
梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』を10年ぶりぐらいに読み返しました。
子どもの時とは違う印象を受けた作品で、名作はどの年齢層の人が読んでも楽しめるから名作なんだなということを感じました。
以下、あらすじと感想になります。
『西の魔女が死んだ』のあらすじ
中学生になった少女まいは小学生の時にはできていた、友人に誘われたら行きたくなくても一緒にトイレに行く、興味のない話に楽しそうに相槌を打つという女子のグループで生きていくために必要なことをするのに嫌気がさした。
こうしたことをしなかったまいは、気づけば孤立しクラスメイトからは嫌がらせを受けるようになり不登校になった。
そんなまいだったが母の勧めで夏のひと月あまりを西の魔女と呼ばれている自分の祖母の元で過ごすことになった。
西の魔女の元で過ごし始めたまいは、自分も魔法が使えるようになるために魔女の手ほどきをうけることとなった。
その手ほどきの内容は規則正しい生活を送り、なんでも自分で決めるというものだった。
西の魔女の家での修業が始まってから一月後、単身赴任の父がまいの元をおとずれて「父と母とまいの三人で自分の仕事先で一緒に暮らさないか」とたずねられた。
まいはこの質問に対する答えを自分でどのように決めたのだろうか。
感想
まいの成長
この作品は思春期であるまいの成長を上手に描いています。
まいはクラスメイトたちの自主性のない行動にもやもやしながらもそれに対して意見などができなかった結果一人孤立してしまいます。
自宅でも母親のちょっとした発言で傷ついたり、自分が学校に行きたくない本当の理由をはっきりとさせることができず母に相談することができませんでした。
そんなまいですが西の魔女であるおばあちゃんとの生活をきっかけに彼女は変わり始めます。
彼女が変わることができた要因の一つとして魔女修行の中で「何でも自分で決める」ということをおばあちゃんに教えてもらったからでしょう。
今まで人任せだったまいは自分の畑の場所を自分で決めたりするなどして少しずつではありますが、どんなことでも自分で答えを出せるようになってきます。
最終的には、今の学校からは逃げることになるかもしれないが父親の住んでいる町で新しい生活をはじめるというという答えを誰に頼ることもなくまい一人で導き出すことができるようになりました。
また、まいは魔女修行をはじめる前は人の見た目や無愛想さから自分と会わないものを敵だと決めつける習性がありました。
その様子はまいがゲンジさんを毛嫌いする様子から分かります。
しかし、おばあちゃんの死で二年後久しぶりにゲンジさんにあったまいは誰にもゲンジさんに対する暴言をはきません。
おそらくおばあちゃんの家にいたころのまいなら「おまえがおばあちゃんを殺したんだ」といった風にゲンジさんに暴言を吐いていた可能性があります。
おばあちゃんの教えと二年という時間がまいがゲンジさんと普通に会話できるように成長させました。
規則正しい生活の重要性
ちょうどまいぐらいの年齢になってくると目的もなく深夜までテレビを見たり、ゲームをしたりして朝起きるのが遅くなりがちです。
この作品はそんな不規則な生活を送る人たちに規則正しい生活を送ることの重要性を示しています。
早寝早起きができない人は生活リズムがくずれて結果的に怠惰な生活を送るようになってしまいます。
また、おばあちゃんはまいに勉強の時間は本を読むとかでもいいから目的をもって何かをするように言います。
特定の時間に目的を持って何かをするというのは子どもだけではなく大人になってもとても大切なことです。
子ども時代に決まった時間に目的を達成できなかった人たちは大人になっても生活にメリハリをつけることができず、仕事でもダラダラと残業をして意味のない時間を過ごしている人が多数です。
こんな風に子どものときから規則正しい生活を送ることは大人になったときに強い精神力を持った人間になるために非常に重要です。
心あたりがある人はまいと同じように魔女修行をする必要がありますね。
名言
本作には多数の名言がでてきますが、その中でも私が最もいいなと感じた言葉を紹介させていただきます。
それはおばあちゃんがまいに対してたびたび言っていた、「アイ・ノウ」です。
これはおばあちゃんがまいのどんな言葉でも受け入れてくれる魔法の言葉です。
子どもを自己肯定感の高い人間に成長させるためには、否定ばかりするのではなくどんな言葉でもとりあえず受け入れるということが大切なんだなということをこの言葉から学ぶことができます。
私も子どもができたら子どもの意見を否定することなくアイ・ノウという言葉で子どもの全てを受け入れることができる人間になりたいです。
まとめ
『西の魔女が死んだ』は何歳になってもおばあちゃんから様々なことを学べる作品です。
自分もおばあちゃんのような素敵な人間になれるように日々精進していきたいです。