としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

2021年04月

柳広司さんの『ジョーカー・ゲーム』を読みました。

第二次世界大戦前後の日本を舞台として描かれたスパイ小説で、当時の日本軍の風習と合わないスパイという役割を格好良く描いている作品でした。

以下、あらすじと感想になります。


【目次】
あらすじ
感想




『ジョーカー・ゲーム』のあらすじ


第一次世界大戦でスパイとして活躍した結城中佐の発案で陸軍内にスパイ機関である”D機関”が設立されました。

「スパイとは見えない存在であること」
「殺人及び自死は最悪の選択肢」

これは、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。

この戒律は当時の日本の軍隊組織を真っ向から否定するものである。

スパイ組織そのものに批判的であることもあり、軍からは”D機関”の存在は猛反発を招いた。

しかし、頭脳解析で優秀なスパイたちとそれを束ねる結城中佐は、魔術師のごとき手捌きで成果をあげてうく。

日本を含めて世界中で活躍するスパイを描いた、スパイミステリー作品。



感想


スパイの美学を描いている素晴らしい作品でした。

普通のスパイ小説などでは必ずスパイ目線で物語が進んでいき、ただただスパイってカッコいいとなるだけです。しかし、本作ではスパイ目線の他にスパイに利用される人間の目線など様々な目線からスパイという活動を描いていて面白かったです。

"D機関"のスパイとして様々な人物が活躍するのですが、彼らの名前は全て偽名で全員がとても優秀ということ以外情報がありません。

そのため、物語を読んでもカッコよかったんだけど今回のスパイってどんな人物なんだろうと思うことが多々ありました。

あえて個性を描かないということが、「スパイとは見えない存在であること」いうことを作品全体で描いている気がしていてスパイのリアリティを更に強調している気がします。

また、本作は当時の歴史的背景を考えて物語が作成されており、実際の第二次世界大戦でもスパイってこういう立ち位置だったのかなということを歴史的背景に詳しくなくても想像することができます。

確かにお国のために命を捨てることをおしまない時代に"D機関"のように目立たないために「死ぬな・殺すな」を徹底していたら組織としては嫌われることが分かりますね。

「ジョーカー・ゲーム」を読んでいたらスパイという存在に興味が湧いてきて当時のスパイって本当はどんな感じだっただろうか調べたくなりました。


本作では、5つの物語が収録されていてどの物語も面白かったのですが、個人的には「魔都」が一番好きです。

この物語では、謎を解きあかすという目的を達成するために"D機関"の人間が主人公である本間を裏で操るという内容でした。

優秀なスパイは、誰にもバレないので表舞台には登場しないという姿を描いており、本作を読んだときはスパイ小説としての新境地だと感じました。






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知り合いに劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』の入場者特典である『父と追憶の誰かに』を譲っていただきました。

本作は30ページほどの短編ですが、『君の膵臓をたべたい』の主人公である春樹の後日談となっています。

以下、あらすじと感想になります。ネタバレも含みますので未読の方はご注意ください。



『父と追憶の誰かに』のあらすじ


平凡な家庭環境で育った平凡な高校生である"ふゆ"は平凡が嫌いだ。

毎日続く平凡な日常に飽き飽きしていた"ふゆ"に平凡ではない出来事が起きた。

その出来事とは、彼女の父親が浮気をしているかもしれないということだった。

平凡な会社員である彼女の父は、女性の名前には常に「さん」を付ける。

しかし、"ふゆ"はある夜父が電話で女性の名前を呼び捨てにしているのを聞いてしまった。

ふゆは父が浮気をしている可能性があることにショックを受けつつも、それ以上に裏でワクワクしてしまう。

そんな彼女は、父の浮気現場を抑えるために休日の父を尾行することを決意する。

はたしてふゆの父は浮気をしていたのだろうか…。



感想(ネタバレあり)


