タイトルに惹かれて購入した、紙吹みつ葉さんの『おいしい給食』を読みました。
こちらの作品全然知らなかったのですが、2019年に放送されていたドラマの原作小説みたいです。
また2020年の3月6日からは映画が上映されるみたいです。
小説を読んでみてどんな感じで映像化されているのかがすごく気になりました。
以下簡単なあらすじと感想になります。
ネタバレも含みますのでネタバレなしで読んでみたいと考えているかたは注意してください。
『おいしい給食』のあらすじ
給食を楽しみに毎日学校に通う無愛想な数学教師・甘利田幸男。そんな彼の前に給食を独自の方法でアレンジして楽しむ生徒・神野が出現する。
給食を愛する二人の間で、どちらがよりおいしく給食を食べられるかという給食バトルが静かに始まる。
笑いあり、涙あり、美味しさありの給食バトルの結末は…。
鯨の竜田揚げ、八宝菜、酢豚などの懐かしの給食満載の給食物語。
『おいしい給食』の感想
甘利田幸男の厳しさの裏に隠れるやさしさ
一見、甘利田幸男は給食を食べるためだけに学校に通っている無愛想な教師として描かれています。校務分掌も生徒指導という役割を持っておりどちらかというと生徒にあまり好かれないタイプの教師です。
しかし、作品を読み進めていけば分かるのですが、陰では生徒のことを考えているむっちゃいい教師です。
第一話の『海の王者 鯨の竜田揚げ』では給食を食べるのが遅いのが嫌で自作自演で給食費を盗まれたふりをする女子生徒・君山が現れました。
そんな君山に気を使い、「保健室でゆっくり食べながらでも話を聞いてあげてください」と副担任の御園に頼みます。
第一話を読んだ時点で甘利田すごくいい奴じゃないかとなりました。
特に個人的に印象だったのは第四話の『ワンタンスープと名前の長いパン』の神野が御園に甘利田の決めた席がいいというシーンです。
このシーンで適当に決めたような席も、甘利田が生徒一人一人のことを考えて席を決めたということが分かりすごく感動的です。
給食を食べるのが遅いこの前にあえて体格の大きい子を配置して、いじめられるのを防いだりしているなど一つ一つの席に意味があったという。
私が学生時代の時もくじで決めない席は不公平だと思うことがありましたが、教師の思いがあって決められた席だったのかもしれません。(適当だった可能性もあるけど)
神野の独創的な給食レシピ
甘利田のライバルの神野ですが、給食愛の強い甘利田がライバル視するのが分かるぐらい、給食の食べ方が美味しそうです。個人的に印象に残った食べ方が二つありました。
1. 冷凍みかんによるみかんシャーベット
給食で出る冷凍みかんを独自で砕いてシャーベットにするなんて案普通思いつかないですよね。
大人になった今だと缶詰の果物を買ってきて砕いてシャーベットにするということをたまにしますが、給食でこれと同じする人がいるとは…。
今もし私が学生だったらこの作品を読んだ後に冷凍みかんがでるのが楽しみで仕方がない気がします。
2.鯨の竜田揚げのタルタルソースサンド
給食の揚げ物って何かひと味足りていない気がしていましたが、第一話を読んでその正体に気が付きました。
それはソースだったんですね。
神野は給食室からこっそりタルタルソースを盗んでタルタルソースサンドを作りますが、食べているシーンを想像しただけでおなかがすいてきます。
タルタルソースがあるだけでも美味しいだろうに、まさかサンドウィッチにするとは。
小説を読みながら、神野を見ている甘利田と同じ気持ちになってしまいました。
他にも美味しそうな食べ方が様々ありましたが、給食がお題になっているので誰でも味が想像できるのがおもしろいですね。
感動的なラストシーン
『おいしい給食』はどちらかというとギャグよりの作品ですが、ドラマと映画の原作小説ということもありラストシーンはすごく感動的でした。ドラマの最終回となる第七話の『二人だけのカレーライス』でも、映画のラストを飾る第十話の『おいしい給食』もすごくべたな展開でしたが熱かったです。
甘利田は普段、神野のことをライバルとしてしか見てません。
しかし、第七話と第十話では神野を助けるために甘利田が必死に頑張ります。
二人にしか分からない給食によって芽生えた絆が表面化するすごく良い物語でした。
最終話では常節中学校では今年度をもって給食が廃止されることが決まってしまいますが、神野は給食がなくなった後も色々な食べ物を美味しく食べる方法を探し続ける気がします。
将来的には世界に美味しい料理を届ける料理人になっている可能性もありますね。
甘利田も別の給食がある学校に移動することになります。
今まで一人で給食の良さを理解していましたが、新しい学校で神野の影響もあり多くの生徒と給食の良さについて共感しあおうと0-pl9、87c654する気がします。
最後に
最後に少しだけ本作の批判になってしまいますが、最後三話の映画のために作られた甘利田と御園の恋愛要素は個人的にはいらなかったなと感じてしまいました。そのシーンを欲を言うならば甘利田と神野の給食バトルに使ってほしかった。
少し残念な点もありましたが、『おいしい給食』の原作小説がとても面白かったので、今度は映像で実際にどのような給食が出ていたかを確認してみたいと思います。
神野のアレンジを映像で見るのが楽しみです。
この記事を読んで少しでも『おいしい給食』に興味を持ってくれる方がいましたら嬉しいです。