としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

2021年08月

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湊かなえさんの『ポイズンドーター・ホーリーマザー』が文庫化されていたので購入してみました。短いながらも湊かなえさんらしいイヤミスが味わえるみたいなので楽しみです。

今度WOWOWで連続ドラマ化するみたいですね。


『ポイズンドーター・ホーリーマザー』のあらすじ


女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から届いた古郷での同窓会の誘い。欠席を表明したのは、今も変わらず抑圧的な母親に会いたくなかったからだ。だが、理穂とメールで連絡を取るうちに思いがけぬ訃報を聞き……。(「ポイズンドーター」)母と娘、姉と妹。友だち、男と女。善意と正しさの掛け違いが、眼前の光景を鮮やかに反転させる。

本作は以下の6つの短編から構成されています。
  • マイディアレスト
  • ベストフレンド
  • 罪深き女
  • 優しい人
  • ポイズンドーター
  • ホーリーマザー
以下各短編についてネタバレを含んだ感想になりますので未読のかたは気を付けてください。





感想(ネタバレあり)


マイディアレスト


マイディアレストは妊婦の妹が殺人事件に巻き込まれて殺害されてしまい、姉が刑事に事情聴取をされている場面から始まります。

物語の序盤では姉に対して妹や母親の態度が酷いなと感じてしまっていたのですが物語を読み進めていくにつれて不穏な空気がでてきます。

最後の場面では、蚤をとる要領で妹のお腹をつぶしてその後顔をつぶしてしまいます。最後の「誰が何度あの夜のことを私に訊いても、答えは同じだ。——蚤取りをしていました。」という文章にはぞっとしてしまいました。

途中ででてきた猫の蚤取りが殺人につながっているとは思いもよりませんでした。

この物語は姉の目線で物語がしんこうしているため姉はかわいそうな人に移りますが、客観的にみると無職でいつまでも結婚せず家族から見ると姉はお荷物でしかありませんね。

母親が姉に対して厳しく、妹に対して厳しくないのも母親が物語中で言っているように年齢の問題であったり、姉を育てたことで育児慣れしてきたというところもあるんでしょうね。

一遍目からここまで衝撃的な作品が掲載されていると思わなかったので驚かされてしまいました。


ベストフレンド


ベストフレンドは大学四年の時に初めて脚本コンクールに応募し、九年目にしてようやく最終選考に残り優秀賞を受賞することができた漣涼香(さざなみすずか)が主人公です。

漣涼香は授賞式の日に最優秀賞の大豆生田薫子(まみゅうだかおるこ)と涼香と同じ優秀賞の直下未来(そそりみらい)と出会います。

授賞式の場で涼香は審査員三人中二人は涼香の作品を最優秀賞に推していたのに涼香のあこがれの存在である野上浩二が病気を盾に薫子の作品を最優秀賞に選んでいたことを知る。

その後涼香が書いた別のプロットが野上の手で映像化されるが評判が上がらず打ち切りされてしまう。一方薫子は脚本家として着実に成功をおさめる。

涼香は成功する薫子と自分の違いに耐えられなくなり、いつしか薫子のことを疎ましく思う。

最後の場面で凱旋帰国する薫子を涼香は花束を持って待つが薫子を刺そうとする人物から薫子をかばって涼香はなくなってしまう。


最後の涼香が刺される場面が本当に衝撃的でした。私は涼香が薫子を恨んで嫉妬から空港で薫子を刺そうとしているのだと思っていました。しかしそれは勘違いであったみたいで涼香は薫子を最初は恨んでいたかもしれないが徐々に才能を認め始めて最後は純粋に脚本家としての良きライバル(親友)として花束を渡しにきただけでした。

一方涼香を刺した直下は、涼香と違い薫子の才能を認めることができず最終的に薫子を殺そうとするという暴挙に出ます。

物語の途中でたびたび出てくる "『』" の台詞は涼香の心情ではなく直下のブログに書き綴られていた言葉だったとは…。

この物語の終わり方は正直爽やかなものではないが最後の最後に涼香と薫子のお互いが脚本家として競いあうことができる親友だと気が付くことができたのは良かったのかもしれない。




