む場所や名字が変わり、高校生の今は、20歳しか離れていない、血のつながっていない"父"である森宮さんと一緒に暮らしている。

優子は、そんな複雑な家庭環境であるにも関わらず、健気で強い女の子だ。学校の先生などからは、家庭のことを気にされるが、彼女は気を使われることに困った様子を見せる。

なぜなら、血のつながらない親の間をリレーされながらも出会う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきたため、家庭環境で困ったことがないからだ。

そんな優子自身についに伴侶を持つときが来た…。

優子の成長を描く中で、彼女の過去の回想がつづられる愛にあふれた家族小説。



感想(ネタバレあり)


読了後とりあえず感じたことは、
  • 森宮さんみたいな父親がほしい!
  • 森宮さんかっこよすぎる!
  • 優子のような幸せな人生が送れるならたくさんの親がいるということも悪いことではないかも!

ということでした(笑)

『そして、バトンは渡された』を読む前は、本屋大賞のほんだけどそこまで面白い」のかなと疑問に思っていました。

しかし、読了後は、こんな作品を発売してから1年以上読んでいなかったなんてどんだけもったいないことをしていたんだと感じさせられました。

瀬尾まいこさんの作品もいままで一度も読んだことがなかったのですが、『そして、バトンは渡された』をきっかけに他の作品も読んでみたいと思いました。


森宮さんと優子のW主人公


「そして、バトンは渡された」は優子と森宮さんのW主人公で描かれている作品です。

第一章では、大人の都合で振り回される優子が主役で、第二章では、娘を送り出す森宮さんが主役となっています。

W主人公の作品として書かれているのは、分かるのですが男性の私からしてみたら優子より森宮さんの方が主役という感じが強いような気がします。

森宮さんは、梨花さんとの結婚を機会に優子を娘として迎えます。自分が優子の本当の父親ではないけど、優子に父として認めてもらえるように本当の父親以上に父親らしくしようとします。

父親らしくしようとして、朝からかつ丼を作ったりなど少し空回りしている感じもありますが、優子と森宮さんの関係は、本当の家族以上に理想の家族なんだなという感じがします。

血がつながっていないからこそ、少しお互いに気を使いあうため、優子と森宮さんは良い距離感を保てているのかなと思います。

血がつながっている家族だといっても、お互いのことを完璧に分かりあうことはできないので少し距離感があるぐらいがもしかしたら理想の家族なのかもしれませんね。


第二章で森宮さんだけが、早瀬君と優子の結婚をなかなか認めないあたりも、森宮さんが優子の将来を本当に心配していることが分かりけっこうエモいです。

ラストシーンの優子がバージンロードを一緒に歩く相手に森宮さんを選んだときは、優子と森宮さんの信頼関係が分かりむちゃくちゃ泣いてしまいました。





たくさんいる優子の父と母


優子にはたくさんの父と母がいますが、全ての父と母に愛されている優子がすごく羨ましいです。

『そして、バトンは渡された』を読むまでは、再婚などがきっかけで義父や義母が増えることに関してマイナスのイメージしかありませんでした。

しかし、本作を読んでみんながみんな義父や義母が増えることにマイナスのイメージを持っているわけではないということが分かりよかったです。

優子の父と母で一番好きなのはもちろん森宮さんなのですが、私が二番目に素敵な人だなと思ったのは梨花さんです。

梨花さんは、優子と離れたくない一心で水戸さん(優子の実の父)からの手紙を優子に渡さないなどのマイナスのシーンもありましたが、それも優子を想う愛情故です。

個人的な偏見になりますが、今まで義母って血のつながっていない娘のことを邪魔に思うものだと思っていました。(グリム童話の読みすぎが原因かも…)

しかし、梨花さんそんな私のイメージを覆す良い母でした。

優子にピアノを弾かせたい一心で泉ヶ原さんと結婚したり、自分が病気になり優子を育てることができなくなると自分の代わりに優子を大切にしてくれる森宮さんを探したりして、梨花さんが自分の人生以上に優子のことを大切に思っていることが分かりました。

