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瀬尾まいこさんの『おしまいのデート』を読みました。

出会いと別れの五篇の短編が収録されている作品で、読んでいて心がほっこりしました。

以下、あらすじと感想になります。


『おしまいのデート』のあらすじ


小さいころに両親が離婚して母に引き取られた私は月に一度だけ父と出会っていた。

私が中学生になったころ、いつも通り父に会いに行くとそこには父のかわりにじいちゃんがいた。

どうやら父は再婚したことがきっかけであまり私に会いたくないようだ。

それからというものの特にじいちゃんに会う意味はないのだが月に一度父の代わりにじいちゃんと会うようになった。

じいちゃんとのデートはいつも公園でソフトクリームを食べながら行き先を決めるところから始まる。

私が中学三年生になったころ、母が再婚することになった…。

今日はじいちゃんとの最後のデート。

二度と会えなくなるわけではないがこういう風にじいちゃんと会えなくなるのは寂しい。

今日はじいちゃんとどこに行こうか…。



感想(ネタバレあり)


おしまいのデート


私とじいちゃんのお互いがお互いのことを大切にしているのを感じられる物語でした。

二人ともお互いに直接話したわけではないけれども、心のどこかで最後のデートだと思いながら過ごしている様子が切ないです。

じいちゃんの最後の「生きていればどんなことにも次がある」という言葉はこれから色々な人生を経験していく私へのエールです。

私はこれから新しい家族と過ごし始めて、それからどんな人生を歩むかは分かりません。

ただ、いつまでもじいちゃんのことを忘れず悩んだときはこの言葉を思い出すのでしょうね。



ランクアップ丼


人の心が分かる素敵な先生とちょっぴり不良な少年の物語でした。

イライラしているのは腹が減っているからだと上じいが三好と玉子丼を最初に食べに行くシーンがありますが、無理に三好の家庭環境に踏み込んだりしようとしない上じいは本当に素敵な先生だと思いました。

ラストシーンで上じいが亡くなってしまっていたシーンは予想ができていたにも関わらず思わず泣いてしまいました。

上じいは最後の最後まで三好と一緒に玉子丼を食べられることを楽しみに頑張っていたんだろうな。

三好はこれから上じいとは一緒に玉子丼は食べられなくなってしまったけど、毎月24日には上じいのことを思い出しながら玉子丼を食べ続けるんだろうな…。

人と人が分かりあうのには無理に言葉を交わす必要はないということが分かる作品でした。





ファーストラブ


男同士の友情を感じる物語でした。

小学生のころなどは男友達とよく遊んでいましたが、年をとるにつれて友人と遊ぶ回数が減ってきた気がするのでこんな風に遊べるのは羨ましいなと思いました。

女性とデートするのも楽しいですが、男同士ならではの気をつかう必要がない感じなんかがいいですよね。

私ももうおっさんだけど男友達と遊園地行ったり、温泉行ったり何の気も使わずに久しぶりに遊びたいなと思わされました。

最後、宝田は転校していきますが二人にとってこの一日は本当に思い出深い日になったと思います。

そのため、いつか久しぶりに再会したときはまたこんな風に遊んでいる姿が想像できますね。


ドッグシェア


犬をきっかけに年の離れた男女が少しずつ仲良くなっていく作品でした。

何か共通のものがきっかけで仲良くなるのっていいですね。

きっとその人と共通のものの話題をしているときは最高に楽しいんでしょうね。

私も本について遠慮なく話せる友人がほしいと思ってしまいました。

物語に関しては犬に中華料理をあげたり、そんなのやったらダメなことが大学生になっても分からないのなどと突っ込みたくなる部分はあったものの素敵な物語でした。


デートまでの道のり


父子家庭の父親に恋する保育士とその息子の物語でした。

子どもって何も分かっていないように見えて、実際は大人よりも周りのことが見えていますよね。

カンちゃんの父のために祥子先生の様子を伺っている姿がすごくかわいかったです。

この物語では、子どもたちが親のために歌やダンスを覚えたりしていますが、祥子先生が思っているように子どもが次から次へと親のために色々と覚えないとダメなのは大変そうな気もしますね。

ただ、小さいうちから色々と経験させたい気持ちも分かるのでこういう教育がいいのかもっと伸び伸び育てたほうがいいのか悩ましいところです。


祥子先生のように保育士の先生が父子家庭や母子家庭の親に対して恋愛感情を抱くのってよくあることなのかな?

もし付き合い始めたりしたら職場にいづらそうな気がしますね(笑)



まとめ


『おしまいのデート』は瀬尾まいこさんらしい素敵な作品でした。

どの物語も面白かったのですが、個人的には『ランクアップ丼』が一番好きです。

一篇30ページほどですぐ読めるので興味を持った人はぜひ読んでみてください。