としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

カテゴリ:書評 > 小説

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瀬尾まいこさんの『君が夏を走らせる』を読みました。

たった一ヶ月の短い夏を描いている作品ですが、二歳に満たない鈴香と高校生の大田君の成長を見ることができ、読んでいるだけで癒されるし、ところどころ感動するシーンもある良作でした。

以下、あらすじと感想になります。



『君が夏を走らせる』のあらすじ


中学三年生のころ駅伝に出場して以来、何かに夢中になることの楽しさをしった大田。

高校生になったら不良をやめて堅実に生きようと思っていた矢先、大田は目指していた高校の受験に失敗し、地域の不良が集まる学校に進学することになった。

周りとの温度の違いもあり、大田は徐々に高校から足が遠のいていった。

新しく夢中になることができるものを見つけることができず、日々をやり過ごしていた大田のもとに、中学のときに仲良くしていた先輩から一本の電話が入った。

その電話の内容は、妻が入院することになったので一ヶ月ほど、一歳の娘である鈴香の子守をしてくれないかというものだった。

高校生の自分が人の子守なんてすることができないと思った大田は、先輩からの頼みを断ろうとしたが、断り切れず一か月の子守を引き受けることにした。

子守を初めたはいいが、鈴香は泣き止まないし、ご飯も大人しく食べてくれない。

小さな鈴香に振り回された大田は、振り回されながらも鈴香とともに過ごす時間を幸せに過ごし、徐々に何かに夢中になるということを思いだすことになる。

二度と戻らぬ記憶に温かい、涙あふれるひと夏の奮闘記。



感想(ネタバレあり)


鈴香ちゃんと大田君の成長を描いているとても良い作品でした。

鈴香ちゃんの世話を頼まれたばかりの頃の大田君は、断り切れなくてしかたなく世話をしてあげている感がすごく強かったです。しかし、時間がたつにつれて鈴香ちゃんとともに過ごすことの楽しさを知った大田君を見ていると心がほっかりしました。

二人が仲良くなるにつれて別れの時が少しずつ迫っている様子が切なく感じました。

もちろん鈴香は先輩の娘なので二度と会えなくなるというわけではないのですが、二人で今までのような濃密な時間を過ごすことはもうないんでしょうね…。


大田君の成長


私は『君が夏を走らせる』のテーマは”成長”だと思っています。

一方大田君は、高校受験に失敗してしまい、物語の序盤では自分が成長することはないと感じながら自堕落な生活を送っていて、自分が成長することはできないと思い込んでいるような様子でした。

しかし、鈴香との出会いをきっかけに大田君は、どんな経験からでも人は成長できるということをしります。

  • 大田君が話しているのを聞いて「すげー」という言葉を使えるようになる
  • 大田君のまねをしておもちゃのフライパンで料理をする
  • 大田君が買ってきてくれた積み木で遊ぶ鈴香

鈴香は、まだ二歳なのでどんな些細な経験でもすべてを糧にして成長していきます。
その様は、大田君を通して学習をしているとも言えます。

そんな鈴香の成長を見てきた大田君はラストシーンで以下のように思います。

記憶のどこにも残っちゃいないけれど、俺にも鈴香と同じように、すべてが光り輝いて見えたときがあったのだ。もちろん、今だってすべてが光を失っているわけじゃない。こんなふうに俺に「がんばって」と声を送ってくれるやつがいるのだから。俺はまだ十六歳だ。「もう十分」なんて、言ってる場合じゃない。
『君が夏を走らせる』より

