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喜多喜久さんの『恋する創薬研究室』を読みました。

こちらの作品は、喜多喜久さんが得意とする化学と恋愛を組み合わせた小説です。

ラブケミストリーシリーズとかと比べると爽やかな恋愛小説というよりは、女性の恋愛に対するどろっとした様子などが描かれており、従来とはひと味違う作品でした。

以下、あらすじと感想になります。



『恋する創薬研究室』のあらすじ


理系の大学院生である花奈は、イケメン助教授である北条智樹に恋をした。

しかし、彼女はこれまでの人生で恋人ができたことがない。

その上、実験が下手で研究も上手くいっておらず恋どころではない状況…。

そんな彼女のもとにある日一通のメールが届いた。その内容は、学内で噂されている恋愛相談事務局に来てほしいというものだ。

恋愛相談事務局に努める早凪に出会ったことで、パッとしない理系女子から卒業しようと一念発起し、恋を叶えるための奮闘を始める。

ところが、花奈の前に美人で成績優秀なライバルが立ちふさがり、不気味な脅迫状まで届くように…。

果たして彼女の恋は届くのだろうか。

恋愛、実験、謎解きが合わさったラブコメ×理系ミステリーがここに開幕!



感想(ネタバレあり)


本作は最後にどんでん返しを狙ってイヤミスな感じにしようとしていたのだろうが、個人的な感想としては正直微妙だなといった感じの作品でした。

もともと喜多さんのさわやかな恋愛小説を読みたいという想いがあったので、より微妙に感じてしまったというのもあると思いますが、作品としても全体的にまとまりにかけているのかなという印象が残りました。

ラストも後味悪いような、悪くないような微妙な感じだったり…どちらかに振り切ってくれていたらもっと面白かったのかな?

少子化対策で恋愛相談室があったり、インフルエンザの薬を作っていたり物語のテーマとしてはなかなか面白そうなものが多い気がしたのも相まって残念な作品でした。

悪いところばっかり語ってもあれなので以下は個人的に驚かされた部分などについて書いていきます。


早凪の正体について


ラストシーンで早凪の正体が敏江だと分かったときは、結構驚かされました。

敏江は、智輝から見たらおじいちゃんの奥さんだったのでまさか20代の早凪だとは思いませんでした。

敏江を事故に巻き込んでしまったのが早凪だと思っていたり、敏江が足が悪いことも年寄りだから足が÷悪いという風に読者に想像させるような書き方をしていたため、敏江と早凪が同一人物であったということを予想できませんでした。

正体を知るまでは智輝君おばあちゃんのことが好きなんてなかなかやるなとか思っていたのですがまさか年下だったとは…。

そりゃあ若くて心がきれいな女性がいたら花奈ちゃんは負けちゃうだろうなという感じでした。


登場人物が全員悪い人物に見えてしまう


『恋する創薬研究室』の登場人物ってほとんどの人がなんかしらの嘘をついていたり、性格が悪い奴だったりしてあんまり好きになれませんでした。

物語の都合上、智輝君や花奈ちゃんも悪い奴に見えてしまうのは仕方ないかもしれないけどもう少し挽回の要素がほしかったです。

特に花奈ちゃんは恋愛初心者で奥手という設定だったので、もっとうぶな恋愛を描いてほしかった…。

まさか、脅迫を受けたふりをして智輝君の気をひこうとするなんて相当悪い奴ですよね…。

早凪も恋愛相談院という立場だから智輝に恋人ができないことを心配していたという設定も分からなくはないが、そんな協力をしてほしくなかったですね。


また、花奈のライバルとして描かれていた結崎もただただ性格の悪い奴という風な感じで気がついたら物語からフェードアウトしていましたね。

ジャンプ漫画じゃないから友情を書けとは言わないものの、結崎が智輝を好きになった理由などを掘り下げて感情移入させてほしかったです。


実はラブケミストリーと同じ世界線


『恋する創薬研究室』は大学は違えど別作品の『ラブケミストリー』と同じ世界線で起きている物語でした。

花奈が大学院入試を受けたしばらく後に藤村君がプランクスタリンの合成ルートに関する論文を提出していることが書かれていましたね。

世界線が同じっていうのは、喜多喜久さんの作品が好きな身として嬉しかったのですが、花奈が実は合成の天才だったという設定はいらなかった気がしました。

藤村君は特殊な能力もあるが毎日論文を読むなどかなりの努力家なので合成ルートを見つけることができたのは納得がいくが、大学院で問題を見ただけの花奈が合成ルートを見つけることができたのは納得いきませんでした。



まとめ


『恋する創薬研究室』は個人的には喜多喜久さんらしくない微妙な作品でした。

すすんで人に読んでほしいと感じる作品ではありませんでした。

喜多喜久さんの作品が好きな方なら読んでみてもいいかもしれませんが、ラブケミストリーとかの感じが好きだという人は私のようにがっかりする可能性が高いです。

もし、当ブログをみて読んだひとがいるなら感想を教えてほしいですね。