『君の膵臓を食べたい』を読んだ身として、春樹が桜良を失ったあとどのような人生を送っていたのかがすごく気になっていたので『父と追憶の誰かに』を読めてよかったです。

物語の後日談が書かれる作品ってあまりありませんが、大好きな作品の後日談が読めるとやっぱり嬉しいですね。

本作の主人公である、ふゆは春樹の娘でした。

春樹が結婚して子どもができていたということが分かったときはなんだかおかしな話ですが感動を覚え、息子を見送った父みたいな気分になりました。

人嫌いだった春樹が結婚できたのも桜良と関わったおかげでしょうね。


本作は、春樹が浮気を疑われて娘に尾行されるという物語でしたが、実際は春樹が桜良の兄の娘と一緒に墓参りに行っていただけでした。

桜良を失ってから、10年、20年ほどたっても墓参りにいっていることから、春樹にとって桜良との出会いは春樹の人生を変える重要な出来事だということを改めて再認識することができてよかったです。

兄の娘と仲が良いことからも山内家と春樹の付き合いは今でも続いているんでしょうね。


また、春樹が現在出版社で働いているということを知り、その職を選んだ理由は共病文庫の影響なのかなとか一人で想像してしまいニヤニヤしてしまいました。

本作は、本当に短い作品でしたが桜良との出会いが春樹の人生を変えた事実が描かれていてよかったです。



まとめ


『父と追憶の誰かに』を通して『君の膵臓をたべたい』の主人公である春樹が後日どうなったのかを知ることができて良かったです。

住野よるさんの作品が映画化されるたびにこういう作品を書いてほしいと期待してしまいますが、『青くて痛くて脆い』ではこのような特典がなかったのでないのかもしれませんね。

本作もアニメ映画の特典なので、劇場アニメ化したら再びこういう作品を書いてくれることに期待したいですね。






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表紙とタイトルのインパクトで購入した村田紗耶香さんの最新作である『地球星人』を読みました。

『地球星人』というタイトルを最初に見たとき地球の人間が宇宙で何かする話とかだと思っていたのですが読んでみると想像と違う内容で驚かされました。

村田沙耶香さんらしい現代の人間に対してメッセージ性の強い作品となっていました。





村田沙耶香『地球星人』


私はいつまで生き延びればいいのだろう。いつか生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。地球では、若い女は恋愛をしてセックスするべきで、恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作り上げたのだろう──。



あらすじ


本作は大きく分けると奈月の子供時代と大人時代の二部に分けることができます。


奈月の子供時代



小学4年生の秋級

物語は小学4年生である奈月が一年ぶりに祖父と祖母が住んでいる秋級を訪れる場面から始まります。

家族の中で自分の居場所がないと感じている奈月にとって夏に親戚が集う秋級で一年前に恋人になったいとこの由宇に会うのが楽しみでした。奈月と由宇にはそれぞれお互いにしか話していない秘密がありました。

奈月の秘密は自分が魔法少女であり、ポアピピンポボピア星の魔法警察からやってきた使者であるピュートからもらったコンパクトで変身することができ、ステッキで魔法を使うことができるというものです。

一方由宇の秘密は自分が宇宙人であり秋級に来る度に宇宙船をさがしているというものです。

二人にとって幸せな秋級での時間が続くと思った翌日に姉の貴世がいとこにからかわれたことでヒステリーの発作をおこしわずか二日という短い期間で奈月は実家に帰ることになってしまいます。

奈月は帰る前に由宇に結婚して結婚してとお願いします。由宇は奈月の言葉に対して結婚しようとかえします。

二人は針金で作った指輪をつけあい恋人になったときと同じように二人だけの決まりを作ります。
  1. 他の女の子と手をつないだりしないこと
  2. 寝るときに指輪をつけて眠ること
  3. なにがあってもいきのびること。
二人の約束は一見子どもらしくどれもかわいいものなのですが、三つ目の由宇が決めた「なにがあってもいきのびること。」という約束が今後の展開に大きな影響を与えます。



この時点では二人に対して子どもらしく可愛いなという印象でした。



次の秋級まで

その後、実家に戻った奈月は一年後の由宇との再会を楽しみにして過ごしていくのだが、そんな奈月に魔の手が襲いかかります。

それは塾の伊賀崎先生でした。伊賀崎は一見さわやかでかっこいい大学生のアルバイトなのですがその裏の顔はとんでもない変態です。奈月に対して指導という体のいい言葉を使って度々体に触れたりします。