罪深き女


この物語は電気店で刃物を振り回して死傷者十五名を出した黒田正幸容疑者の知り合いだとして警察に彼のことを話す天野幸奈が主人公です。

天野幸奈は警察に黒田正幸は母子家庭で苦労していたことを伝え子ども時代には幸奈が母から虐待される正幸に食べ物を与えていたことなどを教えた。

最終的に幸奈と正幸の関係は正幸が幸奈を母親から解放するためにアパートを燃やしてしまいそれぞれが母親を亡くして孤児院に引き取られてしまい二人の関係は終わってしまいます。

そして事件の一週間前に二人は電気店で再開します。幸奈は再会を喜び今の自分が幸せであることを伝えましたが、正幸が幸奈だけ幸せになっていることを恨み殺人事件を起こしたと幸奈は話します。

しかし、今までの幸奈の話を警察から教えられた正幸は反論します。

そもそも正幸はもともと母親に虐待されていなかったが正幸の母の再婚を憎んだ幸奈の母の嫌がらせが原因で暴力を受けるようになった。

火事を起こしたのも幸奈を救うためではなく自分の母の暴力に耐えきれなかったからだ。

殺人事件を起こしたのも運の悪い人生に嫌気がさしただけで正幸は幸奈のことを覚えてすらいなかった。


幸奈の警察への証言は見当違いのものばかりでしたね。幸奈は自分のいいように思い出を解釈していただけで正幸にはなんとも思われていませんでした。

もし正幸が幸奈一家にであっていなければ幸せに暮らせいていたのかがきになりますね。

正直幸奈が不幸に酔いしれているだけだと分かった状態で「罪深き女」をもう一度読み直すと胸糞が悪い話で気持ち悪いですね。


優しい人


会社の同僚ときていたバーベキューで奥山友彦が殺害され、犯人は交際相手の樋口明日実であるとされている。この物語では友彦を知る人物と明日実の心情から事件の真相が浮かび上がってきます。

友彦を知る人物の証言はどれも似たような内容で友彦は自己主張が苦手だが頭がよく優しいというものばかりでした。

明日実の心情では明日実の小さいころからのエピソードが語られている。子どものころから母親に人に優しくするのが当たり前だと教え込まれてきました。

そのため社内でも気持ち悪いといわれている友彦にたいして同情していまい優しくしてしまいました。その結果友彦から勘違いされてしまい、明日実は友彦からのストーカー被害に苦しめられることになります。明日実をそれを上司や警察などに相談するが相手にされません。

明日実は友彦が最後一緒にバーベキューにいけば諦めてくれるといったのでそれを了承します。

しかしバーベキューの場で友彦は彼氏を人質に脅迫し、明日実に結婚をせまります。その行為に嫌悪感をいだいた明日実はテーブルにあった包丁に手を取り友彦を刺し殺します。


友彦の周りの人間の話を聞いてると友彦はとても優しい人物のように見えます。しかしそれは表向きの話でした。ブログで人の悪口をかくなど友彦は裏の顔をもっていました。

一方明日実も表向きは友彦と同じく優しい人です。しかし明日実は優しいのではなく人から頼まれたことを断れずにやっているというタイプでした。

最後の優しい人の証言はとても深いですね。優しいことは素晴らしいのかもしれませんが我慢して優しくしたり無理して優しさを背負わせるのはあまりいいことではないのかもしれませんね。

周りの人間ももし優しい人を見かけたらそれを拍手して見守るのではなくその優しい人の手助けをするべきなんでしょうね。


ポイズンドーター


この物語の主人公は女優である藤吉弓香です。彼女は母親に女で一つで育てられたが、レール通りの人生を歩むのが苦痛となり母親の言動にストレスを感じるようになる。

そんな弓香に社会的なテーマを取り上げて討論する番組のオファーが届く。テーマは "毒親" でした。毒親に苦しんでいる子どもたちの励みになると思い、オファーを引き受ける。

その番組のあと親友である理穂から弓香の母親がなくなったという連絡が届く。

世間では毒親のエピソードや弓香が出版した本が原因で自殺したのではないかと噂されている。


この物語のタイトルは毒娘だ。親をテレビやネットなどで批判するような人間は毒娘(毒息子もいるだろうが)だと言いたいのだろう。

親が子どものころをテレビなどでほめることはあっても批判することはない。一方子どもはネットやテレビを通じて親を批判することがある。

世間一般からみれば毒なのは親ではなく子どもなのかもしれない。




ホーリーマザー


『ホーリーマザー』はポイズンドーターの後の物語で、弓香の友人の理穂視点です。

理穂の義母は弓香の母の友人であり、弓香が母のことを毒親であると公表したことが許せなかった。理穂は義母のことを疎ましく思いながらも義母の抗議文に訂正を加えた週刊誌に送る手助けをした。