梨花さんや森宮さんを見ていると家族関係は血のつながりなんかより、相手のことをどれだけ大切に思っているかどうかということが大切であると分かりますね。



まとめ


『そして、バトンは渡された』は、『家族』というテーマをすごく上手に描いている作品ですごく面白かったです。

登場人物みんながいい人であり優子を大切に思っているので、終始涙が止まらない作品でした。

読了後はきっと、皆さん幸せな気持ちで胸がいっぱいになると思いますので未読の方がぜひ読んでみてください。

優子の人生を知って、皆で幸せを共感していきましょう。








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2016年に芥川賞を受賞した村田紗耶香さんの『コンビニ人間』が文庫化され本屋に大量に積まれていたので購入してみました。

様々な国で翻訳されている人気作品ということで読むのが楽しみでしたが、読んだ後はなんともいえない感情に襲われてしまいました。

以下あらすじと感想になります。





『コンビニ人間』のあらすじ


「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと私は叫ぶ。小倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。ひびコンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて……。




感想と考察(ネタバレあり)


ミステリー要素や恋愛要素などがなくただのコンビニ店員を主人公としてためリアルさがとても強い作品でした。リアルさゆえに人間の気持ち悪い部分や現代社会の問題などのメッセージが分かりやすい作品であったともいうことができます。

『コンビニ人間』というタイトルを見たときは変わったタイトルだなぐらいにしか捉えていませんでしたが、本作を読んだ方にはこのタイトルがどれだけこの作品にふさわしいタイトルであったのかが分かるでしょう。

本書は本当にメッセージ性が強い作品であるため、主人公である恵子や白羽を除く作中に登場する全ての人物が普通なように見えてとても気持ちの悪い存在でした。


恵子


恵子は、子ども時代の小鳥のエピソードから分かる通り子どもの頃から奇妙な思考回路を持つ人間です。

普通の子どもであればかわいい鳥が死んでいる、かわいそう、お墓を作ろうとなります。しかし恵子は鳥が死んでいる、お父さんは焼き鳥が好きだ、お父さんのために死んだ鳥を焼いて食べようとい発想がでてきます。

恵子の行動は合理的ですが一般的な社会で受け入れられないもので、このことから恵子はおそらく「サイコパス」であるということが分かります。

成長していくにつれて恵子も徐々に自分がおかしいということに気が付きます。しかし、どうすれば治るのかが分からないためコンビニで働くまでは自分から何もしない、しゃべらない人間になります。

人と関わらない生活を送っていた恵子に変化が現れたのは大学時代に "コンビニ店員" というアルバイトを始めたのがきっかけです。徹底的なマニュアルがあり店と客のために働き社会に沽券できる "コンビニ店員" という仕事は恵子にとって天職でした。

コンビニで働き始めたことをきっかけに人とどう関われば嫌がられないかという生き方も学んでいきます。

それから18年たち36歳になった現在でも他のことに興味を持たずコンビニのためのみに人生をささげており、正に "コンビニ人間" ですね。


白羽


白羽も客観的に見れば恵子と同じで人と関わるのが苦手な社会不適合者です。

しかし本質を見ると二人の違いは一目瞭然です。恵子が人の目などを全く気にしていないのにたいして、白羽は他人からどう思われているのかということを気にしています。

恵子が人間ではない新たな生物である "コンビニ人間" であるのに対して、白羽は普通の生活を送ることができる人間に憧れているだけという印象があります。

白羽という存在がいるおかげで恵子の異質感がより際立ちますね。


"普通" の人々


『コンビニ人間』に登場する恵子と白羽以外の人物は一見普通に見えますが、彼らは "異物を排除したい" という白羽のセリフで言うと縄文時代からプログラムされている人間の本能にしたがって生きています。

この本能こそが "普通" の人間を気持ち悪く見せる要因となっています。

おかしな存在である恵子や白羽に対して普通の人々はアドバイスをしようとするが、その行動の実態は彼らにとって異常な人間の内側に入り込み自身の異物を排除したいという欲求を達成しようとしているだけです。

社会では個性を尊重することができないということ作者の村田紗耶香さんが強調しているように感じます。

個性を尊重できない社会では恵子のような特別おかしな存在でもない限り、白羽が言うように少数派の人間は人生を他者に強姦されているように感じてしまうでしょう。

また作中で恵子は普通の人々は周りの人の行動と同じ行動をとると言うような発言をしていますがこれも人間の本能で人に嫌われないために同調行動をとろうとしているだけなんでしょうね。



