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今回は、朝井リョウさんが書いた『武道館』を紹介します。

 本書は2015年4月に発売され、翌年の2016年にはドラマ化もしています。そして人2018年3月に文庫化しました。

朝井リョウさんといえば平成生まれの作家で、若者の気持ちが込められた作品を書くことで有名です。本書も若者に焦点が当てられています。

武道館で若者といえばどんな人を想像しますか?柔道、空手などの武道をしている学生ですか?

本作品は武道家ではなく、武道館を目指しているアイドルの目線で書かれた本です。

昨今、アイドルはCDに握手券が付属しているのに賛否両論があったり、恋愛禁止であるなど様々な問題を抱えていますがそういった問題に対して朝井リョウさんがどう考えているのかということが書かれている作品となっています。




『武道館』のあらすじ


女子高生の愛子はNEXT YOUというアイドルグループのメンバーの一人である。

NEXT YOUの結成から一年が過ぎたある日グループの中心的存在でありダブルセンターとして活躍していた杏佳から女優業に専念するためにNEXT YOUを卒業したいという申し出があった。

杏佳の卒業によりNEXT YOUの二年目はほぼゼロからのスタートになったが、愛子たちは、日々レッスンを重ねたり、ファンが喜ぶ工夫を考える努力を行うことで着実に武道館の夢が近づいてきた。

そんな中、NEXT YOUにもある出来事をきっかけに、恋愛禁止、炎上、得点商法、握手会などの全てのアイドルが抱える問題が降りかかってくる。

果たして、NEXT YOUは武道館でライブを行うことができるのか…。



テーマはアイドル


本作のテーマはアイドルです。アイドルの目線から見たアイドルとしての働き方や日常生活、炎上などの様々な問題などが書かれています。

本作の冒頭ではメンバーの一人が卒業してしまいます。ファンから見るとメンバが一人いなくなってしまうことは非常に寂しいことです。

そのメンバーが推しメンであればグループの追っかけをやめてしまう人もでてくるでしょう。

では、メンバーから見て一人卒業してしまうのにはどういう問題があるのでしょうか。

問題には様々なものがあり、メンバーが欠けたことによるパフォーマンスの見直し、 そのメンバーの推していたファンが離れてしまうなど。

上記のような問題をアイドル目線で書かれているのが本作の特徴だ。またアイドルとしてではなく一人の人間としてどう考えているのか書かれているのも本作の魅力だ。



感想(ネタバレあり)


『武道館』を読んでアイドルについて色々と考えさせられました。正直私はアイドルの握手券商法などがあまり好きでないため握手券商法をしているアイドルはあまり好きになれません。

しかし本作では、握手券を買って来てくれるファンに対して愛子が「自分に会いに来てくれる人全員にアイドルではなく一人の人間としてお礼を言いたくなる」と考えている描写があります。

この描写を見て私は、そういう風に考えてくれてファンを大切にしてくれるアイドルがいるのならば、握手券をCDなどに付属することを全面的に否定するのは間違っているのかなと思いました。

また本作では、恋愛が原因でNEXT YOUが解散の危機におちいってしまう場面があります。

愛子も翠も一人の少女として好きになってしまった相手に会いたくて我慢が出来きないという場面がありますが、これを見てアイドルの恋愛禁止を提唱しているファンがどう考えるのかが気になります。

愛子は自分も恋愛をしている一人の少女として翠のことを止めることができませんでした。

反対にるりかは、アイドルとしての自覚がかけているということで愛子と翠に対してすごく怒っていました。

きっとるりかは、アイドルはファンに夢を売るのが仕事であると考えているキャラだたのでしょう。

そしてアイドルファンの代弁をするために朝井さんが意図して用意したキャラなのではないのかと思います。

『武道館』を読んだアイドルファンの方がいましたらアイドルの恋愛についてどう考えているのかコメントで教えてほしいです。



最後に


アイドルファンの人もそうでない人もアイドルとはどういうものなのかを考え直すことができるのでぜひ本作を読んでほしいです。

また若い男女の甘酸っぱい恋愛が好きだという方も楽しめる作品になっていると思います。