としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

カテゴリ:C++ > デザインパターン

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以前、以下の記事で作成したSingletonパターンがスレッドセーフではなかったため、本記事ではスレッドセーフなSingletonパターンを実装していきます。





Singletonパターンのクラス構成


今回作成する、スレッドセーフなSingletonパターンのクラス構成は以下のとおりです。

SingletonThreadSafe


Singletonパターンを実装する場合、インスタンスの作成をgetInstanceメソッドで行うということをしがちですが、この場合複数個のスレッドから同時に呼ばれたときに別のインスタンスが作成されるという問題がありました。

そこで今回は新たにcreateメソッドを実装して、ここでインスタンスを作成することでスレッドセーフなSingletonパターンを作成します。

また新しくインスタンスを破棄するdestroyメソッドも追加しました。





C++による実装


サンプルとして複数のスレッドからgetInstanceメソッドを呼ばれても一つしかインスタンスを作成しないということを証明するプログラムを作成します。


Singletonクラス



ヘッダファイル

#ifndef H_SINGLETON
#define H_SINGLETON

class Singleton{
private:
    Singleton();
    ~Singleton();

public:
    static void create();
    static void destroy();
    static Singleton* getInstance();

private:
    static Singletonm_singleton;
};
#endif // H_SINGLETON


ソースファイル

#include <iostream>
#include "Singleton.h"

SingletonSingleton::m_singleton = nullptr;

Singleton::Singleton()
{
    std::cout << "インスタンスを生成しました" << std::endl;
}

Singleton::~Singleton(){
    std::cout << "インスタンスを削除しました" << std::endl;
}

void Singleton::create(){
    if (!m_singleton){
        m_singleton = new Singleton();
    }
}

void Singleton::destroy(){
    if (m_singleton){
        delete m_singleton;
        m_singleton = nullptr;
    }
}

Singleton* Singleton::getInstance(){
    if (!m_singleton){
        return m_singleton;
    }
    return nullptr;
}



main関数


上記で作成したSingletonクラスを実際に使用してみます。

今回Windows環境で作成したため、スレッドはWin32 APIを使用して作成しています。


ソースファイル

#include <iostream>
#include <windows.h>
#include "Singleton.h"

#define LOOP 10
#define THREADNUM 10

struct stThreadArg{
    unsigned long threadNum;
};

DWORD WINAPI thread(LPVOID *arg){
    //struct stThreadArg* threadArg = (struct stThreadArg*)arg;
    unsigned longthreadArg = (unsigned long*)arg;
    std::cout << "Start thread" << *threadArg << std::endl;
    for(int i=0i<LOOP; ++i){
        Singleton::getInstance();
    }
    std::cout << "End thread" << *threadArg << std::endl;
    return 0;
}


int main(void){
    std::cout << "Start" << std::endl;
    
    // インスタンスを作成
    Singleton::create();
    
    /* スレッドの生成 */
    HANDLE handle[THREADNUM];
    unsigned long threadArg[THREADNUM];
    for (int i=0i<THREADNUM; ++i){
        threadArg[i] = i;
        handle[i] = CreateThread(00, (LPTHREAD_START_ROUTINEthread, &threadArg[i], 0NULL);
    }
    WaitForMultipleObjects(THREADNUMhandle,TRUEINFINITE);

    // インスタンスを削除
    Singleton::destroy();
    
    std::cout << "End" << std::endl;

    return 0;
}


実行結果

Start
インスタンスを生成しました
Start threadStart thread2
End thread2
Start thread9
End thread9
Start thread4
End thread4
Start thread3
End thread3
Start thread7
End thread7
Start thread8
End thread8
0
End thread0
Start thread6
End thread6
Start thread5
End thread5
Start thread1
End thread1
インスタンスを削除しました
End