まとめ


ここまでご覧になっていただきありがとうございます。

『コンビニ人間』は読む人によってとても後味が悪く感じる作品となってしまうのかもしれませんが、作者の村田紗耶香さんは社会の少数派の人を排除するためにこの作品を書いたのではないと思います。

世の中の多くの人に個性的な人も世の中にはいて個性を尊重するのは悪いことではないと伝えたかったのではないのでしょうか。

『コンビニ人間』を多くの人の手に取ってもらうことでいつか個性を尊重することができる社会になればいいですね。



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本記事では、pythonのlambda(ラムダ式、無名関数)の使い方を紹介していきます。



lambda(ラムダ式、無名関数)とは


Pythonでは一般的に関数を定義するときは、def文を使用します。

しかし、関数には通常の関数の他に無名関数というものが存在します。

無名関数とは、その名前の通り、名前を持たない関数で、関数をその場に定義することができます。

pythonではこの無名関数を書くためにlambda(ラムダ式)というキーワードを使います。



lambdaの使い方


def文を使用して入力値の2倍の値を返す関数は以下のように書くことができます。

def calcDouble(num):
    return num*2

if __name__ == "__main__":
    num = calcDouble(5)


これをlambda式で書くと以下のように書くことができます。

if __name__ == "__main__":
    num = (lambda num: num*2)(5)


ここで「lambda num:」というのが「def calcDouble(num):」に相当する部分です。

そして「:」の区切りのあとに処理を書くのが、lambda式の使い方になります。



lambdaのメリット


lambdaを使うことのメリットは、リストなどの要素に対して何か特別な動作はしたいけれど、関数を定義するほどではないなというときにぱっと使うことができることです。

[1, 2, 3, 4]というリストの要素に対して先ほどdefで定義したcalcDouble関数を実行したいときは以下のように書けます。

def calcDouble(num):
    return num*2

if __name__ == "__main__":
    nums = [1234]
    nums = list(map(calcDouble, nums))


こんなことをするためだけに、毎回calcDouble関数のような関数を定義するのは面倒なのでlambdaを使います。

lambdaを使うと以下のように書くことができ、コードが先ほどよりすっきりしていますね。

if __name__ == "__main__":
    nums = [1234]
    nums = list(map((lambda num: num*2), nums))


lambdaは、map関数と合わせ使うことが多いです。
map関数の使い方については以下の記事をご覧ください。









lambdaのデメリット


lambdaを使うことのデメリットはコードの可読性が悪くなることです。

コードは基本的に他人が読めるように書かなければならないので、処理が複雑な関数などはlambdaを使わずにdefを使って定義するようにしましょう。
(他人が読めないコードは自分が読み返すときにも分かりづらく公開することになります)



まとめ


lambdaを使うことでコードが簡潔に書くことができることが分かりました。

ただ、lambdaには可読性が下がるというデメリットもあるため、状況を判断して使用するようにしましょう。



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本記事では、pythonのmap関数の使い方を紹介していきます。




map関数とは


map関数とは配列などのイテラブルのすべての要素にアクセスし、関数を適応させることが可能にすることができる関数です。

ちなみにイテラブルとはlist、dict、strなどのfor文の後のinの部分に入れることができる要素のことです。

for i in イテラブル:


map関数を使うことで、for文などの繰り返し処理を使わずともすべての要素にアクセスすることができます。

そのためソースコードがシンプルになりfor文を使う場合よりも可読性があがります。



map関数の使い方


for文を使ってリストのすべての要素に対して、関数を適応させる場合、以下のように書くことができます。

def calcDouble(num):
return num*2

if __name__ == "__main__":
nums1 = [1, 2, 3, 4]
nums2 = []
for i in nums1:
nums2.append(calcDouble(i))
print(nums2)