そんな中、理穂に弓香から久しぶりに連絡が入りヒステリックな調子で会えないかといわれる。

弓香と再会した理穂は弓香の母の佳香は毒親ではないと反論し、本当の毒親を知っていると伝える。ただ理穂の言いたいことは弓香には通じませんでした。

弓香と別れた理穂は娘から嫌われて毒親だと思われたとしても自分が母にしてもらったように育てたいと考える。いつか娘も母は自分のために厳しかったのだと分かってくれるから。


毒親の基準って難しいですね。少し厳しいぐらいだったら子どもは親のことを毒親だと思うことはないかもしれませんが、継続的に厳しいのが続くと精神的にまいってしまい親のことを毒親認定しまう可能性があります。

一方物語中に登場したマリアの母親のような人物は娘を金儲けのために売るというどをこした毒親だ。理穂は毒親と言っていいのはこういう人物だけであると言っているが本当にそうなのだろうか?

母親が全員完璧な聖母のような存在になるのは無理だろう。たあだ子どもにさえ将来的に聖母(良い母だったと)思ってもらえれば、毒親と悪態づかれることはないので教育成功なのだろう。

弓香も結婚して姑と出会うことがあったら自分の母のことを毒親だといわなかったのかもしれないですね。



まとめ


ここまでご覧いただきありがとうございます。

どの短編もメッセージ性が強く深く考えられる話ばかりでした。また多くの話が読了後後味が悪かったのではないのでしょうか。

私は本作の中では一番『ベストフレンド』が好きです。最後に涼香がなくなったのは後味が悪かったですがまだハッピーエンドと言えるのではないのでしょうか。

みなさんはどの話が好きですか?

他にも湊かなえさんの短編が読みたい方には『サファイア』がおすすめなのでこちらもぜひ読んでみてください。


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安藤祐介さんの『本のエンドロール』を読みました。

印刷会社で働く主人公たちの様子から、本は作家だけではなく多くの人の手によって我々読者のもとに届くんだということを認識することができる作品でした。

作家が書いた物語が本として発売されるまでの過程も説明されていて本好きなら必ずはまる一冊です。

以下、あらすじと感想になります。


『本のエンドロール』のあらすじ


多くの人たちは本は作家一人の手で出来ていると思っている。

しかし、実際には本の奥付には様々な会社名が載っており、その会社名の後ろには様々な本を造るのに関わった人たちがいる。

この物語の主人公である豊澄印刷の営業・浦本も「印刷会社はメーカーだ」という思いを持ちながら本造りに携わる一人だ。

浦本は本のことが大好きで、そんな大好きな本を造ることに携われるのが嬉しい余り、仕事では出版会社や著者の無茶ぶりを受けて日々トラブルに見舞われている。

ときにはたった一文字の印刷ミスが原因で編集会社の人間に全て刷り直せと言われたり、納期ぎりぎりになって表紙のイメージが違うと言われたり印刷会社の営業は色々と大変だ。

それでも本が好きな彼らは、読者や著者のことを思って日々できる限り良い本を造ることができるように努力している。

本を愛する人のために送る、作家によって紡がれた物語が本になるまでの過程を描いたお仕事小説がここに開幕する。



感想(ネタバレあり)


本は一人では作れない


今まで本が私たち読者の手元に届くまでの過程は、作家が作品を書き、それを編集が手直しして、印刷して、本屋で販売するぐらいだと思っていました。

しかし、この作品を読んで本が造り上げられるまでに作家以外に少なくともデザイナー、出版社、印刷会社、運送会社、書店の手を通っていることが分かりました。

本書の中心として描かれている印刷会社の人たちに申し訳ないのです、『本のエンドロール』を読むまで印刷会社って家庭用の印刷機が早くなったものを使って紙を印刷して製本しているだけだと思っていたのですがそんなことはありませんでした。