実行結果からインスタンスの生成がcreateメソッドを呼んだときしか行っていないことが分かりますね。

また、destroyメソッドによってインスタンスの削除もしっかり行われています。



まとめ


Singletonパターンを作成するときは、スレッドセーフではない実装を行うようにしましょう。

もし仮にスレッドセーフではないSingletonパターンを作成したとして、不具合が起きていない場合、それはたまたま不具合が起きなかっただけにすぎません。

できる限り不具合が発生する要因をなくしていきましょう。







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本記事では、デザインパターンの名著である結城浩さんの『Javaで学ぶデザインパターン入門』を参考にSingletonパターンをC++で実装していきます。



Singletonパターンとは


プログラムを作成するとき、同じクラスのインスタンスを複数作成することがあります。

しかし、中にはこのクラスのインスタンスは、たった1つしか作らないし、作りたくないというものも存在します。

注意深くプログラムを作成してインスタンスを1つしか作らないという方法もありますが、これはかなり手間のかかる作業です。

プログラマが注意してインスタンスが1個しか生成されないプログラムをつくるのではなく、

  • 指定したクラスのインスタンスが絶対に1個しか存在しないことを保証したい
  • インスタンスが1個しか存在しないことをプログラム上で表現したい

場合には、どうしたらよいでしょうか。

この問題を解決するために、インスタンスが1個しか存在しないことを保証するパターンをSingletonパターンと呼びます。



Singletonパターンの登場人物


Singletonパターンは以下のようなクラス構成になっています。

Singleton


Singleton


Singletonパターンには、Singletonクラスしか登場しません。

Singletonクラスの役割はインスタンスが複数個できないようにstatic変数でインスタンスを持ち、getInstanceメソッドでインスタンスを返します。

getInstanceメソッドは、何度呼ばれても同じインスタンスしか返さないという特徴があります。



C++による実装


サンプルとしてSingletonパターンを使用すると一つしかインスタンスを作成しないということを証明するプログラムを作成します。

クラス構成は以下の通りです。


Singleton


Singletonクラス


外部からnewできないようにコンストラクタとデストラクタがpirvateになっているのが特徴です。


ヘッダファイル

class Singleton{
private:
    Singleton();
    ~Singleton();

public:
    static Singleton* getInstance();

private:
    static Singletonm_singleton;
};


ソースファイル

#include <iostream>
#include "Singleton.h"

SingletonSingleton::m_singleton = nullptr;

Singleton::Singleton()
{
    std::cout << "インスタンスを生成しました" << std::endl;
}

Singleton::~Singleton(){
}

Singleton* Singleton::getInstance(){
    if (!m_singleton){
        m_singleton = new Singleton();
    }
    return m_singleton;
}



main関数


上記で作成したSingletonクラスを実際に使用してみます。


ソースファイル

#include <iostream>
#include "Singleton.h"

SingletonSingleton::m_singleton = nullptr;

Singleton::Singleton()
{
    std::cout << "インスタンスを生成しました" << std::endl;
}

Singleton::~Singleton(){
}

Singleton* Singleton::getInstance(){
    if (!m_singleton){
        m_singleton = new Singleton();
    }
    return m_singleton;
}


実行結果

Start
インスタンスを生成しました
obj1とobj2は同じインスタンスです。
End

実行結果からコンストラクタが一度しか呼ばれていないこと、obj1とobj2が同じインスタンスであることが分かりますね。



まとめ


今回は、Singletonパターンを実装していきました。

一つしかインスタンスを作成したいときに便利なクラスです。

ちなみに上記の実装はスレッドセーフではないため、最近のSingletonパターンではインスタンスを作成するCreateメソッドやインスタンスを削除するDestoryメソッドなどを作成してスレッドセーフを保証したりもしています。

スレッドセーフなSingletonパターンを以下の記事で作ってみました。




Singletonパターンは、すごく便利ですがglobal関数的な使い方もできるため試験が行いにくくなるという欠点もあります。

使いどころを考えて使用していきましょう。






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本記事では、デザインパターンの名著である結城浩さんの『Javaで学ぶデザインパターン入門』を参考にFactory Method(ファクトリ・メソッド)をC++で実装していきます。