上記の大田君の想いから、大田君が閉じこもっていた殻をやぶって、これからも成長していくだろうということが分かりますね。





子育ての難しさ


大田君が鈴香に苦戦する様子や公園で出会ったママさんたちの様子を見ていると、子育てって大変なんだなと感じました。

それと同時に子育てには、子どもに好きなことをさせてあげることと、親が子どもが学ぶことができる環境を整えてあげることが大切なんだと本作から学びました。

大田君は基本的には鈴香ちゃんのしたいことに対して否定することはなく、適切な遊び方で遊ばせてあげていました。

また、大田君と鈴香ちゃんの様子を見ていると将来自分に子どもができたら、レトルト食品ばかり与えるのではなく、大田君のように子どもが満足するような料理を作ってあげたいなとも感じました。

その他にも鈴香ちゃんは昼食後必ず大田君に買ってきてもらった絵本を読んでもらうのが習慣だという場面がありました。

このシーンを読んで子どもが自ら絵本を読んでもらいだがるような環境を作りが必要だと感じさせられました。

とりあえず、将来子育てをするときは大田君の子育てを参考にすればなかなか良い子が育つような気がしました。



まとめ


『そして、バトンは渡された』を読んだことをきっかけに『君が夏を走らせる』を読みましたがとても面白く大満足でした。

大田君や鈴香のように常に自分は成長することができるということを忘れずに今後の人生を歩んでいきたいです。

余談になりますが、あとがきで、本作には『あと少し、もう少し』という前作があったということを知りました。

こちらでは、中学時代の駅伝のときの大田君の様子などを描いているみたいなので是非読んでみようと思います。






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住野よるさんの『麦本散歩の好きなもの』を読みました。

今までの住野よるさんの作品は学生を主人公とした作品ばかりでしたが、今回は新卒の社会人が主人公となっており、若い人から大人まで楽しめる作品でした。ただ、普段のテイストとは少し異なる作品であるため人によっては物足りなく感じるかもしれません。

本作は図書館勤務の新卒女子、麦本三歩のなにげない日常のショートストーリーが描かれている作品です。

タイトルが『麦本三歩の好きなもの』ということで、各ショートストーリーのタイトルが "麦本三歩は歩くのが好き "、"麦本三歩は図書館が好き" といいった風に "麦本三歩は~~が好き" という風になっており、麦本三歩が好きな色々なものについて語られています。

読み進めていくにつれキュートな麦本散歩の日常に癒されまくりました。

以下、あらすじと感想を書いていきます。




『麦本三歩の好きなもの』のあらすじ


図書館勤務の20代新卒女子、麦本三歩のなにげない日々を三人称で描いた日常短編小説です。

麦本三歩の好きなものは朝寝坊とチーズ蒸しパンと本。性格は、ぼうっとしていて、おっちょこちょいで少し間抜けです。

彼女の周りは優しい人やおかしな先輩、怖い先輩など様々な人がいて三歩は日々翻弄されています。

この小説は特別な物語ではなく麦本三歩の当たり前の毎日を面白おかしく描いています。



感想(ネタバレあり)



キュートな麦本三歩


本作の主人公である麦本三歩はどこにでもいる普通の女性を描いていますが、なぜかとてもかわいらしく感じてしまい、魅力的です。

多くの読者が麦本三歩の可愛らしさに惹かれてしまったのではないのでしょうか。

私は、本作を読み進めていくにつれて麦本三歩のかわいらしさの虜にされてしまい、読み終わったころには麦本三歩のような友達がほしいと感じてしまいました。

麦本三歩には私たちが日ごろ当たり前だと思っている行動に対しても、好きになることができるポイントを見つけることができる力があります。

例えば作中で麦本三歩が紅茶を飲み、スーパーに売っているチーズ蒸しパンを食べているだけで幸せだと感じるシーンがあります。

こういった行動も初めて実行したときには私たちも幸せに感じるかもしれませんが、ルーティンにしてしまうと当たり前のことだと思い幸せには感じなくなってしまうでしょう。

しかし、麦本三歩ならばそんな当たり前の日常ですら毎日のように幸せであると感じることができます。

このように、あたりまえのことを幸せに感じることができる女性で、毎日を楽しそうに生きているからこそ、私たちは麦本三歩を可愛いと感じてしまうのでしょう。


また、麦本三歩には少し大食いであり、少しドジであるという二つの特徴があします。多くの人はこういった特徴を持つ人をかわいいと思ってしまう傾向があるのではないのでしょうか。

