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今回は、麻耶雄嵩さんの『神様ゲーム』を紹介します。

麻耶雄嵩さんは、ドラマでも話題となった『貴族探偵』をはじめ様々なミステリ小説を書いていることで有名です。

私は、麻耶雄嵩さんの作品を読むのは『神様ゲーム』が初めてなので、すごく楽しみな気持ちで読ませていただきました。また、終わり方が衝撃的で驚きました。





あらすじ


小学生である芳雄の住む町では、連続猫殺し事件が起きていた。芳雄が憧れている同級生ミチルの愛猫も殺された。芳雄は、同級生と結成していた探偵団で猫殺しの犯人を捜し始めることにした。

そうした中、掃除の時間に転校生のクラスメイト鈴木太郎から「僕は神様なんだよ」と言われる。鈴木は神様であるので世の中の事はどんなことも分かるというが、それを芳雄は都会ではやっているゲームだと思う。ゲームを続けていくうちに芳雄は鈴木に「猫殺しの犯人も知っているんだろう?」と尋ねる。すると鈴木は「知っている」と答える。

その数日後、探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。

猫殺しの犯人がついに殺人を犯してしまったのか。
果たして鈴木は神様であり、本当に犯人を知っているのだろうか。
芳雄は鈴木を信じるべきなのか、それとも疑うべきなのか。



注目ポイント


本作の注目ポイントは鈴木の存在である。

鈴木を神様として考えるか、はたまた適当なことを言っているただの子どもとして考えるかで人によって結末の考察が変わってくるのかもしれません。

同級生にいきなり「私は神様だ。」とか言われても誰も信じませんよね。

私たちと同じように芳雄も最初のうちは、鈴木が本当に神様だなんて思ってなかったが、ところどころ神様のようにすべてが分かっているかのような発言があるので本当に神様なのではないのかと思うようになります。

実際に目の前に鈴木のような存在が現れた場合どういうことを言われたら本当に神様だと信じることができるだろうか?

鈴木が私にも分からないような秘密を述べた場合は、適当なことを言っている可能性があります。

けれども、もし私しか知らないような秘密を知っていた場合は、神様であると信じるのかもしれない。

宗教などもこのようなことを言われて信仰するようになることが多いのかな?



感想と考察(ネタバレあり)


『神様ゲーム』読了後の感想として最初に思ったのは、もともと児童向けに出された本であるということに驚きました。

児童が読むには殺され方とかその他もろもろで向いていないかもしれないとまで思ってしまいました。

ただ神様の存在ということを考えることができるから児童向けとして出されたのかもしれませんね。


私は、鈴木が芳雄に本当の神様であるような発言を多くしていたことから、中盤以降、鈴木は本当に神様なんだろうなと思いながら読んでいました。

鈴木を神と信じて本を読み進めた場合、最後に芳雄の母が燃えてしまうのでミチルと共犯で殺人を起こしたのは母ということになる。

そう考えると、殺人方法の推理として犯人は倉庫に隠れていたのではなく井戸の蓋の中に隠れていたという芳雄の推理が正しいものとなり納得のいく殺人事件となる。

だが鈴木が神ではないと思い読み進めていった場合はどうなるのだろうか。この場合は、大きく二つの考え方ができると思う。

一つはミチルと父が共犯の場合である。

この場合、芳雄の後半の推理通り警察を呼ばずにミチルが父に電話をかけさせたのも父が最初に倉庫に入り証拠を隠滅するためである。本作を読んでいる際、最後の最後までこれが正しいのかと思っていたが鈴木を信じた私は、オチを読んだときに麻耶雄嵩さんにやられたなと思いました(笑)。

もう一つは、ミチルも父も母も誰も犯人ではないという場合です。

この場合、英樹は事故で井戸に落ちてしまったのか、物語と全く関係のない人物に殺されたということになります。

ただどちらもミステリー小説としては、納得のいく結末ではないが鈴木を信じるか信じないかを考えさせられる本作ではありなのかもしれません。

『神様ゲーム』は考察すればするほど新たな疑問が生まれてくる作品でとても魅力的でした。



最後に


本作が非常に面白かったため麻耶雄嵩さんの他の作品も読みたいと思うようになったので、次は『貴族探偵』に挑戦してみようかな。