七月隆文さんの『100万回生きたきみ』を読みました。
七月さんらしいロマンティックな作品で良かったです。
以下、あらすじと感想になります。
『100万回生きたきみ』のあらすじ
美桜はこれまで100万回前世の記憶を持ちながら生まれ変わってきた。
最初のころは生まれ変われることを楽しんでいたが、次第に美桜の心はすさんでいった。
100万回目の人生を体験している今は女子高生と行きながら終わらぬ命に心が枯れた結果、誰にでも体を許す女になっていた。
そんな彼女が今回の人生に絶望し自殺しようとしたとき、同級生で幼馴染の光太に救われた。
光太に救われた瞬間、光太に恋した美桜は誰にでも体を許していたことを後悔し、気を失っていった…。
そんな美桜を助けた光太も実は100万回あらゆる人生を体験してきた人間だった。
光太と美桜は2500年前、実はフランス郊外のケルト地方で出会っていた。
光太の当時の名は武勇で国中に名をはせていたタラニス。
美桜の当時の名は吟遊詩人のミアン。
二人は2500年前にも恋していた。
100万回生まれ変わってきた二人が再び出会い恋に落ちた、一途な恋の物語。
二人の運命はどうなるのだろうか。
感想(ネタバレあり)
呪いの正体
女神の呪いの正体が実はハルカだと分かったとき、思わず「マジか…」と一人で呟いし舞うほど衝撃的でした。
ハルカはこれまでタラニスが過ごしてきた人生にある時は蝶として、ある時は鳥としてずっとずっとタラニスと一緒にいました。
ハルカはタラニスのことを心から愛していました。
そんなハルカがタラニスの話を聞いて自分の正体が呪いだと気づいたときはどのような気持ちだったのだろうか…。
ハルカは最終的に大好きなタラニスとミアンの幸せを祈って消えていきましたが、ハルカにも幸せになってもらいたかった。
呪いがなくなっても一人の人間として最後までタラニスとミアンの側にいることができればよかったのに。
読んでいて呪いをかけてハルカという存在を生み出した女神がにくく感じてしまいました。
100万回目の奇跡的な再会
タラニスはミアンと再会するまで100万回の生死を体験してきましたが、その辛さは尋常ではないと思います。
ミアンは美桜としてタラニスと再会した後にタラニスの呪いを解くために同じ人生を繰り返しますが、タラニスほど精神が強くなく最終的には精神が崩壊してしまいました。
そのようすからもタラニスの精神が以下に強く、そしてどれだけミアンのことを愛していたのかが伝わってきます。
生き返るたびにミアンに出会えなかった悲しさと、それでもミアンを探し続けるタラニスの切なさを考えると100万1回目の人生でミアンに再び出会えたときの衝撃は凄まじいものだったんでしょうね。
どんなロマンティック小説よりも、再会の瞬間はロマンティックに描かれている作品でした。
100万回という数字に違和感
本作が100万回記憶をなくさずに生まれ変わってきたというロマンチック小説だということは分かっているのですがどうしても100万回という数字に違和感を感じてしまいました。
光太がタラニスとして生きていた時代は2500年前でした。
そこから100万回生死を繰り返していたとするとうるう年など気にせずに単純な計算になりますが0.9125日に一度は死んでいた計算になります。
そう考えると100万回という数字に違和感を感じてしまい、物語序盤からずっと引っかかっていました。
きりがよくてロマンティックだから100万にしたのかもしれませんが現実的なことを考えると1000とかにしてほしかったですね…。
タイトルに違和感を感じていたこともあり少しだけ感動が薄れてしまいました。
まとめ
現実的な恋愛小説も面白いですが、たまには非現実的でぶっ飛んでいる恋愛小説だからこそ感じられるロマンティックを体験するのも悪くないですね。
久しぶりに七月さんの別の作品を読み返したくなった。