紙へのこだわり、表紙のこだわり、インクの色など言われたとおりに印刷しているだけではなく、できる限り良いものを作るために色々と試行錯誤していることが分かりました。

印刷って今や機械さえあれば誰にでもできると思っていたのですが、インクや紙に関する知識に詳しい人しかできない仕事だったのですね。

表紙の印刷なんかは特にこだわりが強いことが分かって、内容重視の私はあまり意識して表紙を見ることがなかったのですがもっと表紙でも本を楽しまなければと思いました。


また本書では印刷会社ではなく本屋が本を売ろうとするためにポップなどを作り上げている様子も描かれていました。これを読んで次に本屋に行くときは、様々なポップや本の並べ方なんかも意識したいです。

本を造るのに作家以外の存在は変わりがきくと思っていましたが、本書を通してそれは大きな間違いだと気づきました。

多くの人が関わって出来上がる本を読むことができる私たちは幸せ者なんですね。





どうして働くのだろうか


『本のエンドロール』はお仕事小説として読んでも色々と考えさせられることがあり面白かったです。

この物語の登場人物たちは夢のために働く派と生活のために働く派で別れていました。

世の中の多くの人は仲井戸や野末のように生活のためにたまたま縁のあった会社で働いている人が多いのではないのでしょうか。

これって夢を追いかけている人たちには理解できないことかもしれませんが、私は二人のように生活のためにと割り切っている人がいてもいいと思いました。

もともと金のために働いていたとしても、仲井戸や野末のようにその人たちは長年同じ仕事をしているわけなのですからその仕事に対してプライドがあります。

彼らが本を大好きだったように金のために働いている人たちもどこかで自分たちの仕事に対して強い思いがあるに違いありません。

また、生活のためと割り切っているからこそ冷静に状況を見て判断できるところも彼らの強みですね。


一方、主人公である浦本たちは夢を追いかけるあまり空回りしがちなところもあります。

ただ、仕事にかける情熱がすごいので生活のために働いている人と違って新しい発想ができる人が多いのかなという印象を受けました。

浦本も書籍の値段を下げるためにペーパーバッグの本を印刷しようとするなど新しい発想を出している場面が目立ちました。

こういう人たちが会社に新しい事業をもたらしてくれたりするんでしょうね。


人それぞれ働く理由は違うかもしれませんがそれぞれのタイプでそれぞれの長所や短所があることが本書をとおして分かりました。

また、どんなに仕事が嫌いな人だったとしてもどこかで自分の仕事に誇りを持っている可能性があるということに気づけて良かったです。



紙の書籍と電子書籍


第四章の『サイバー・ドラッグ』では従来の紙の書籍か、電子書籍どちらが良いかという議論がされていました。

これは読書好きの間でもよく議論のネタになるのですが、本書ではどちらも利点があることを上手に書かれていました。

電子書籍の利点として、本を置く場所をとらない、いつでもどこでもすぐに本を買うことができる、昔の作品を再出版することができるということがあげられていました。

これを読んで紙派の私としても確かにと思うところがありました。

実際、夜中とかに突如本が読みたくなって電子書籍を購入するなんていうことも多々あります。

また、本屋に行っても在庫がないとかで電子書籍を仕方なく買うことなんかもあったりします。


紙の書籍の利点として、表紙の美しさや紙の特別感、本にサインを書けるなどがあげられていました。

私としては実物として本があるからこその特別感という気持ちがすごく分かりました。

案外本好きの人の中には本を読むのも好きだけど、それと同じぐらい本棚が本で満たされていることに満足感を得ている人も多い気がします。

お互いにそれぞれメリットがありますがやっぱり紙派の私としては紙の書籍が減ることは悲しいので、今後もできる限り書店に足を運んで本を買おうと思います。



まとめ


『本のエンドロール』は本が造り上げるまでの様子を読者に教えてくれる作品でした。

本好きなら本書を読むことでますます本が好きになると思うので未読の方はぜひ読んでみてください。






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仕事でWPFアプリケーションの回収をしていたところなんでもシングルスレッドでやってしまっているようなコードがたくさんあり、それが原因で設計どうり動いていないコードがちらほらありました。

そこで本記事ではWPFで重い処理などを非同期処理で実装するべき理由を3つ紹介していきます。


非同期処理で実装する理由


1.画面の描画が行われない


シングルスレッドで全て実装してしまうと重たい処理が走る前に画面の表示を変更する処理をいれているにも関わらず、画面の表示が変更されるのは重たい処理が終わった後になります。