そんな伊賀崎の行為について奈月はすこしおかしいと違和感を感じるのですが、伊賀崎のようなかっこいい先生が自分に好意を抱いているわけがないと誰にも相談をしません。

しかし、伊賀崎の行為がエスカレートしていきついに母親に相談するのですが、母はそんな奈月を「スケベなことを考えるな」と一蹴します。

一年が経ち由宇との再会まで残り一週間となった夏祭りの日、奈月にとって今後の人生を変える大きな事件がおきます。友人の静ちゃんが具合が悪く伊賀崎の家で休んでいると伊賀崎に教えられます。奈月は大切な友人の静ちゃんまで伊賀崎の魔の手に落ちるのではと考えてしまい静ちゃんを助けるために奈月は伊賀崎とともに家に向かいます。

しかし、いざ伊賀崎の家にたどり着くとそこに静ちゃんはいませんでした。静ちゃんが具合が悪いというのは奈月を呼び出したい伊賀崎の罠でした。騙された奈月は伊賀崎に『ごっくんこ』って知っていると尋ねられます。知らないと答えた奈月に伊賀崎は『ごっくんこ』の指導をするといます。

逆らったら殺されると考えた奈月はいきのびるために伊賀崎にしたがいます。『ごっくんこ』をさせられた奈月はまるで魔法を使って幽体離脱をしたかのような状況になりそのまま無意識のうちに家へと帰っていきます。

翌日奈月は意識が戻るのですが体のある違和感に気がつきます。それは味が分からなくなっているとものです。ジュースを飲んでも腐った飲み物を飲んだような気がして味を感じません。しかし、この時点では自分の体に起こった違和感をあまり気にしませんでした。



伊賀崎は本当に最低な人間ですね。もし奈月が相談した時点で母親が奈月の話を真意に受け止めていれば悲惨な事件を止めることができたかもしれないのに…。



再び秋級へ

その翌日、祖父が亡くなったということで葬式のため予定より早く奈月は再び秋級を訪れることになります。秋級で一年ぶりに由宇と再会した奈月は由宇に自分が伊賀崎に殺される前に性行為をしてほしいとお願いします。由宇は奈月が本当にしたいならと了承します。

次の日の夜中、奈月と由宇はセックスを行います。由宇と一緒になれた奈月は幸せな気持ちで眠りに落ちます。しばらくして奈月は目を覚まします。由宇と一つになれたことで満足した奈月は伊賀崎に殺される前に、母親から盗んだ睡眠薬を大量に服用して自殺をしようとします。しかし、自殺をしようとしていることに気がついた由宇は奈月を生き延びなければいけないと言って止めます。由宇の言葉で奈月は自殺を踏みとどまりました。

そうした中、二人がいないことに気がつき探しにきた大人たちに二人は見つかってしまいます。セックスの後服を着ていない二人を見て大人たちは二人を別々の蔵に閉じ込められて反省させられます。奈月は怒り狂う大人たちを見て世界に従順ではなくなった私たちに動揺していると感じます。

翌日、実家に連れ帰られることになった奈月は帰る道中由宇が自分の靴の底に宝物を残していたことに気がつきます。その宝物は昨年結婚式の際に約束した三つの約束事が書かれた結婚誓約書でした。誓約書を読み約束を守ろうと奈月は静かに誓います。



ここまでで過去の回想を除いたら奈月の子ども時代の話は終了です。

奈月は子どもの時点でルールに外れた人間を見てルールに従順に生きてきた人間はそれを許すことができないということに気がつきます。

実際に親として小学生の子どもがセックスをしていたと言われたら衝撃的なんだろうな。本能に身を任せて娘をなぐった父の気持ちも分からなくはない。これは私がルールに従順な人間だからなのか…。