もちろん、ただ大食いだから好きになるのではなく、幸せそうに食事をしている描写が多いというのもあるとは思います。ドジなのもおかしな先輩のように好きではないと感じる人もいるかもしれませんが、多くの人は怖い先輩のようにかわいい奴だなと感じるでしょう。






『麦本三歩の好きなもの』の魅力


本書の魅力は先ほど述べた麦本三歩のかわいらしさもあると思いますが、それ以上に主人公が普通の女性であるため読んでいて共感ができるというところにあると思います。

たとえば "麦本三歩はモントレーが好き" では三歩は朝通勤しようとはしたもののなんとなく仕事に行きたくなくなったという理由で仕事をさぼってしまいます。

しかし、仕事をさぼったはいいものの罪悪感から翌日以降ずるをしてしまったということで三歩は一人苦しむことになります。

多くの人が三歩のこの状況を見て、自分もそんなことが過去にあったなどと共感できるのではないのでしょうか。しかも本書ではこの悩みを解決するために、ひとつの解決案を提示しているので三歩に見習って読者も次からはそうしようということができます

主人公がどこにでもいそうな普通の女性であるがゆえに、読者が共感をしやすいというのが本書の魅力だと私は思います。




この作品が伝えたいこと


本作は麦本三歩の日常を描いている作品です。この作品を通して住野よるさんは、読者に好きなものが増えれば人生が楽しくなるということを伝えたかったのではないのでしょうか。

忙しい現代社会では意味を見出すことができない行動を無駄であると感じがちです。

しかし、三歩のように意味がない行動の中に魅力を見出すことができれば、その無駄だと思っていた行動をすることが楽しくなり、人生が今より少し豊かになるのでしょう。

忙しいからこそ、少しの時間を楽しめる人間になることはとても大切だと思います。

私も三歩のように朝でかけるまでのわずかな時間を幸せに感じたり、色んなスーパーにそれぞれの特徴を見つけてその日の気分で買い物をするような自分の生活を楽しむことができる人間になりたい。



最後に


当たり前の日常を描いている作品でここまでおもしろい作品を久しぶりに読んだ気がします。

男性目線からは三歩がすごく好きになったのですが、女性の読者は本作を読んでどんな風に感じたのかが気になります。

*追記(2021/02/27)
『麦本三歩の好きなもの』の第二集が発売されました!!

また、第一作が文庫化されたみたいです!!








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本屋大賞受賞作である瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』 を読みました。

最初は、主人公の親が何度も変わっているということで鬱系な感じの小説を予想していたのですが、読み終わってみるととてもすっきりした作品で、爽やかな気持ちになることができました。

以下、あらすじと感想を書いていきます。



『そして、バトンは渡された』のあらすじ


幼いころに母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ森宮優子。

その後も大人の都合に振り回され、優子は3人の父と2人の母を持つ女の子だ。

何度も住む場所や名字が変わり、高校生の今は、20歳しか離れていない、血のつながっていない"父"である森宮さんと一緒に暮らしている。

優子は、そんな複雑な家庭環境であるにも関わらず、健気で強い女の子だ。学校の先生などからは、家庭のことを気にされるが、彼女は気を使われることに困った様子を見せる。

なぜなら、血のつながらない親の間をリレーされながらも出会う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきたため、家庭環境で困ったことがないからだ。

そんな優子自身についに伴侶を持つときが来た…。

優子の成長を描く中で、彼女の過去の回想がつづられる愛にあふれた家族小説。



感想(ネタバレあり)


読了後とりあえず感じたことは、
  • 森宮さんみたいな父親がほしい!
  • 森宮さんかっこよすぎる!
  • 優子のような幸せな人生が送れるならたくさんの親がいるということも悪いことではないかも!

