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藤石波矢さんの『時は止まったふりをして』を紹介します。

藤石波矢さんは、2014年に『初恋は坂道の先へ』でダ・ヴィンチ「本の物語」大賞の大賞を受賞してデビューしました。2017年にはデビューからわずか4年で「今からあなたを脅迫します」がドラマ化しており、今をときめく若手作家として注目されています。



藤石波矢『時は止まったふりをして』





最初に簡単にあらすじを紹介します。


小牧が十二年の歳月を経て同窓会で再開した当時の恋人である凌馬のもとに、届くはずのないフィルムが届いた。そのフィルムをきっかけに忘れていた過去が蘇えっていく。

現在の小牧の目線から描かれる恋愛に対する複雑な心境と、十年前の友人だった千葉の目線から描かれる甘酸っぱい青春の物語。

二つの物語が交差することで当時隠されていた密かな思いが明らかになり、過去の思いが現在へと影響を与えていく。


おすすめポイント

本作のおすすめポイントは、学生のころの青春の思い出を蘇らせることができることと、現在の恋愛に対する考えを見直すことができる点です。

高校生などの学生も楽しめる作品となっていますが、それ以上に大人の方が読んで楽しめる作品となっているのではないのでしょうか。

大人になり結婚をして当時のように自由に恋愛ができなくなった方もどうして現在のパートナーを好きになったのか見直すきっかけになるのかもしれません。


また本作は登場人物がまるで映画を見ているかのように自由に動くような文章で描かれている。そのため読了後、映画を見ていたのかもしれないと錯覚するような作品となっています。


感想

読んでいて常時ドキドキし続ける作品となっていました。千葉君の視点のパートを読んでいると高校生のころの自分の甘酸っぱい思い出が蘇ってきました。

終わり方もすごく爽快であったため、読了後とてもスッキリとした気分になりました。恋愛小説だと終わり方がスッキリとしない作品も多くあるのですがここまでスッキリとした終わり方をする作品は久しぶりな気がします。

まだ本作を読んでいない方にはぜひ読んでほしいです。


以下ネタバレを含みます。

























まさか四角関係(千葉⇒小牧⇒凌馬⇒田臥⇒千葉)であったとは思いませんでした。友情をとるか恋愛をとるかという選択は非常に難しいですよね。

読んでる最中は、千葉が小牧のことが好きなのはまるわかりでしたが、田臥が凌馬のことを好きなのだと思っていました。まさか逆であったとは(笑)

私が鈍かったからかかなり読み進めるまで四角関係の事実に気が付きませんでした。登場人物たちもすごく鈍くて誰が誰を好きであるのか全然分かっていない感じがなんかいいなと思いました。

凌馬君の子役で有名になり常に特別扱いされていた自分を普通の友人として接してくれる田臥を好きになるという思いも分かります。小牧さんの憧れていた人がそばに来て好きになったという思いも分かります。

田臥さんの四人の友人関係を崩したくないから告白できないという思いも非常に同意できました。上手くいっても失敗したとしても友情が崩れるかもしれない告白はなかなかできませんよね。千葉君の小牧さんのことが好きだという思いをしまい続けていたのも切なかった…。

最初は複雑であった小牧と靖幸の関係も過去を振り返ることでお互いに真っすぐに向き合うことができるようになったのもよかった。恋というのは、何歳になったとしても真っすぐな純粋な思いが大切なんだと実感させられました。

最後のページで千葉君の失っていた記憶は戻ったのではないのかと私は解釈したのですが皆さんはどう思いますか。次の同窓会は記憶の戻った千葉君も一緒に楽しんでほしいな。

最後になりますが本当に読んでいてすっきりできる良い作品であった。