Factory Methodとは


Factory Methodとは、Template Methodをインスタンス生成の場面に適用したものです。

Factoryは、工場という意味です。

要するにFactory Methodとは、インスタンスを生成するための工場のようなデザインパターンだと思ってください。






Factory Methodの登場人物


Factory Methodは以下のようなクラス構成になっています。


factoryMethod


Product


Factory Methodで生成されるインスタンスが持つべきAPIを定義する抽象クラスです。

APIの具体的な実装は、ConcreateProductでクラスで行います。


Creator


Productを生成する抽象クラスです。

Crateorクラスは、Createメソッドで実際に生成する、ConcreteProductについては何も知りませんが、インスタンスを生成するメソッドを作ることでこの問題を解決しています。


ConcreteProduct


ConcreteProductは実際に生成される具体的な製品の役です。


ConcreteCreator


ConcreteCreatorは実際にConcreteProductを生成する役です。



C++による実装


今回は、IDカードを製造する工場というイメージでプログラムをFactory Methodを使用して実装していきます。

クラス構成は以下の通りです。


factoryMethodSample



Productクラス


Productクラスは抽象クラスとして実装していきます。


ヘッダファイル

#ifndef PRODUCT_H
#define PRODUCT_H

class Product{
public:
    virtual void use()=0;
};
#endif // PRODUCT_H



Factoryクラス


createメソッドでは、インスタンスを生成するcreateProductMethodを呼び出し、生成したインスタンスをregisterProductで登録するという処理を行います。

createメソッド以外の具体的な実装は子クラスで行います。今回の場合は、IDCardFactoryクラスが子クラスにあたります。

createMethodは継承先でオーバーライドされないようにfinalを使って宣言します。

ヘッダファイル

#ifndef FACTORY_H
#define FACTORY_H

#include <iostream>

class Product;

class Factory{
public:
    virtual Product* create(std::string ownerfinal;
    virtual Product* createProduct(std::string owner)=0;
    virtual void registerProduct(Product* product)=0;
};
#endif // FACTORY_H


ソースファイル

#include "Factory.h"
#include "Product.h"

Product* Factory::create(std::string owner){
    Productp = createProduct(owner);
    registerProduct(p);
    return p;
}






IDCardクラス


IDCardクラスはProductクラスを継承して作る、具体的な製品のクラスです。

今回は、useメソッドでカードを使い、getOwnerメソッドでカードの持ち主の名前を返します。

ヘッダファイル

#ifndef IDCARD_H
#define IDCARD_H

#include <iostream>
#include "Product.h"

class IDCard : public Product{
public:
    IDCard(std::string owner);
    ~IDCard();
    void use() final;
    std::string getOwner();
    
private:
    std::string m_owner;
};
#endif // IDCARD_H


ソースファイル

#include <iostream>
#include "IDCard.h"

IDCard::IDCard(std::string owner)
m_owner(owner)
{
    std::cout << owner << "のカードを作ります。" << std::endl;
};

IDCard::~IDCard(){};

void IDCard::use(){
    std::cout << m_owner << "のカードを使います。" << std::endl;
}

std::string IDCard::getOwner(){
    return m_owner;
}



IDCardFactoryクラス


IDCardFactoryクラスではcreateProductメソッドの具体的な実装を行っています。

このメソッドではIDCardのインスタンスを生成します。

また、registerOwnerでは生成したインスタンスを登録します。

ヘッダファイル

#ifndef IDCARDFACTORY_H
#define IDCARDFACTORY_H

#include <iostream>
#include <list>
#include "Factory.h"

class Product;

class IDCardFactory : public Factory{
public:
    IDCardFactory();
    ~IDCardFactory();
    Product* createProduct(std::string owner);
    void registerProduct(Product* product);
    std::list<std::stringgetOwners();
    
private:
    std::list<std::stringm_owners;
};
#endif // IDCARD_H


ソースファイル

#include "IDCardFactory.h"
#include "Product.h"
#include "IDCard.h"