ということでした(笑)

『そして、バトンは渡された』を読む前は、本屋大賞のほんだけどそこまで面白い」のかなと疑問に思っていました。

しかし、読了後は、こんな作品を発売してから1年以上読んでいなかったなんてどんだけもったいないことをしていたんだと感じさせられました。

瀬尾まいこさんの作品もいままで一度も読んだことがなかったのですが、『そして、バトンは渡された』をきっかけに他の作品も読んでみたいと思いました。


森宮さんと優子のW主人公


「そして、バトンは渡された」は優子と森宮さんのW主人公で描かれている作品です。

第一章では、大人の都合で振り回される優子が主役で、第二章では、娘を送り出す森宮さんが主役となっています。

W主人公の作品として書かれているのは、分かるのですが男性の私からしてみたら優子より森宮さんの方が主役という感じが強いような気がします。

森宮さんは、梨花さんとの結婚を機会に優子を娘として迎えます。自分が優子の本当の父親ではないけど、優子に父として認めてもらえるように本当の父親以上に父親らしくしようとします。

父親らしくしようとして、朝からかつ丼を作ったりなど少し空回りしている感じもありますが、優子と森宮さんの関係は、本当の家族以上に理想の家族なんだなという感じがします。

血がつながっていないからこそ、少しお互いに気を使いあうため、優子と森宮さんは良い距離感を保てているのかなと思います。

血がつながっている家族だといっても、お互いのことを完璧に分かりあうことはできないので少し距離感があるぐらいがもしかしたら理想の家族なのかもしれませんね。


第二章で森宮さんだけが、早瀬君と優子の結婚をなかなか認めないあたりも、森宮さんが優子の将来を本当に心配していることが分かりけっこうエモいです。

ラストシーンの優子がバージンロードを一緒に歩く相手に森宮さんを選んだときは、優子と森宮さんの信頼関係が分かりむちゃくちゃ泣いてしまいました。





たくさんいる優子の父と母


優子にはたくさんの父と母がいますが、全ての父と母に愛されている優子がすごく羨ましいです。

『そして、バトンは渡された』を読むまでは、再婚などがきっかけで義父や義母が増えることに関してマイナスのイメージしかありませんでした。

しかし、本作を読んでみんながみんな義父や義母が増えることにマイナスのイメージを持っているわけではないということが分かりよかったです。

優子の父と母で一番好きなのはもちろん森宮さんなのですが、私が二番目に素敵な人だなと思ったのは梨花さんです。

梨花さんは、優子と離れたくない一心で水戸さん(優子の実の父)からの手紙を優子に渡さないなどのマイナスのシーンもありましたが、それも優子を想う愛情故です。

個人的な偏見になりますが、今まで義母って血のつながっていない娘のことを邪魔に思うものだと思っていました。(グリム童話の読みすぎが原因かも…)

しかし、梨花さんそんな私のイメージを覆す良い母でした。

優子にピアノを弾かせたい一心で泉ヶ原さんと結婚したり、自分が病気になり優子を育てることができなくなると自分の代わりに優子を大切にしてくれる森宮さんを探したりして、梨花さんが自分の人生以上に優子のことを大切に思っていることが分かりました。

梨花さんや森宮さんを見ていると家族関係は血のつながりなんかより、相手のことをどれだけ大切に思っているかどうかということが大切であると分かりますね。



まとめ


『そして、バトンは渡された』は、『家族』というテーマをすごく上手に描いている作品ですごく面白かったです。

登場人物みんながいい人であり優子を大切に思っているので、終始涙が止まらない作品でした。

読了後はきっと、皆さん幸せな気持ちで胸がいっぱいになると思いますので未読の方がぜひ読んでみてください。

優子の人生を知って、皆で幸せを共感していきましょう。








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2016年に芥川賞を受賞した村田紗耶香さんの『コンビニ人間』が文庫化され本屋に大量に積まれていたので購入してみました。

