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三浦しをんさんの『ののはな通信』が文庫化されていたのでさっそく読んでみました。

第一章を読み終わった時点では正直自分好みではないかも…とか思っていたのですが、最後まで読んでみると人とのつながりということについて深く考えさせられる作品で感動することができ非常に良い作品でした。

以下、あらすじと感想になります。


『ののはな通信』のあらすじ


ミッション系のお嬢様学校に通う女子高生の”のの”と”はな”。

”のの”は少し貧乏な家庭で生まれた。

親から将来稼げるようになれと言われて育った影響もあり頭脳明晰でクールな女性だ。

一方、"はな"は外交官の娘として生まれた。

若いころは海外で生活しており、その影響もあり自由気ままで天真爛漫な性格だ。

全くかみ合わないように見える二人だが、二人は気の合う親友同士だ。

親友として仲良くしていた二人だがある日、"のの"は"はな"に対しての自分の気持ちを恋愛感情だと告白する。

最初は戸惑う"はな"であったが”のの”からの気持ちを受け入れて二人は付き合うこととなった。

二人はお互いを一生に一度の運命の相手だと想い恋愛にのめり込んでいった。

しかし、彼女たちの恋は”のの”のある裏切りによって崩れることとなった…。


二人が手紙のやりとりを辞めて、二十年ほどの月日が流れた。

"のの"はたまたま出会った高校の同級生から"はな"のメールアドレスを聞き出し、久しぶりに連絡をとってみた、すると"はな"から現在アフリカのゾンダ共和国という国に住んでいるという返信がきた。

それからしばらくメールで連絡を取り合う二人であったが、運命のいたずらかある日”はな”と連絡がとれなくなった…。

手紙とメールのやりとりだけで描かれた、”のの”と”はな”の秘密の通信記録で紡がれた物語。



感想(ネタバレあり)


手紙とメールのやりとりだけで紡がれた作品


『ののはな通信』は物語としてもすごく感動するのだが、何よりもすごいのは物語全てが手紙とメールのやりとりだけで描かれている作品だということだ。

普通の作家なら手紙のやりとりを小説にしようなどと思わないが、そういう変わったことができるのが三浦しをんさんのすごいところだ。

第一章と第二章では手紙でやりとりをしていたが、30代や40代の人にとっては読んでいてかなり懐かしいという気持ちになるのではないだろうか。

私は、20代で中学生になるころには携帯電話を持っていたということもあり手紙のやりとりといえば年賀状や暑中見舞いを書く程度のレベルだったが、若い人でも女性だと授業中に手紙をこっそりまわしていたなどの経験がある人が多いと思うので読んでいて懐かしい気分になれること間違いないだろう。

第三章からは20年ほど月日が流れたこともあり、二人のやりとりの方法は手紙からメールへと変化する。

作中でも書かれているのだが、連絡手段がメールへと変化したことにより二人の一回のやりとりは手紙で行っていたころよりも長くなっている。

手紙とメールのやりとりを見ているとメールは長文を簡単に送ることができて便利だけど、限られた空間でやりとりをする手紙はそれはそれでいいものだと感じた。





ののとはなの関係


第一章を読んでいる時点ではののとはながイチャイチャしている様を見せつけられているだけで正直この作品を最後まで読めるのかなという不安感があった。

第一章の終わりの時点でもののが与田と寝たことがはなにばれてしまい二人の関係が一度終わってしまったためこれからどんな感じで物語が描かれれるのだろうかと少し気にはなったもののまだいまいちこの小説にはまれていない感じがありました。


しかし、第二章を読み始めてこの作品は面白くないかもという概念が吹き飛ばされることになります。この小説は第一章はまだ単なる導入部分だったのです。

第二章のはなはののとの恋愛を引きずっておらず男性と恋愛をしてみようと恋に前のめりでした。

一方ののははなとの恋愛を引きずっていて、はなが男性とイチャイチャしているということを聞くとクールに手紙を返しているが、死っとしているのがまるわかりです。

第一章と比べるとののとはなの立場が逆転したなという印象を与えられました。


第三章では20年ぶりに二人が連絡をとりあい、最初は第一章の初めのころのように二人の友情が戻ったかのように物語が進められていますが、やりとりが進むにつれてお互いがお互いを運命の相手だと思い続けていることが分かります。

第三章のはなは昔と同じように一見おっとりしたような性格にも見えるのですが、長い外交官の妻としての暮らしの中でとてもたくましくなっていることが分かります。

また、旦那に内緒で他の女性と寝たりなど以前のはなの様子からは考えられない大人びたダークな一面なども披露します。秘密を持つ大人の女性として描かれていることもあり読んでいて少しドキドキしました(笑)。

一方ののは大学生のころにともに過ごしていた悦子さんが亡くなった影響で昔のクールさは残っているものの恋愛への情熱はなくなりかなり落ち着いた様子です。

のののメールの中に出てくる為五郎を自分と住んでいる男のようにはなに伝えたりして、ユーモアのセンスは高校生のころから変わっていないなという印象も受けました。

この章は、二人が互いに再び会いたいという想いを描いているものの、はなの過ごしているゾンダの内戦が激しくなったことの影響とはなの生きたかの決心がつき最終的に二人は連絡がとれなくなります。

そのことで悲しんでいたののですが、第四章のののの様子から二人が連絡がとれなくても心の中でお互いを運命の相手だと思いつながっていることが伝わります。


『ののはな通信』から得た教訓


ののはな通信から私が得た教訓は、自分が大切だと感じている相手には出会えるときはまめに会って、連絡をとれるときには豆に連絡をとろうということです。

日常生活の中でいつでも連絡をとれるからとかいつでも会えるからといった風に人とのつながりを後回しにしているといつしか後悔がおとずれるかもしれません。

もしかしたらいつでも会えると思っていた相手が事故や自然災害で突然に会えなくなる日がくるかもしれません。

自分の趣味なども大切かもしれませんが本当に大切だと思っている相手とはいつ会えなくなっても後悔がないような行動をとろうと本書を通して学びました。



まとめ


『ののはな通信』は三浦しをんさんだからこそ描ける大切な人とのつながりを再認識することができる感動的な作品でした。

最近、誰とも連絡をとっていないという人がいましたらぜひ本作を読んで自分の大切な人と連絡をとってみたらどうでしょうか。