今回は、湊かなえさんの『豆の上で眠る』を紹介していきます。
湊かなえさんといえばイヤミスの女王ということで衝撃の結末の作品を書くことが多いことで有名ですが、本作も結末に驚かされる作品となっております。
『豆の上で眠る』のあらすじ
結衣子が小学一年生の時、二歳上の姉である万祐子が神隠しが起こるという噂がある神社で遊んだ帰りに行方不明になった。
事件の手掛かりとしてスーパーに残された万祐子の帽子、白い車に乗っていたという目撃証言、変質者の噂などがあった。
誘拐から二年がたったある日、万祐子を神社で見つけたという連絡がきた。
家族が万祐子が見つかったと喜ぶ中、二年ぶりにあった万祐子は、結衣子にとって見知らぬ少女であった。
結衣子だけが大学生となった今でも万祐子に対する違和感を抱き続けている。
万祐子はどうして行方不明になったのか。姉は本当に行方不明にあった万祐子であるのか、はたまた別人が万祐子を名乗って成り代わっているのか...
感想(ネタバレあり)
本作も他の湊かなえさんの作品と同じように結末に驚かされる作品となっていました。最後の湊かなえさんからの問いかけに答えるためにもう一度すぐにでも読み返したくなってしまいます。
本作は結衣子の一人称視点で書かれている作品となっています。そのせいか本作を読んでいると自分が結衣子に乗り移っているかのように思ってしまうことがあります。そのため結衣子にとっての異物である万祐子が読者にとっての異物であると感じてしまいます。
最後の「本ものって、何ですか」という問いに答えることのできる人っているんですかね?
本作では、結衣子がずっと本ものであると思っていた万祐子が本ものではなく、実は偽物であると思い込んでいた万祐子が本ものであった。
実際にこんなことがあったら結衣子みたいに本ものってなんなの色んな人に聞きたくなってしまいそうですよね。物語中で結衣子に本ものとは何なのか説明できる人物が誰であるのか考えてみる。
結衣子に本ものとは何であるのかを説明できるのは万祐子が別の人間であると分かっても受け入れることのできた祖母だけであると思う。
祖母は、万祐子が戻ってきた当初は別の人間であるということに結衣子と同じく違和感を感じていた。しかし万祐子にも事情があると思い最終的には万祐子を本ものであると受け入れるようになった。結衣子と同じ立場でありながら受け入れることのできた祖母は万祐子に本ものとは何なのか唯一説明できる人物だろう。
しかし祖母は亡くなっているため結衣子に説明することはできない。
もし物語の続きがあったとすると結衣子は万祐子を本ものだと受け入れてやり直すことができるのかな?受け入れてもう一度本ものの家族を作ってもらい結衣子には、幸せになってほしい。
湊かなえさんらしく疑問が残る作品で本作もおもしろかった。