例えば以下のような画面があるとします。

キャプチャ


この画面の「重たい処理」ボタンを押せばボタン上部にStartという文字が現れ、重たい処理終了後にEndという文字が表示されるとしましょう。

このときボタン押下時の処理を以下のように同期処理で実装してしまうとStartという文字が画面には表示されません。

private void Button_Click1(object senderRoutedEventArgs e)
{
test.Content = "Start";

// 重たい処理開始
    for (int i=0i<1000000; ++i)
    {
     for (int j = 0j < 1000000; ++j)
        {
         Math.Sqrt(j);
        }
    }
// 重たい処理終了

    test.Content = "End";
}

こういう場合に重たい処理を以下のように非同期処理で実装していると開始時にはStartという文字が表示され、終了時にはEndという文字が表示されます。

private async void Button_Click1(object senderRoutedEventArgs e)
{
    test.Content = "Start";

    // 重たい処理開始
    await Task.Run(() =>
    {
        for (int i = 0i < 1000000; ++i)
        {
            for (int j = 0j < 1000000; ++j)
            {
                Math.Sqrt(j);
            }
        }
    });
    // 重たい処理終了

    test.Content = "End";
}






2.ウィンドウが固まる


重い処理を非同期処理で実装していない場合、ウィンドウが固ってしまいウィンドウを移動させることができないという問題が起こります。

重い処理をしているんだからウィンドウが動かせないぐらいいいだろうとか思う人もいるかもしれませんが、ユーザからしたら使い勝手が最悪です。

最小化ボタンとかがついていないアプリの場合、常に画面の前面にでてきてかなりうざいです。

オープンソースのアプリでもたまにそういったものがありますが、ユーザの使い勝手を考えましょう。


3.アプリがダウンする


先ほどウィンドウが固まるという話をしましたが、最悪アプリがダウンする可能性もあります。

実際に私の携わっていた仕事の一つでは5時間ほど処理時間がかかるのにその間に誤って画面をクリックするとアプリがダウンするというものもありました。

個人開発レベルでもこれは不便だと思うので非同期処理をいれて対策をしましょう。



まとめ


今回、重い処理を非同期処理でするべき代表的な理由3つを紹介しました。

他にも色々とふべんな点があるのですが、同期処理で実装するメリットは設計が楽で手抜きできるぐらいしかなくデメリットが大きいのでWPFアプリケーションを作る場合は、スレッドを意識しながら設計やコーディングをするようにしましょう。







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梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』を10年ぶりぐらいに読み返しました。

子どもの時とは違う印象を受けた作品で、名作はどの年齢層の人が読んでも楽しめるから名作なんだなということを感じました。

以下、あらすじと感想になります。


『西の魔女が死んだ』のあらすじ


中学生になった少女まいは小学生の時にはできていた、友人に誘われたら行きたくなくても一緒にトイレに行く、興味のない話に楽しそうに相槌を打つという女子のグループで生きていくために必要なことをするのに嫌気がさした。

こうしたことをしなかったまいは、気づけば孤立しクラスメイトからは嫌がらせを受けるようになり不登校になった。

そんなまいだったが母の勧めで夏のひと月あまりを西の魔女と呼ばれている自分の祖母の元で過ごすことになった。

西の魔女の元で過ごし始めたまいは、自分も魔法が使えるようになるために魔女の手ほどきをうけることとなった。

その手ほどきの内容は規則正しい生活を送り、なんでも自分で決めるというものだった。

西の魔女の家での修業が始まってから一月後、単身赴任の父がまいの元をおとずれて「父と母とまいの三人で自分の仕事先で一緒に暮らさないか」とたずねられた。

まいはこの質問に対する答えを自分でどのように決めたのだろうか。



感想


まいの成長


この作品は思春期であるまいの成長を上手に描いています。

まいはクラスメイトたちの自主性のない行動にもやもやしながらもそれに対して意見などができなかった結果一人孤立してしまいます。

自宅でも母親のちょっとした発言で傷ついたり、自分が学校に行きたくない本当の理由をはっきりとさせることができず母に相談することができませんでした。

そんなまいですが西の魔女であるおばあちゃんとの生活をきっかけに彼女は変わり始めます。

彼女が変わることができた要因の一つとして魔女修行の中で「何でも自分で決める」ということをおばあちゃんに教えてもらったからでしょう。

今まで人任せだったまいは自分の畑の場所を自分で決めたりするなどして少しずつではありますが、どんなことでも自分で答えを出せるようになってきます。

最終的には、今の学校からは逃げることになるかもしれないが父親の住んでいる町で新しい生活をはじめるというという答えを誰に頼ることもなくまい一人で導き出すことができるようになりました。