また奈月は人間の住む街は蚕を生産するのと変わらない人間を生産するための工場と表現していますが、的確な発言の気もするんですがなんだか違和感を感じます。




大人になった奈月



再び秋級へ

奈月は3年前の31歳のときに結婚しており現在は千葉のマンションに住んでいました。しかしその夫との結婚生活には他人には話すことができない秘密がありました。

夫と奈月が出会ったきかっけは「すり抜け・ドットコム」というサイトでした。奈月は工場の部品の一部に偽装するために自分と同じような考えを持つ結婚相手を探していました。そこで見つけたのが今の夫です。夫も奈月と同じように工場の部品として機能しているかのように偽装するために結婚相手を探していました。

二人の結婚生活は性行為もなく、家事ですらそれぞれ自分のことのみ行うと言った感じでした。

そうした生活が続く中夫が会社をクビになったことをきっかけに二人は秋級を訪れることになります。都会で育った夫にとって奈月の話す秋級は憧れの場所でした。秋級を訪れる準備をしているうちに奈月は由宇が現在秋級の家に住んでいることを知ります。

秋級を訪れた奈月は久しぶりに由宇と再会します。奈月たち夫婦はこれからしばらく由宇と同じ家で暮らすということで自分たちの秘密を話します。

秘密と同時に自分たちは宇宙人であると話す二人に対して由宇は、「自分はれっきとした地球人だ」とかえします。



ここだけを読むと由宇は子どものころと違って奈月たちとは違い工場の一部の人間になっているような気がしますね。奈月の眠る前にこの家には自分とは違う動物が二匹いるように感じるという台詞からは、人間も他の動物と変わらない存在であるという考えを強調しているようでなんだか不気味です。



魔女を殺した奈月

奈月は久しぶりに訪れた秋級の地で、小学生のとき秋級から連れ戻されてすぐに伊賀崎の家で魔女を殺したことを思い出します。

家に連れ戻された奈月は遊びに行くのはダメだが塾には行けと母親から言われます。

塾に行くと伊賀崎から明日塾は休みだが奈月のために特別授業をするといわれる。その晩奈月はピュートとの作戦会議でピュートから魔女に操られている伊賀崎を助けてあげないと言われる。

伊賀崎を助けることを決意した奈月はピュートと変身コンパクトと魔法のステッキを持ってこっそり家を抜けだし伊賀崎の家へと向かう。伊賀崎の家に着くと伊賀崎から事前に教えられていた鍵を見つけて家に入る。

伊賀崎の部屋に入る直前、以前伊賀崎に『ごっくんこ』を強要されたときのように奈月は幽体離脱の魔法が使えた。幽体離脱した奈月は自分が抜けた体の様子を眺めた。奈月の体は伊賀崎に近づき家から持ってきた草刈り鎌を何度も伊賀崎に振り下ろした。

幽体離脱の魔法はいつの間にかとけており奈月はピュートに言われるがままに1分近く呪文を唱えながら鎌を振り下ろしつづけた。

ピュートから『もういいよ』と言われた奈月は、自分の服が金色の液体(伊賀崎の血)で汚れているのに気がつき、学校の焼却炉で服や使用した道具を燃やし下着姿でリュックを背負ったまま帰宅しそのままシャワーを浴びた。

新学期になり学校で静ちゃんから伊賀崎が殺されたことを教えられた。静ちゃんに誘われて伊賀崎の両親が犯人を探すためのビラを配っているということで奈月もビラ配りに参加した。それから毎日ビラ配りに行き家に帰るとピュートに話しかけた。しかし、ピュートからは同じお礼の言葉しか聞くことができない。

ある日のビラ配りの帰り静ちゃんから狂気は鎌であったことを聞く。ピュートにそのことを相談するとピュートは奈月とはもう喋れないが奈月がポハピピンポボピア星人だと告げられる。その後ピュートはミイラのように一言も喋らなくなった。

その後奈月はポハピピンポボピア星人として孤独で生きていくより早く地球星人に洗脳されたいと考えるようになる。



秋級での生活

二人はしばらく由宇とともに秋級で人間工場から開放された生活を送るのですが、しばらくして貴世がいつまで秋級にいるのかと奈月を訪ねてきます。夫は貴世のことを工場からの使者が来てもとの工場生活に戻されると恐れた。