様々な国で翻訳されている人気作品ということで読むのが楽しみでしたが、読んだ後はなんともいえない感情に襲われてしまいました。

以下あらすじと感想になります。





『コンビニ人間』のあらすじ


「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと私は叫ぶ。小倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。ひびコンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて……。




感想と考察(ネタバレあり)


ミステリー要素や恋愛要素などがなくただのコンビニ店員を主人公としてためリアルさがとても強い作品でした。リアルさゆえに人間の気持ち悪い部分や現代社会の問題などのメッセージが分かりやすい作品であったともいうことができます。

『コンビニ人間』というタイトルを見たときは変わったタイトルだなぐらいにしか捉えていませんでしたが、本作を読んだ方にはこのタイトルがどれだけこの作品にふさわしいタイトルであったのかが分かるでしょう。

本書は本当にメッセージ性が強い作品であるため、主人公である恵子や白羽を除く作中に登場する全ての人物が普通なように見えてとても気持ちの悪い存在でした。


恵子


恵子は、子ども時代の小鳥のエピソードから分かる通り子どもの頃から奇妙な思考回路を持つ人間です。

普通の子どもであればかわいい鳥が死んでいる、かわいそう、お墓を作ろうとなります。しかし恵子は鳥が死んでいる、お父さんは焼き鳥が好きだ、お父さんのために死んだ鳥を焼いて食べようとい発想がでてきます。

恵子の行動は合理的ですが一般的な社会で受け入れられないもので、このことから恵子はおそらく「サイコパス」であるということが分かります。

成長していくにつれて恵子も徐々に自分がおかしいということに気が付きます。しかし、どうすれば治るのかが分からないためコンビニで働くまでは自分から何もしない、しゃべらない人間になります。

人と関わらない生活を送っていた恵子に変化が現れたのは大学時代に "コンビニ店員" というアルバイトを始めたのがきっかけです。徹底的なマニュアルがあり店と客のために働き社会に沽券できる "コンビニ店員" という仕事は恵子にとって天職でした。

コンビニで働き始めたことをきっかけに人とどう関われば嫌がられないかという生き方も学んでいきます。

それから18年たち36歳になった現在でも他のことに興味を持たずコンビニのためのみに人生をささげており、正に "コンビニ人間" ですね。


白羽


白羽も客観的に見れば恵子と同じで人と関わるのが苦手な社会不適合者です。

しかし本質を見ると二人の違いは一目瞭然です。恵子が人の目などを全く気にしていないのにたいして、白羽は他人からどう思われているのかということを気にしています。

恵子が人間ではない新たな生物である "コンビニ人間" であるのに対して、白羽は普通の生活を送ることができる人間に憧れているだけという印象があります。

白羽という存在がいるおかげで恵子の異質感がより際立ちますね。


"普通" の人々


『コンビニ人間』に登場する恵子と白羽以外の人物は一見普通に見えますが、彼らは "異物を排除したい" という白羽のセリフで言うと縄文時代からプログラムされている人間の本能にしたがって生きています。

この本能こそが "普通" の人間を気持ち悪く見せる要因となっています。

おかしな存在である恵子や白羽に対して普通の人々はアドバイスをしようとするが、その行動の実態は彼らにとって異常な人間の内側に入り込み自身の異物を排除したいという欲求を達成しようとしているだけです。

社会では個性を尊重することができないということ作者の村田紗耶香さんが強調しているように感じます。

個性を尊重できない社会では恵子のような特別おかしな存在でもない限り、白羽が言うように少数派の人間は人生を他者に強姦されているように感じてしまうでしょう。

また作中で恵子は普通の人々は周りの人の行動と同じ行動をとると言うような発言をしていますがこれも人間の本能で人に嫌われないために同調行動をとろうとしているだけなんでしょうね。