上記と同じ処理をmap関数を使用して書くと以下のようになります。

def calcDouble(num):
return num*2

if __name__ == "__main__":
nums = [1, 2, 3, 4]
nums = list(map(calcDouble, nums))

print(nums)


for文を使った場合と比べるとかなりシンプルになったのが分かりますね。

また、for文では条件ミスのエラーがよく起こるため、そうしたミスを減らすのにもmap関数は有用です。





dictに対してmap関数を使う


map関数は、イテラブルのすべての要素にアクセスできると最初に紹介したので、以下でdictに対してmap関数を適用させるコードを紹介します。

ソースコード


def outputKey(dictType):
print(dictType[0]*dictType[1])

if __name__ == "__main__":
test = {"list": 2, "dict": 3, "map": 4}
list(map(outputKey, test.items()))


出力結果


listlist
dictdictdict
mapmapmapmap



キーの文字列を値の回数表示させるという単純なコードですが、dictに対してもmap関数がしようできるということが分かりましたか。



まとめ


map関数は配列などのイテラブルのすべての要素に対して関数を適応させたいときに有効であることが分かりました。

また、map関数はlambdaと組み合わせることでコードをさらにシンプルにさせることが可能です。

labbdaの使い方については以下で紹介しているので興味のある方は読んで見てください。






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FODでもドラマ化されたいぬじゅんさんの『いつか、眠りにつく日』を読みました。

結末が予想外でかなり面白かったし、強く生きようと感じさせる作品でした。

以下、あらすじと感想を書いていきます。



『いつか、眠りにつく日』のあらすじ


高校2年生の女の子・蛍は修学旅行の途中、交通事故に遭い命を落としてしまう。

命を落としてから約一か月後、蛍が自宅で目を覚ます。彼女の前に死者の案内人であるクロが現れる。

クロはこの世に残した未練を3つ解消しなければ、蛍が成仏できないことを告げる。

蛍は、自分の未練のひとつが中学のころから5年間片想いしている蓮に告白することだと気づいていた。

だが、蓮を前にすると、告白することで関係が崩れてしまうことを恐れ、どうしても想いを伝えられない・・・。

2つの未練を解消し、蓮に告白する決心ができた蛍の決心の先にあった秘密とは…。

予想外のラストに、温かい涙が流れるー。



感想(ネタバレあり)


とにかく結末が良かった。

クロ、蓮、栞、祖母の登場人物全員が今後三人を失って生きていく蛍のことを心配していたという結末がすごく良かったです。

実は、生き残っていたのは蛍だけだという結末を知ってしまうと物語の様々なところに伏線がちりばめられていたことが分かりますが、読んでいる途中はこの伏線に全く気が付きませんでした。

蛍の未練が他の死者と違い3つあった理由も、蓮、栞、祖母の未練を解消するためだったと分かったときは、感動しつつ伏線の張り方のうまさに感心してしまいました。


実際に自分が蛍の立場になり、全てを知っている状態でクロに生きるか、みんなと一緒に死ぬか選択しろと言われたらどちらを選んでいたのだろうか。

両親は生きているとはいえ、心から大好きな人たちを同時に失ってしまっていたら、もしかしたら自分ならみんなと一緒に死ぬことを選んだかもしれません。

もし、生きることを選んだとしても意識不明の重体なので、自分の身体がどうなっているのか分からないためこれまで通り生きられない可能性もありますし…。

蛍も皆が行ってしまう直前に以下のようなセリフを言っていました。

「やだ……。私も、みんなと一緒に行く。クロお願い!さっきの取り消す」

『いつか、眠りにつく日』より

このことから蛍も最初から全てを知っていたら、みんなと一緒に死ぬことを選んだということが想像できます。

それを分かっていた蓮、栞、祖母の三人はどうしても蛍に生きていてほしかったから協力したのでしょうね。


蛍が目を覚ました後にクロが記憶を残してあげていた演出も粋だなと感じました。

蛍が今後どんなにつらいことがあったとしてもこのことを思い出して、後悔しないように生きようと思うに違いありません。

若い世代の人ほど後悔しないように人生を謳歌するということに無頓着な気がするので、若い世代の人が読みやすい作品でこのような表現ができるいぬじゅんさんは素晴らしい作家ですね。





まとめ


今回は、いぬじゅんさんの『いつか、眠りにつく日』の感想をお届けしました。

この作品を読んで、私は死ぬときにクロのような案内人が現れてもやることがないと思わせられるぐらい、後悔しない人生を歩んでいきたいと思いました。

この作品を読んだ人には以下の作品もおすすめですので、未読の方はぜひ読んでみてください。










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