貴世が帰った翌日の朝、夫から大切な話があると打ち明けられます。その内容は人間であることを捨てるために人間としてのタブーを犯すという内容でした。そのタブーとは家族の男性と近親相姦をするというものです。夫は週末実家に帰り兄と近親相姦することを決意します。

翌朝夫は兄と近親相姦をするために家を朝早くにでていきます。夫が出ていった秋級の家で由宇は奈月に夫がいない間は二人でここに止まるわけにはいかないと言い、いとこの陽太の家に泊まらせてもらうことになりました。奈月はその晩一人で秋級の家で眠ります。

翌日の昼頃になり夫が戻って来たが帰ってきた夫は近親相姦に失敗し父に追われていました。夫の父が秋級を訪れてきて奈月と夫の二人を無理やり工場へと連れ戻します。


ラスト


工場に連れ戻された奈月は家族からの取調べが行われます。取調べ内容は工場としての義務を果たすためにどうして夫と『仲良し』をしないのかというものでした。奈月が恐れていた工場の道具として機能していないことを言われる日々がやってきたのです。

取調べが続くある日、奈月は姉の貴世から『仲良し』できないのは昔塾の先生にいたずらされたからではないのかと言われます。実は姉は奈月と伊賀崎の関係を知っており、それだけではなく奈月が伊賀崎を殺したことも知っていたのです。姉は犯罪者の家族になると世界に従順な存在では亡くなると分かっていたため、奈月が犯行に使用した道具を隠していました。そして姉は話の最後に真当な人生を送るために夫と『仲良し』をしろと言います。

翌日奈月は工場に戻ろうとしている夫に一緒に逃げないかと言います。夫はそれを了承し逃げるとともに地球星人へ洗脳されかけている由宇を助けに行こうと秋級の家へと再び向かいます。

由宇を迎えに行くと最初は由宇も地球星人と同様に真当な人間として生きるために工場から出ていくことに反対しますが、話を続けると由宇はある真実を打ち明けます。由宇は昔からいきのびるために周りの命令に従っていただけで現在も命令に従って地球星人になろうとしていたことを告白します。告白のあと由宇も夫婦とともに工場から逃亡することを決意します。

秋級の家に逃亡した奈月たちはそこで地球星人とは別の生き方をしようとします。三人の合理性の基準は『いきのびること』で少ない貨幣で食料を買うのがもったいないと気がつけば食料を盗むようになったりした。

そんな地球星人としての生活が続くある日、秋級の近くの道路で起きた土砂崩れが原因で秋級の人々が秋級から出て行っていることを知る。人が少なくなった秋級で食べ物を盗みお酒を飲んだ。

翌日の朝、頭に強い衝撃が走り目を覚ますことになる。衝撃の正体は地球星人からの攻撃であった。既に夫と由宇が殺されているかもしれないと考えた奈月は地球星人から身を守るために近くにあったトロフィーで地球星人を殴り殺した。いきなり襲撃してきた地球星人の正体は伊賀崎の両親だった。伊賀崎が死んだ理由を知った両親は仇をうつために奈月を殺しに来たのだった。

伊賀崎の両親を殺した3日後、土砂崩れが原因で他の地球星人が秋級に戻ってこないため奈月たちは食料の調達手段を失い食料はつきかけていた。そこで以前殺した地球星人の肉を冷凍しておこうと由宇は提案する。

夫と奈月もその提案に賛同したが、奈月はそれをしたらもう地球星人として生きていけないことを恐れ最初は地球星人の解体作業に参加しなかった。しばらくして奈月が由宇たちの様子をみにくと二匹目の地球星人を解体しようとしていた。それを奈月も手伝うことにし最初のうちは抵抗があったがいざ解体してみると地球星人はただの肉でしかなかった。

