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森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』を久しぶりに読み返しました。

本作は様々な賞を獲得したり、2017年にはアニメ映画化されるほどの大人気作で、森見登美彦さんの代表的な作品です。

読んでいると自宅にいるにも関わらず、自分も先輩や乙女と京都の街を冒険しているような気分になれました。

以下、あらすじと感想を書いていきます。






あらすじ


「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。

しかし、「黒髪の乙女」は何度出会っても先輩の想いには気がつかない。

先輩も彼女に自分の気持ちを伝えることができず、頻発する偶然の出会いがあるたびに「奇遇ですねえ!」と言うばかり。

そんな二人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者や珍事件との出会いばかり。

先輩は幾多の珍事件のなかで黒髪の乙女に想いを伝えることができるのか。



感想(ネタバレあり)



純粋な『黒髪の乙女』


先輩が想いを寄せる、サークルの後輩の黒髪の乙女がとにかくかわいい作品です。

黒髪の乙女は純粋な性格で人を疑うということを知りません。その日出会った人に何度胸を触られたとしても、偶然手があたっているだけだと思うような人物です。

しかし、その純粋さが原因で先輩が何度偶然を装って出会ったとしても、先輩の「奇遇ですね」という言葉を信じてしまい、なかなか先輩の想いに気がつきません。

先輩が彼女と結ばれるために必死に努力しているのに、想いが実らない様子が読者をやきもきさせます。

ただ、物語を読み進めるにつれて、先輩の想いに気がつき純粋無垢な少女から恋する乙女へと変化していきます。

最後まで読んだ人は恋する乙女になった彼女にやっと想いに気づいたかと安堵すること間違えないでしょう。



とにかく遠回りな『先輩』


『黒髪の乙女』との恋愛を成功させるために、先輩は様々な手を打ちますがとにかく遠回りな方法を選びます。

読んでいる多くの人は、直接遊びに誘ったりしたら気持ちをもっと簡単に伝えられるのにとやきもきしたに違いがありません。

黒髪の乙女が古本市に行くと分かれば、普通でしたら一緒に行きましょうと誘うでしょう。

しかし、先輩は偶然出会い、同じ一冊の本をとろうとして手が触れるという少女マンガのような運命の出会いを求めて彼女を追いかけます。そんな先輩の様子を読んでいるとおもしろいのですが、何だか少しだけ切ない気持ちになってしまいます。

もしかしたら現実でも、人生で恋愛をした経験がなければ、先輩のように草食系の中の草食系のような行動をしてしまう人がいるのかもしれません。

ただ、先輩のように彼女をこっそり追いかけているとストーカーとして訴えられる危険があるので気をつけないといけませんね(笑)。





登場人物の感情や行動が伝わりやすい独特な文体


森見登美彦さんの書く文章は他の作家では味わえない個性的なものです。

特に先輩や乙女の心理を描写する文章が上手で彼らがどのようなことを考えているのかが、伝わりやすいため読んでいるこちらも彼らと一緒に四苦八苦しているような気分になります。

個人的に一番気に入っている文章を紹介しておきます。

彼女が後輩として入部してきて以来、すすんで彼女の後塵を拝し、その後ろ姿を見つめに見つめて数ヶ月、もはや私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威と言われる男だ。

『夜は短し歩けよ乙女』 p.81より

『私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威』という表現がとても好きで、どんだけ彼女の背中を追っかけて来たんだよっていう感じです。

他にも魅力的な文章がたくさんで読んでいてとても楽しい気持ちになります。



最後に


『夜は短し歩けよ乙女』を久しぶりに読み返しましたが、とてもおもしろかったです。

映画を見たことがないのでそちらも見てみたいです。

また、関連作品である『四畳半神話大系』も読み返したくなりました。近いうちに読み返そうかな。