
今回は早瀬耕さんの『プラネタリウムの外側』を紹介します。
『プラネタリウムの外側』は、五つの短編の連作からできている作品となっています。
私早瀬耕さんの作品を読むのは初めてなのですが、会話プログラムが関連する作品であると知り興味を持ちました。
『プラネタリウムの外側』の感想
本作はすべての物語で会話プログラムがでてくるのが特徴です。この会話プログラムはチューリングテストも受賞できそうなほど性能が高いというのが面白いですね。
チューリングテストとは対話システムが人であるのかAIであるのか人間が判断するテストです。もし人間がAIを人と判断した場合そのAIは人のような会話を行うことができていたということになります。
2018年現在ではチューリングテストを突破したAIは存在しないため本作の会話プログラムには夢がありますね。
本作は会話プログラムで自信を映し出したり、死人を再現したりしますが、全ての会話プログラムに魂がやどっているかのように錯覚させるところが面白いですね。
登場人物の一人である佐伯衣里奈は、元恋人が死ぬ前にどのような会話を行おうとしたか会話プログラムを使用して再現しようとします。しかし何回会話を再現しようとしても決まった時間にその会話プログラムはエラーをおこして二度と反応を示さなくなります。
このように決まった時間にエラーを起こす(死ぬ)というのがまるで会話プログラムが魂を持っているかのように感じる要因です。
また魂があるかのように感じるため会話プログラムが制御している世界も現実のように思えます。プラネタリウムの外側と内側どちらに自信がいるのか分からなくなってしまいそうですね。
近い未来にこんな会話プログラムは実現するんでしょうか?
最後に
本作はSF作品のようにも感じますが。その他のSF作品と比べると本当に近い未来で実現しそうなことをテーマにしています。そのため現実的であるがゆえに怖い作品となっている。
AIという難しいテーマを非常に上手に扱っており、AIの発展について少し考えさせられる作品となっております。
今、私たちが生きている世界はプラネタリウムの外側なのでしょうか?
実は、会話プログラムが制御しているプラネタリウムの内側の世界なのかもしれませんね。