その日三人は地球星人を使った料理を食べた。その料理を食べた奈月は伊賀崎に『ごっくんこ』させられていらい感じられなくなっていた味を感じられた。口が治ったのだった。

食事を食べ終わった三人は今後食料が尽きた場合お互いを食べあわないかという話し合いをする。話し合いの結果一番おいしい人物から食べることになり三人はそれぞれの味を確認する。

それからしばらくした明るい日、三人の元に地球星人がやってきた。その地球星人の正体は奈月の姉と母であった。三人の腹が膨らんだ姉と母からは悲鳴があがった。

悲鳴を元にやってきた救助隊員は三人に「あなたたちは人間か」と訪ねる。由宇は流暢な地球星人の言葉で「ポハピピンポボピア星人です。」とかえす。その後三人は手を取り合い地球星人の住む星へとゆっくり歩んでいった。




感想と考察


今年一番の衝撃作を読んでしまったと思うほどの衝撃的な作品でした。

今まで考えていた常識が本当に正しいものであったのかが分からなくなってしまいます。

本作の主人公を含む奈月などの人間の中でマイノリティの存在であるポハピピンポボピア星人の気持ちも分からなくはないけど多くの人はそのようにはなれないでしょう…。

読み終わってから気持ちの整理をするためにもう一度読み直しましたが、衝撃的すぎてなかなか気持ちを落ち着かせることができませんでした。

作中で村田沙耶香さんは街のことを人間工場であると表現していますがこれはなんだかとても気持ちの悪い表現です。しかし、言われてみればアパートやマンションなんて人が共同して生活しており他の知能が高い動物(宇宙人)からみれば蚕が集まって暮らしているのと変わらないのかもしれません。

この物語では、奈月たちを除く三人は人間工場の道具としての義務を果たすことが義務といったような感じで生きており、人間工場の道具として役に立たないマイノリティの存在を道具として正しい姿に戻そうとします。作中では、道具としての役目を果たせそうにない姉が工場の道具として役にたちそうな奈月を見て羨ましがる場面などもありとにかく道具として生きていくのが絶対の世界です。

そんな世界を気持ち悪く思った三人は自分たちは地球星人ではないということでポハピピンポボピア星人として生きていきます。三人は地球星人とは別の生き物ということで食料が尽きていたという理由もありますが地球星人を食べる描画などもありました。

物語の最後で男女共に腹を膨らませていた彼女らは性行為をしなくても工場としての義務を果たすことのできるポハピピンポボピア星人になれたということなのだろうか?


物語の本質とはずれますが、奈月は子ども時代から不思議な考えを持つ人物ではあるけれどもし伊賀崎に目をつけられていなかったら地球星人として真当な人生を送れていたような気がするので少し気のどくです。奈月の家族がまともな人間であれば今頃由宇と幸せになれていた可能性もありますね…。


ところで皆さんはどの人物が好きですか?

私は奈月の夫の智臣のいかれ具合が気に入り智臣が一番好きです。会社の金を平気で着服したり、近親相姦をしようとしたりとにかくクレイジーな存在でした。三人のなかでも特に考えがぶっ飛んでいるところがなんだかおかしかったです。


最後に


あらすじも簡単にはまとめましたが省略した部分も多いので地球星人を未読の方はぜひ読んで欲しいです。文庫化したみたいなので以前よりも読みやすくなりました。

読了後あなたの中の常識はどうなっているのでしょうか…。





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2018年に本屋大賞を受賞した辻村深月さんの『かがみの孤城』 が文庫化されていたので読みました。

さすが、本屋大賞を獲得した作品なだけあって、内容もまとまっており最初から最後まで面白かったです。

以下、あらすじと感想になります。ネタバレありなので未読の方はご注意ください。



『かがみの孤城』のあらすじ


中学校入学早々、イケてる女子グループからいじめにあい、自宅に閉じこもっていた"こころ"。

ある日、いつものように学校に行けず自宅にいると、突然部屋の鏡が光始めた。

鏡に手を伸ばすと体が吸い込まれていき、その先にあったものは西洋の城のような建物だった。

城にはオオカミのような面をつけた少女と"こころ"と似たような境遇の中学生7人が集められていた。

オオカミのような少女によれば"こころ"たちは、来年の3月30日までに城に隠された鍵を見つけると、どんな願いでも叶えられるようだ。

鍵探しを行っていく中で、7人は次第に仲が良くなっていき、それぞれの事情が明らかになっていく。

城の終わりが刻々と近づいていくが、果たして"こころ"たちは鍵を見つけることができ、彼女たちの願いを叶えることができるのか。



感想(ネタバレあり)


