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FODでもドラマ化されたいぬじゅんさんの『いつか、眠りにつく日』を読みました。

結末が予想外でかなり面白かったし、強く生きようと感じさせる作品でした。

以下、あらすじと感想を書いていきます。



『いつか、眠りにつく日』のあらすじ


高校2年生の女の子・蛍は修学旅行の途中、交通事故に遭い命を落としてしまう。

命を落としてから約一か月後、蛍が自宅で目を覚ます。彼女の前に死者の案内人であるクロが現れる。

クロはこの世に残した未練を3つ解消しなければ、蛍が成仏できないことを告げる。

蛍は、自分の未練のひとつが中学のころから5年間片想いしている蓮に告白することだと気づいていた。

だが、蓮を前にすると、告白することで関係が崩れてしまうことを恐れ、どうしても想いを伝えられない・・・。

2つの未練を解消し、蓮に告白する決心ができた蛍の決心の先にあった秘密とは…。

予想外のラストに、温かい涙が流れるー。



感想(ネタバレあり)


とにかく結末が良かった。

クロ、蓮、栞、祖母の登場人物全員が今後三人を失って生きていく蛍のことを心配していたという結末がすごく良かったです。

実は、生き残っていたのは蛍だけだという結末を知ってしまうと物語の様々なところに伏線がちりばめられていたことが分かりますが、読んでいる途中はこの伏線に全く気が付きませんでした。

蛍の未練が他の死者と違い3つあった理由も、蓮、栞、祖母の未練を解消するためだったと分かったときは、感動しつつ伏線の張り方のうまさに感心してしまいました。


実際に自分が蛍の立場になり、全てを知っている状態でクロに生きるか、みんなと一緒に死ぬか選択しろと言われたらどちらを選んでいたのだろうか。

両親は生きているとはいえ、心から大好きな人たちを同時に失ってしまっていたら、もしかしたら自分ならみんなと一緒に死ぬことを選んだかもしれません。

もし、生きることを選んだとしても意識不明の重体なので、自分の身体がどうなっているのか分からないためこれまで通り生きられない可能性もありますし…。

蛍も皆が行ってしまう直前に以下のようなセリフを言っていました。

「やだ……。私も、みんなと一緒に行く。クロお願い!さっきの取り消す」

『いつか、眠りにつく日』より

このことから蛍も最初から全てを知っていたら、みんなと一緒に死ぬことを選んだということが想像できます。

それを分かっていた蓮、栞、祖母の三人はどうしても蛍に生きていてほしかったから協力したのでしょうね。


蛍が目を覚ました後にクロが記憶を残してあげていた演出も粋だなと感じました。

蛍が今後どんなにつらいことがあったとしてもこのことを思い出して、後悔しないように生きようと思うに違いありません。

若い世代の人ほど後悔しないように人生を謳歌するということに無頓着な気がするので、若い世代の人が読みやすい作品でこのような表現ができるいぬじゅんさんは素晴らしい作家ですね。





まとめ


今回は、いぬじゅんさんの『いつか、眠りにつく日』の感想をお届けしました。

この作品を読んで、私は死ぬときにクロのような案内人が現れてもやることがないと思わせられるぐらい、後悔しない人生を歩んでいきたいと思いました。

この作品を読んだ人には以下の作品もおすすめですので、未読の方はぜひ読んでみてください。