IDCardFactory::IDCardFactory(){};

IDCardFactory::~IDCardFactory(){};

Product* IDCardFactory::createProduct(std::string owner){
    return new IDCard(owner);
}

void IDCardFactory::registerProduct(Product* product){
    m_owners.push_back(dynamic_cast<IDCard*>(product)->getOwner());
}

std::list<std::stringIDCardFactory::getOwners(){
    return m_owners;
}



main関数


今まで作成してきたクラスを実際に使っていきます。

ソースファイル

#include "Factory.h"
#include "Product.h"
#include "IDCardFactory.h"
#include "IDCard.h"

int main(void){
    Factory *factory = new IDCardFactory();
    Product *card1 = factory->create("としお");
    Product *card2 = factory->create("ひろし");
    Product *card3 = factory->create("花子");
    card1->use();
    card2->use();
    card3->use();

    return 0;
}


実行結果

としおのカードを作ります。
ひろしのカードを作ります。
花子のカードを作ります。  
としおのカードを使います。
ひろしのカードを使います。
花子のカードを使います。




まとめ


今回は、Template Methodを応用したFactory MethodはTemplate Methodを実装していきました。

似たようなクラスを複数個生成するときなどに便利なデザインパターンでした。

有効に活用できる場面を分析すれば、とても役にたつのでぜひ使ってみてください。









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本記事では、デザインパターンの名著である結城浩さんの『Javaで学ぶデザインパターン入門』を参考にテンプレートメソッド(Template Method)をC++で実装していきます。




テンプレートメソッドとは


テンプレートメソッドとは、テンプレートの機能を持つメソッドが親クラスで定義されており、そのメソッドの中の中小メソッドを子クラスで実装する方法です。

例えばRPGの戦闘をテンプレートメソッドを使って実装するとします。

ここでは戦闘は以下の流れで行うとします。
  1. 移動
  2. 攻撃
移動と攻撃の方法はRPGでいう戦士や魔法使いの役職で変わるとします。

そこで、親クラスで先ほどの戦闘の流れを呼ぶためのテンプレートメソッドと移動と攻撃の抽象メソッドを定義します。

そして、子クラスとして戦士クラスや魔法使いクラスを用意して、移動や攻撃の具体的な実装を行っていきます。


このようにスーパークラスで処理の枠組みを定め、サブクラスでその具体的な内容を定めるデザインパターンをテンプレートメソッドパターン(Template Method)と呼びます。



テンプレートメソッドの登場人物


テンプレートメソッドパターンは以下のようなクラス構成になっています。


テンプレートメソッド



AbstractClass(抽象クラス)


AbstractClass役はテンプレートメソッドを実装します。

また、テンプレートメソッドの他にテンプレートメソッドで使用している抽象メソッドも宣言します。

これらの抽象メソッドの具体的な実装は子クラスであるConcreateClassによって行われます。


ConcreateClass(具象クラス)


AbstractClassで宣言された抽象メソッドを具体的に実装する役です。

ここで実装したメソッドがAbstractClassのテンプレートメソッドにより、呼び出されます。





C++による実装


今回は、文字列や文字を5回表示するといったプログラムをテンプレートメソッドパターンを使用して実装していきます。

クラス構成は以下の通りです。


テンプレートメソッド_sample


AbstractDisplayクラス


今回のサンプルプログラムではAbstractDisplayクラスがテンプレートクラスにあたります。

具体的な実装は、displayメソッドだけ行います。

displayメソッドは、「open → printを5回呼ぶ → close」という流れのメソッドになります。

■ヘッダファイル

#ifndef ABSTRACT_DISPLAY_H
#define ABSTRACT_DISPLAY_H

class AbstractDisplay{
public:
    virtual ~AbstractDisplay(){};
    virtual void open()=0;
    virtual void print()=0;
    virtual void close()=0;
    virtual void display() final;
};
#endif // ABSTRACT_DISPLAY_H