最初にも述べた通り、物語の主題が少年少女の成長ということに焦点が当てられており、最後までこの主題がぶれることがなかったため、内容がまとまっており非常におもしろかったです。

また物語に隠されていたトリックもおもしろくて気が付いたらなるほどと思うものばかりでした。


鍵の隠し場所


鍵の隠されていた場所はどこなのだろうと考えながら読んでいたので、鍵を隠すトリックが『オオカミと7匹の子ヤギ』の童話をもとに作られていたと知ってなるほどと感心してしまいました。

オオカミがでてきて、少年少女たちのことを赤ずきんちゃんと呼んでいたのがフェイクでありヒントだったというのがすごいなと思いました。

確かにオオカミさまは、こころたちにお腹の中に石をつめるなよなどとヒントになりそうなワードを言っていたのでどこかで気づきそうですが、こころたちと同様に気が付かなかった私は、推理力がかなり低いんでしょうね…。


こころたちは別の時代をすごしていた


集められた7人がこころとリオン以外が別の年代を生きていると気が付いたときは結構な衝撃でした。

みんなが同じ中学校の生徒であると気が付き、マサムネの提案で3学期の始業式にみんなで学校に行こうとしたときに私は彼らが別の時代を生きているということに気が付きましたが、他の方はどのあたりで気がついのだろうか。

こころがマサムネのゲーム機を見て、知らないゲーム機だという部分で気が付いた人がいたら、その人はかなりの推理力がある人なんでしょうね。

ちなみに私はこの時点では本当にマサムネの親にゲーム業界の知り合いがいるのかと思っていました。

このトリックを知った後にそれぞれが同じ学校であると気がついた場面などを読み返すと、同じ場所に住んでいるにも関わらずそれぞれの会話に微妙に矛盾があることが分かりおもしろいですね。





オオカミさまの正体


オオカミさまの正体がリオンの姉であったというのは最後の最後まで気が付きませんでした。

確かに物語の中でリオンだけは一人学校に通っているなど少しイレギュラーな存在なので、なにかあるのだろうなとは思っていたのですが…。

正体を知った後にかかみの孤城は、美央が知っている物語やドールハウスから構成されていて、リオンたちと遊ぶために作られた世界だと知ったときは、号泣してしまいました。

城のリミットが年度末ではない理由も美央の命日と絡めているのもすごいなと感じました。


助けを求めることの大切さ


かがみの孤城で過ごした一年を通してこころたちは成長しました。

彼らは様々な面で成長しましたが、一番の成果は助けを求めることの重要性に気が付いたことだと私は思います。

こころたちは常に誰に相談することもなく一人で悩みを抱えていました。しかし、彼らはアキがオオカミに食べられたことをきっかけに助けを求めることの重要性に気が付きました。

また、彼女らはそれと同時に助けを求める人を助けようとする気持ちも手に入れました。

物語の終わりで、アキもとい喜多嶋先生のこころが「心の教室」に入る前の描写がすごく良かったです。

かがみの孤城でこころたちに救われた喜多嶋先生が、今度はこころたちを助けようと決意している場面でアキの成長を感じることができました。

助けを求めることって一見すごく簡単そうに感じますが、悩んでいる人たちからしたらすごく難しいことです。

『かがみの孤城』を読んで、助けを求められない人に手を伸ばせるように自分も成長しないといけないなということを実感させられました。



まとめ


『かがみの孤城』をようやく読みましたが、物語の面白さもテーマ選びも文句のつけようがない作品でした。

最後に余談になりますが、需要はないかもしれないけど彼女たちが今後どう生きていったかというスピンオフ作品をいつか読んでみたいなと思いました。(辻村深月さん書いてくれないかな…)