また、まいは魔女修行をはじめる前は人の見た目や無愛想さから自分と会わないものを敵だと決めつける習性がありました。

その様子はまいがゲンジさんを毛嫌いする様子から分かります。

しかし、おばあちゃんの死で二年後久しぶりにゲンジさんにあったまいは誰にもゲンジさんに対する暴言をはきません。

おそらくおばあちゃんの家にいたころのまいなら「おまえがおばあちゃんを殺したんだ」といった風にゲンジさんに暴言を吐いていた可能性があります。

おばあちゃんの教えと二年という時間がまいがゲンジさんと普通に会話できるように成長させました。





規則正しい生活の重要性


ちょうどまいぐらいの年齢になってくると目的もなく深夜までテレビを見たり、ゲームをしたりして朝起きるのが遅くなりがちです。

この作品はそんな不規則な生活を送る人たちに規則正しい生活を送ることの重要性を示しています。

早寝早起きができない人は生活リズムがくずれて結果的に怠惰な生活を送るようになってしまいます。

また、おばあちゃんはまいに勉強の時間は本を読むとかでもいいから目的をもって何かをするように言います。

特定の時間に目的を持って何かをするというのは子どもだけではなく大人になってもとても大切なことです。

子ども時代に決まった時間に目的を達成できなかった人たちは大人になっても生活にメリハリをつけることができず、仕事でもダラダラと残業をして意味のない時間を過ごしている人が多数です。

こんな風に子どものときから規則正しい生活を送ることは大人になったときに強い精神力を持った人間になるために非常に重要です。

心あたりがある人はまいと同じように魔女修行をする必要がありますね。


名言


本作には多数の名言がでてきますが、その中でも私が最もいいなと感じた言葉を紹介させていただきます。

それはおばあちゃんがまいに対してたびたび言っていた、「アイ・ノウ」です。

これはおばあちゃんがまいのどんな言葉でも受け入れてくれる魔法の言葉です。

子どもを自己肯定感の高い人間に成長させるためには、否定ばかりするのではなくどんな言葉でもとりあえず受け入れるということが大切なんだなということをこの言葉から学ぶことができます。

私も子どもができたら子どもの意見を否定することなくアイ・ノウという言葉で子どもの全てを受け入れることができる人間になりたいです。



まとめ


『西の魔女が死んだ』は何歳になってもおばあちゃんから様々なことを学べる作品です。

自分もおばあちゃんのような素敵な人間になれるように日々精進していきたいです。




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森見登美彦さんの『恋文の技術』を読みました。

『恋文の技術』というタイトルから恋に対しての深刻な話なのかなとか思っていたのですが、読んでみると守田君の手紙の内容が面白くて最初から最後まで笑い続けていました。

以下、あらすじと感想になります。


『恋文の技術』のあらすじ


主人公は4月の初めに京都の大学院から、遠く離れた石川県の能登半島の遠い実験所に飛ばされた守田一郎。

初めての一人暮らしによる寂しさと好きな相手に恋文を綴るために文通修行と称して京都に住むかつての仲間や家族、家庭教師をしていたときの教え子などに手紙を書きまくる。

手紙を通して守田は友人の恋の相談にのったり、小説家の森見登美彦の文句を聞いたり、研究室の先輩の嫌味を聞いたり、教え子の悩みなどを聞いたりしていた。

しかし、文通をいくつかいても守田は本当に好きな人への手紙はうまく書くことができない。

そんな彼だったが久しぶりに京都に帰った7月のある日、友人とおっぱいを克服するために桃色ビデオを見ながら「おっぱい万歳」と叫んでいるところを意中の相手である伊吹さんに目撃されてしまう。

恋文も書けず、意中の相手に恥ずかしい姿を見られてしまった守田は伊吹さんに自分の気持ちを伝えることができるのだろうか。

森見登美彦が送る、恋する男性を主人公とした書簡体小説。



感想(ネタバレあり)