■ソースファイル

#include "AbstractDisplay.h"

void AbstractDisplay::display(){
    open();

    for(int i=0i<5; ++i){
        print();
    }

    close();
}



CharDisplayクラス


CharDisplayクラスの各メソッドは以下のような処理を行います。

メソッド名処理
open文字列"<<"を表示する
printコンストラクタで与えられていた文字を表示する
close文字列">>"を表示する


コンストラクタで'H'という文字列が与えられた場合、AbstractDisplayクラスで定義したdisplayメソッドを呼び出すと、

<<HHHHH>>

のように出力されます。


■ヘッダファイル

#ifndef CHAR_DISPLAY_H
#define CHAR_DISPLAY_H

#include "AbstractDisplay.h"

class CharDisplay : public AbstractDisplay{
public:
    CharDisplay(char ch);
    virtual ~CharDisplay();
    void open() override;
    void print() override;
    void close() override;

private:
    char m_ch;
};
#endif // CHAR_DISPLAY_H


■ソースファイル

#include <iostream>
#include "CharDisplay.h"

CharDisplay::CharDisplay(char ch) : m_ch(ch){}

CharDisplay::~CharDisplay(){};

void CharDisplay::open(){
    std::cout << "<<";
}

void CharDisplay::print(){
    std::cout << m_ch;
}
 
void CharDisplay::close(){
    std::cout << ">>" << std::endl;



StringDisplayクラス


StringDisplayクラスの各メソッドは以下のような処理を行います。

メソッド名処理
open文字列"+-----+"を表示する
printコンストラクタで与えられていた文字列を"|"と"|"ではさんで表示する
close文字列"+-----+"を表示する


コンストラクタで'Hello'という文字列が与えられた場合、AbstractDisplayクラスで定義したdisplayメソッドを呼び出すと、

+-----+
|Hello|
|Hello|
|Hello|
|Hello|
|Hello|
+-----+

のように出力されます。


■ヘッダファイル

#ifndef STRING_DISPLAY_H
#define STRING_DISPLAY_H

#include <iostream>
#include "AbstractDisplay.h"

class StringDisplay : public AbstractDisplay{
public:    
    StringDisplay(std::string string);
    virtual ~StringDisplay();
    void open() override;
    void print() override;
    void close() override;

private:
    std::string m_string;
};
#endif // STRING_DISPLAY_H


■ソースファイル

#include <iostream>
#include "StringDisplay.h"

StringDisplay::StringDisplay(std::string string) : m_string(string){}

StringDisplay::~StringDisplay(){};

void StringDisplay::open(){
    std::cout << "+";
    for(int i=0im_string.length(); ++i){
        std::cout << "-";
    }
    std::cout << "+" << std::endl;
}

void StringDisplay::print(){
    std::cout << "|" << m_string << "|" << std::endl;
}

void StringDisplay::close(){
    std::cout << "+";
    for(int i=0im_string.length(); ++i){
        std::cout << "-";
    }
    std::cout << "+" << std::endl;



main関数


今まで作成してきたクラスを実際に使っていきます。


■ソースファイル

#include "AbstractDisplay.h"
#include "CharDisplay.h"
#include "StringDisplay.h"

int main(void){
    AbstractDisplay *d1 = new CharDisplay('H');
    AbstractDisplay *d2 = new StringDisplay("Hello, world.");

    d1->display();
    d2->display();

    delete d1;
    delete d2;

    return 0;
}


■出力結果

<<HHHHH>>
+-------------+
|Hello, world.|
|Hello, world.|
|Hello, world.|
|Hello, world.|
|Hello, world.|
+-------------+