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冬野夜空さんの『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』を読みました。 

話題通り王道の純愛ストーリーだったので内容も予測できてしまったのですが、最後まで読み終わったときは涙が止まりませんでした。

以下、あらすじと感想になります。



『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』のあらすじ


主人公は、クラスで目立たない男子高校生・天野晴彦。彼の趣味は、亡き父の影響で始めた写真を撮ることだ。

ある夏の日、雨の中の花火を撮りたいという意欲にかられて友人の塁と花火大会に行くことになった。

雨が降る花火大会の中、ビニール傘をさした浴衣姿の女性を見つける。

切なげに花火を見上げるその美しい姿に見とれて、思わずカメラを構えると、その女性の正体はクラスの人気者、天文部の綾部香織だった。

翌日の放課後、輝彦は香織に「君を、私の専属カメラマンに任命します!」と告げられる。

この一言が平穏だった輝彦の人生を変えることになった。自由奔放な香織につられて輝彦は様々な場所へと連れていかれる。

香織に振り回されることも悪くないと思い始めた輝彦は、ある日衝撃的な事実を知ることになる。

それは、香織は明るい笑顔の裏で重い病と闘っているということだった。

病だと知った後も本当の香織を撮ることを目標にシャッターを切り続ける輝彦。はたして彼は、本当の香織を写真に残すことができたのだろうか。

苦しくて、切なくて、でも人生で一番輝いていた夏の2カ月間。2人の想いが胸を締め付ける、究極の純愛ストーリー!



感想(ネタバレあり)


作品としては個人的にはかなり感動できてかなり好きな部類です。

ただ、王道恋愛小説ということもあり、どうしても似たような作品である『君の膵臓をたべたい』と比較してしまう作品でした。

以下の感想にはキミスイのネタバレも少し含まれています。

キミスイとの類似点をあげてみると少し考えただけでも以下の5点を思いつきました。

  • 主人公の輝彦が地味な男子高校生
  • ヒロインの香織が明るい性格で人気者だが重病で余名わずか
  • 最後に二人で旅行に行く
  • 輝彦が香織のことを「君」と呼ぶ
  • 最後に日記で香織が輝彦にメッセージを残している

正直、読んでいる途中だともっと多く類似点が思いついていました。

逆にキミスイと違うところを軽く考えてみると以下の3点ぐらいしか思いつきませんでした。

  • ヒロインの香織はキミスイとは違い病気で亡くなる
  • 輝彦の友人が香織のことが好きだった
  • 恋愛要素がキミスイより強い

正直、王道な物語だから多少内容が似るのは仕方がないのかもしれませんが、あまりにもそっくりすぎる気もしますね…。若者狙いで主人公が高校生だから類似するのは仕方がないのでしょうが…。


ここまで悪い感想ばかり上げてしまっていますが、『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』でいいなと思うところもたくさんありました。

まず先ほどもあげたのですが、キミスイより恋愛要素が強いです。

それゆえに、輝彦が香織の願いを叶えようと努力している姿が描かれており、恋愛系がバリバリ好きという人にはこちらの作品の方が好みかもしれません。


二つ目は、輝彦が香織が生きることができないと知ったときに、彼女の最高の瞬間を遺影として残そうという考え方が面白かったです。

遺影というと真面目そうな顔写真や笑顔の作品が多い気がしますが、美しい瞬間を遺影として残すというのがいい考え方だなと思いました。

たしかに私も自分が死ぬことになるとしったら、無理して笑っている姿を残されるよりも、自分の最高の姿を写真で残してほしいですね。

作品のテーマ通り、星の一瞬のきらめきと人生の一瞬のきらめきをかけているのもよかったです。



まとめ


『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』は一生懸命生きる人の美しさを描いている作品でした。

本作は、キミスイとの類似点も多いのですが、王道恋愛小説としてオリジナルな要素もあり面白かったので未読の方はぜひ読んでみてください。

展開が予想できたとしても最後まで読んでほしい作品でした。








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