書簡体小説と言えば二人三人の手紙のやりとりを楽しむ作品が多いのですがこの作品には守田君の手紙しかでてきません。

第一話の『外堀を埋める友へ』の二通目の手紙を読んだときに、これから先守田君の手紙しか出てこないのでは…ということに気づいたときは一人だけの手紙だと物語が冗長になって面白くなくなるのではと不安を覚えました。

しかし、そんな心配をする必要はありませんでした。

とにかく守田君の文才(森見登美彦先生の文才)が素晴らしすぎて終始飽きずに読み続けることができました。

守田君が文通を送る相手によって文体が微妙に違うのも冗長にならなかった理由なんでしょうね。

妹には自分の偉さを誇示するような手紙を書き、まみやくんには小学生相手に難しい感じをいれないなど守田君の優しさや見栄っ張りっぷりが分かる手紙ばかりで読んでいてい終始にやにやしていました。

また、一人の手紙だけで全ての登場人物を想像できるように書けるなんて森見先生の技術には
恐れ入りますね。

全ての相手との手紙が面白かったのですが、友人ということもあり一番遠慮なく手紙を書いているんだなということが分かる小松崎君への手紙が個人的には好きです。

読み始めの第一話と守田君が「おっぱい万歳」と叫ぶ第五話の手紙は読んでいて笑いが本当にとまりませんでした。


著者が物語に登場


『恋文の技術』の作中には著者である森見先生が登場人物として登場しました。

近年の小説で著者自身が登場人物の一人として登場するのはかなり珍しい気がします。しかも、主人公ではないキャラで登場するという。

これは夏目漱石の書簡集を意識して自分を登場させてみようと思ったんですかね?

作中の森見先生は常に締切に追われながらもファンレターを大切そうに読んだり、守田君への手紙は欠かさない人物でしたが実際の森見先生もこういう人なのかどうかというのがすごく気になりました。

ちょうどこの時期に発売した『夜は短し歩けよ乙女』を書いている描写があったりなど、森見作品好きに対するファンサービスがあったのも良かったです。

『夜は短し歩けよ乙女』のネタを守田君からの手紙からもらっているような描写がありますが、こうした何気ない日常を作品のアイデアとして取り組んでいることを考えると先生のすごさが分かりますね。


相手を確実に落とせる恋文の技術とは


守田君は伊吹さんに恋文を書くために伊吹さんを落とすための恋文の技術を取得しようとしますが、なかな取得できません。

恋文の技術を教えてもらおうと筆一つであまたの女性を魅了している森見登先生にも答えを聞こうとしますがそんな彼も守田の求める恋文の技術は持っていませんでした。

しかし物語の終盤で守田がついに伊吹さんへの失敗書簡から彼なりの恋文の技術を見つけます。

そんな守田君の恋文が第十二話で披露されますが、彼の恋文に読んでも読んでも伊吹さんに好きという気持ちを伝える言葉がでてきません。

しかし、最後の追伸でこのように書かれていました。

ついでに、守田一郎流「恋文の技術」を伝授します。コツは恋文を書こうとしないことです。僕の場合、わざわざ腕まくりしなくても、どうせ恋心は忍べません。
ゆめゆめうたがうことなかれ。
『恋文の技術』 p.399より

わざわざ恋文を無理して書かなくても恋心は隠せないよという守田君のメッセージむちゃくちゃおしゃれじゃないですか!?

伊吹さんのような守田君が好きになるほどいい人なら手紙も最後まで読むだろうから、これは守田君なりの恋文の技術の答えですが素敵だなと思いました。

ただ、この技術は鈍感な人からはもしかしたら気づかれないかもという欠点があるのでみんなが使えるわけではありませんね(笑)

絶対に相手を落とすことができる恋文の技術なんて存在しないから、自分なりに試行錯誤して自分に合った恋文の技術を見つけろというのが森見登先生からの読者に対するメッセージなような気がしますね。



まとめ


現代はメールやLINEで手軽にメッセージのやりとりができますが、こうして時間をかけて相手とやりとりする手紙も素敵だなと思いました。

守田君が手紙のなかに写真などを付けていたこともありますが、ああいうのもおしゃれですよね。

ああ、天狗ハム食べたいな。





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