まとめ


テンプレートメソッドパターンでは、テンプレートメソッドでアルゴリズムが定義されているため、子クラス側ではアルゴリズムの流れを気にせずに実装することができました。

テンプレートメソッドでアルゴリズムが共通化されているため、仮にアルゴリズムが間違えていたとしてもテンプレートメソッドクラスだけを修正すればよいので、効率的にプログラムを修正することができます。

プログラムで不具合を少なくするためには、同じ処理を何度も書かないということが大切ですので、せひテンプレートメソッドを使用してプログラムの共通化を行っていきましょう。






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本記事では、デザインパターンの名著である結城浩さんの『Javaで学ぶデザインパターン入門』を参考にアダプターパターン(Adapter)をC++で実装してみました。



アダプターパターン(Adapter)とは


アダプターパターンとは、「すでに提供されているもの」と「必要なもの」の間にある「ずれ」を埋めて再利用するためのデザインパターンです。

提供されたAPIなどを手直しするために使われます。

アダプターパターンには、以下の2種類の実装方法があります。

  • クラスによるAdapterパターン(継承を使ったもの)
  • インスタンスによるAdapterパターン(委譲を使ったもの)



クラスによるAdapterパターン(継承を使ったもの)


継承を使ったアダプターパターンは以下のようなクラス図になります。


アダプターパターン_継承



継承のAdapterパターンは、Adaptee役のメソッドがほぼそのまま使えそうなときに使われます。


Target(対象)


今必要となっているメソッドを定める役で、インタフェースとなっています。

C++では、二重継承を非推奨としているため、継承を使ったアダプターパターンでは、Targetは省略されることが多いです。


Client(依頼者)


Target役(省略する際はAdapter役)のメソッドを使って仕事をする役です。

main関数のようなAPIを呼び出すやつだと思ってもらえば大丈夫です。


Adaptee(適合される側)


すでに用意しているメソッドをもっている役です。要するに使いたいAPIを持っているクラスのことですね。

Target役が使いたいAPIがAdaptee役ですでに実装していたら、Adapter役は必要ないんですけどね…。


Adapter


Adapterパターンの主役です。Adaptee役のメソッドを使用して、Targetが求めているメソッドを作り出すやくですね。



インスタンスによるAdapterパターン(委譲を使ったもの)


委譲を使ったアダプターパターンは以下のようなクラス図になります。


アダプターパターン_委譲


委譲を使ったAdapterパターンは、Adaptee役のメソッドを呼び出す前に手を加えたいことが多い場合に有効です。

Adaptee役のメソッドをそのまま呼び出したい場合は、メソッドを再定義する必要があり、コード量が増えるというデメリットもあります。

C++では多重継承(インタフェースと親クラスの同時継承)が推奨されていないこともあり、委譲を使ったAdapterパターンのほうがよくつかわれるような気がします。



C++で継承をつかったアダプターパターンを実装


今回は、与えられた文字列を

(Hello)
*Hello*

のように表示する簡単なものをAdapterパターンを使用して実装していきます。

クラス構成は以下の通りです。


アダプターパターン_サンプル1



二重継承をしないようにTargetクラスを省略した実装にしています。


Bannerクラス


Bannerクラスは、事前に用意されていたAPIクラスだと思ってください。

■ヘッダファイル

#ifndef BANNER_H
#define BANNER_H

#include <iostream>

class Banner{
public:
    Banner(std::string string);
    
    virtual ~Banner();

    void showWithParen();

    void showWithAster();

private:
    std::string m_string;
};
#endif // BANNER_H


■ソースファイル

#include "Banner.h"

Banner::Banner(std::string string)
m_string(string
{

}

Banner::~Banner(){}

void Banner::showWithParen(){
    std::cout << "(" << m_string << ")" << std::endl;
}

void Banner::showWithAster(){
    std::cout << "*" << m_string << "*" << std::endl;
}