まとめ


ここまでご覧になっていただきありがとうございます。

『コンビニ人間』は読む人によってとても後味が悪く感じる作品となってしまうのかもしれませんが、作者の村田紗耶香さんは社会の少数派の人を排除するためにこの作品を書いたのではないと思います。

世の中の多くの人に個性的な人も世の中にはいて個性を尊重するのは悪いことではないと伝えたかったのではないのでしょうか。

『コンビニ人間』を多くの人の手に取ってもらうことでいつか個性を尊重することができる社会になればいいですね。



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FODでもドラマ化されたいぬじゅんさんの『いつか、眠りにつく日』を読みました。

結末が予想外でかなり面白かったし、強く生きようと感じさせる作品でした。

以下、あらすじと感想を書いていきます。



『いつか、眠りにつく日』のあらすじ


高校2年生の女の子・蛍は修学旅行の途中、交通事故に遭い命を落としてしまう。

命を落としてから約一か月後、蛍が自宅で目を覚ます。彼女の前に死者の案内人であるクロが現れる。

クロはこの世に残した未練を3つ解消しなければ、蛍が成仏できないことを告げる。

蛍は、自分の未練のひとつが中学のころから5年間片想いしている蓮に告白することだと気づいていた。

だが、蓮を前にすると、告白することで関係が崩れてしまうことを恐れ、どうしても想いを伝えられない・・・。

2つの未練を解消し、蓮に告白する決心ができた蛍の決心の先にあった秘密とは…。

予想外のラストに、温かい涙が流れるー。



感想(ネタバレあり)


とにかく結末が良かった。

クロ、蓮、栞、祖母の登場人物全員が今後三人を失って生きていく蛍のことを心配していたという結末がすごく良かったです。

実は、生き残っていたのは蛍だけだという結末を知ってしまうと物語の様々なところに伏線がちりばめられていたことが分かりますが、読んでいる途中はこの伏線に全く気が付きませんでした。

蛍の未練が他の死者と違い3つあった理由も、蓮、栞、祖母の未練を解消するためだったと分かったときは、感動しつつ伏線の張り方のうまさに感心してしまいました。


実際に自分が蛍の立場になり、全てを知っている状態でクロに生きるか、みんなと一緒に死ぬか選択しろと言われたらどちらを選んでいたのだろうか。

両親は生きているとはいえ、心から大好きな人たちを同時に失ってしまっていたら、もしかしたら自分ならみんなと一緒に死ぬことを選んだかもしれません。

もし、生きることを選んだとしても意識不明の重体なので、自分の身体がどうなっているのか分からないためこれまで通り生きられない可能性もありますし…。

蛍も皆が行ってしまう直前に以下のようなセリフを言っていました。

「やだ……。私も、みんなと一緒に行く。クロお願い!さっきの取り消す」

『いつか、眠りにつく日』より

このことから蛍も最初から全てを知っていたら、みんなと一緒に死ぬことを選んだということが想像できます。

それを分かっていた蓮、栞、祖母の三人はどうしても蛍に生きていてほしかったから協力したのでしょうね。


蛍が目を覚ました後にクロが記憶を残してあげていた演出も粋だなと感じました。

蛍が今後どんなにつらいことがあったとしてもこのことを思い出して、後悔しないように生きようと思うに違いありません。

若い世代の人ほど後悔しないように人生を謳歌するということに無頓着な気がするので、若い世代の人が読みやすい作品でこのような表現ができるいぬじゅんさんは素晴らしい作家ですね。





まとめ


今回は、いぬじゅんさんの『いつか、眠りにつく日』の感想をお届けしました。

この作品を読んで、私は死ぬときにクロのような案内人が現れてもやることがないと思わせられるぐらい、後悔しない人生を歩んでいきたいと思いました。

この作品を読んだ人には以下の作品もおすすめですので、未読の方はぜひ読んでみてください。










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