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今回は、湊かなえさんが書かれた『未来』を紹介します。

湊かなえさんといえば数々の大ヒット作を書かれていることで有名な作家で、多くの作品が映画化またはドラマ化されています。

本作はデビュー作の『告白』を書かれてから、10年目の作品となっており今度はどんなどんでん返しの結末が待っているのか読む前から楽しみの作品でした。




あらすじ


病気で父を亡くした小学四年生の章子のもとにある日、住所も差出人名前もない手紙が届いた。

その手紙の冒頭には「私は二〇年後のあなた三〇歳の章子です。」と書かれており、未来の自分から届いた手紙であった。

手紙の内容は未来の章子しか知らないようなことが書かれていたため、その手紙を信じた小学生の章子はその日から未来の章子に返事を書き始めた。

物語は、未来の章子への返事が書かれた手紙とともに進んでいく。



感想(ネタバレあり)


本作も他の湊かなえさん作品と同じく色々と考えさせられる作品となっておりました。湊かなえワールドが大好きな人であればすごく気に入る一作になっていると思います。

私は湊さんの他の作品もほとんど読んでいますがこの『未来』が一番好きかもしれないと思えるほどお気に入りの作品となりました。

冒頭の未来の章子からきた手紙を読んだ瞬間から早速タイトル回収かと興奮し、その後読めば読むほど続きが気になり気がつけば一日で読み終わっていました。




「章子」~エピソードⅠ


私は、湊かなえさんの作品を読む際は、どういうオチが待っているのか冒頭から警戒しながら読みます。本作では最初の未来の章子からの手紙を読み、その後最初の章子の返事を読んだときから違和感を感じていました。

まず、この手紙には四年生までに習う漢字しか使われておらずひらがなが多く使われていました。その手紙を読んだ時点ではまだ小学四年生である章子に未来の章子が配慮したのかなぐらいに思っていました。

しかし章子が返事を書いた手紙には四年生以降に習う漢字も普通に使っていたため未来からの手紙は三〇歳の章子ではなく現在同じ時間軸にいる人物が書いたのではないのかと考えました。

しかし、悲しいことに最初の章での私の推理はここで終わってしまいました(笑)

なぜなら、未来からの手紙が冒頭以降届かないんです。これでは推理のしようがありません。そのうえ、章子の生活がどんどんひどいことになっていくため推理よりも物語よりに集中してしまうんです。

林先生いい人だけど怪しいなとか思っていたら案の定だし、おばあちゃんにお母さんは人殺しだと言われるし、章子はいじめられひきこもるし、早坂がろくでもない人間だし…

読めば読むほど章子どうなっちゃうんだろうと気になってしまい手紙が誰からきたとかどうでもよくなってしまいました。

最初の章の「章子」が終わりエピソードⅠを読んだところでやっと手紙が誰からのものなのかなんとなく予想ができました。

亜里沙にも同一の手紙が届いたことから、私にはすでに未来からの手紙は未来からのものではないという予想があったため章子と亜里沙の共通の知り合いの篠宮先生だと考えました。序章で章子がもしかしたら篠宮先生が書いたかもしれないということを書いていたこともヒントとなりました。





エピソードⅡ


エピソードⅡで手紙を書いたのが篠宮先生であると分かりました。

手紙の差出人が分かったのは良かったのですが、エピソードⅡも教師のありかたについて色々と考えさせられる内容でした。

湊さんの作品に出てくる教師はだいたいの人物がかわいいそうだが、いい人という設定の人物が多い気がします。

篠宮先生は作品を読んでいると児童理解もきちんとできておりすごくいい教師であると伝わってくる。ただ、昔学費に困りいけない動画にでていたのが分かったことから退職を求められます。

これは実際に保護者の立場だとどう考えるのだろう。篠宮先生に教師であり続けてほしいと思う人は少数派なのだろうか?

校長先生が言っていた子どもに知られても大丈夫なのかという意見は分からなくもない。

しかし、実際に篠宮先生ほどよい先生がいた場合やめてほしくないと思う人も多いはず。

篠宮先生についてその後どうなったのかは詳細には書かれていないが原田君と今後も幸せに暮らし続けることを祈るばかりだ。

エピソードⅡを読み終わった時点で、残っていた謎は章子のお父さんとお母さんはどういう関係ということだけす。


エピソードⅢ


エピソードⅢでは父の良太と母の文乃(真珠)のことが書かれていました。

この章を読んで、森本誠一郎がすごく魅力的だと感じました。

エピソードⅢの冒頭で、森本は悪魔みたいで殺されても仕方ないと思いました。

しかし、読み進めていくにつれ、森本にも森本なりの悩みがあったのだと分かりとてもかわいそうな人物であると分かりました。

最後の森本からの手紙を読んだときは涙が止まりませんでした。森本には真珠とともにドリームランドに行ってその後も良太と仲良く過ごしてほしかった…。


終章


終章はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか人によってとらえ方が変わる終わり方をしていました。私個人としては、ハッピーエンドだと思います。

章子と亜里沙の両方が物語上では、これまで常に一人で悩み続けてきました。

これまでの章では、お互いにやっと悩みを相談することができた相手が章子は亜里沙、亜里沙は章子と親友どうしでした。

終章前までは、相談できる相手はお互いだけであったが、終章で章子は相談できる相手が周りにたくさんいることに気づくことができました。

二人がすぐに幸せな生活を送れるかどうかは分かりませんが、30歳になるときには一緒にドリームランドに行き手紙に入っていたしおりを手に入れて未来からの手紙を本物のものとするんでしょうね。


ブログを書きながら気がついたが主要人物のほとんどが父か母のどちらかを亡くしている片親なんですね。このことを意識しながらもう一度読み返すと違った視点で楽しめるのかもしれません。


疑問点


読了後に二つの疑問が残ったのでこの疑問が分かる人がいればコメントで教えてほしいです。

  1. フロッピー(エピソードⅢ)を読んだ章子は父親に対してどういう気持ちをもったのか?
  2. 智恵理さんはフロッピーの内容を読んで自分の意志で家を燃やすことを決めたのか?
よろしくお願いします。



最後に


湊かなえさんの10周年の集大成である『未来』を読んだら久しぶりにデビュー作の告白を読み直したくなったな。

『告白』を読んでからもう一度『未来』も読み直そう。