PrintBannerクラス


PrintBannerクラスがアダプターの役目を果たします。

今回はm単純な実装のためBannerクラスのAPIをそのまま呼び出すだけになります。

■ヘッダファイル

#ifndef PRINTBANNER_H
#define PRINTBANNER_H

#include "Banner.h"

class PrintBanner : public Banner{
public:
    PrintBanner(std::string string);

    ~PrintBanner();

    void printWeak();
    
    void printStrong();

};
#endif // PRINTBANNER_H


■ソースファイル

#include "PrintBanner.h"

PrintBanner::PrintBanner(std::string string)
Banner(string)
{

}

PrintBanner::~PrintBanner(){}

void PrintBanner::printWeak(){
    showWithParen();
}

void PrintBanner::printStrong(){
    showWithAster();
}



main関数


ここまで作ってきたAdapter役のPrintBannerクラスを使って、"Adapter Sample"という文字列を括弧付きと*ではさんで表示します。

■ソースファイル

#include "PrintBanner.h"

int main(void){
    PrintBanner printBanner("Adapter Sample");
    
    printBanner.printWeak();
    printBanner.printStrong();

    return 0;
}


■実行結果

(Adapter Sample)
*Adapter Sample*






C++で委譲をつかったアダプターパターンを実装


委譲を使ったアダプターパターンのサンプルプログラムのクラス構成は以下の通りです。


アダプターパターン_サンプル2


Bannerクラス


■ヘッダファイル

#ifndef BANNER_H
#define BANNER_H

#include <iostream>

class Banner{
public:
    Banner(std::string string);
    
    virtual ~Banner();

    void showWithParen();

    void showWithAster();

private:
    std::string m_string;
};
#endif // BANNER_H


■ソースファイル

#include "Banner.h"

Banner::Banner(std::string string)
m_string(string
{

}

Banner::~Banner(){}

void Banner::showWithParen(){
    std::cout << "(" << m_string << ")" << std::endl;
}

void Banner::showWithAster(){
    std::cout << "*" << m_string << "*" << std::endl;
}



Printクラス


JavaでいうインタフェースはC++では抽象クラスとして実装していきます。

■ヘッダファイル

#ifndef PRINT_H
#define PRINT_H

class Print{
protected:
    virtual ~Print(){};

    virtual void printWeak()=0;
    
    virtual void printStrong()=0;
};
#endif // PRINT_H



PrintBannerクラス


■ヘッダファイル

#ifndef PRINTBANNER_H
#define PRINTBANNER_H

#include <iostream>
#include "Print.h"

class Banner;

class PrintBanner : public Print{
public:
    PrintBanner(std::string string);

    virtual ~PrintBanner();

    void printWeak() override;
    
    void printStrong() override;

private:
    Banner *m_Banner;

};
#endif // PRINTBANNER_H



■ソースファイル

#include "PrintBanner.h"
#include "Banner.h"
#include "Print.h"

PrintBanner::PrintBanner(std::string string)
{
    m_Banner = new Banner(string);
}

PrintBanner::~PrintBanner(){
    delete m_Banner;
}

void PrintBanner::printWeak(){
    m_Banner->showWithParen();
}

void PrintBanner::printStrong(){
    m_Banner->showWithAster();
}



main関数


■ソースファイル

#include "PrintBanner.h"

int main(void){
    PrintBanner printBanner("Adapter Sample");
    
    printBanner.printWeak();
    printBanner.printStrong();

    return 0;
}


■実行結果

(Adapter Sample)
*Adapter Sample*




まとめ


個人開発ではなく、会社などで集団で開発する場合は、いきなりAPIの使用が変更することが多々あります。

いきなりの変更でも困らないようにアダプターパターンを使って、修正箇所ができる限り少なくなるようなプログラムを作っていきましょう。







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