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ブレイディみかこさんのノンフィクション小説である『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が文庫化していたので読みました。

本書はイギリスに在住する日本人である著者が、元底辺校に通う息子との日常が書かれている作品です。

利口な息子の発言や日本とイギリスに住んだ経験がある著者から多様性とは何なのかということを深く考えさせられる作品となっていました。

また、イギリスの社会事情や教育事情を知ることもできました。



『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のあらすじ


小学校の頃は優秀なカトリック系の学校に通っていた息子。

中学校を選択する際に、優秀なカトリック校に入学するか、近所の元底辺中学校に入学するか悩んだあげく、母親と息子は自由な校風が売りの元底辺中学校に入学することに決めた。

いざ入学してみるとそこには、人種差別の激しい移民の息子、アフリカからきたばかりの少女、貧困地域で過ごす少年、ジェンダー問題に悩む男の子など様々な生徒がいた。

世界の縮図のような中学校で様々な問題にぶつかる息子。

彼は母や父、時には友人に相談することで様々な悩みを解決していく。

息子の毎日を描いたリアルストーリー。



感想と考察


日本とイギリスを比べて


イギリスで生活する母親と息子の暮らしを読んでいく中で、日本に住んでいる人はイギリスに住んでいる人と比べて多様な考え方ができない人が多いんだなということを実感しました。

この原因は日本人がイギリスと比べて他民族をあまり受け入れない文化である影響が強いと思いました。

日本では日本人以外の人間を見るだけで珍しいなとなるのですが、イギリスでは多種多様な人が住んでいるためアジアの人間を見たとしても物珍しそうに見られることはありません。

また、ジェンダー問題に関してもそれに関する専門的な授業があるなど日本と比べて進んでいるなと感じました。

日本でもジェンダー問題についての改善を進めつつはあるのですが、それでも異分子を排除したいという国全体での意識が強い気がしていてなかなか根付いていない気がします。

一方、イギリスでは授業の中でジェンダー問題についてそれについて真剣に子どもたちが悩む様子が描かれていました。

イギリスという国全体で多様化に対する問題を深く考えているため、その影響が子どもたちにもでていることが大きいことが分かります。

日本でもこれからの時代に対応していくためには、私自身も含めて多様な考え方ができるようにならなければならないということを感じました。



イギリスに対するイメージの変化


この本を読む前は、イギリスに対して紳士的な人が多い街がきれいなどのイメージを持っていました。

しかし、本書を読んで現実は違うんだということを実感しました。

恐らく同じイギリス系どうしではみんながみんな紳士的なのかもしれませんが、多民族に対しては全ての人がそうというわけではないのですが差別がおきているんだということを本書を読んでしりました。

また、街並みもどこも美しいというイメージがあったのですが、貧困街も未だに存在していて現実とイメージのギャップを感じさせられました。

また、子どもに違法ドラッグを使わせようとするなど社会の闇の部分も存在するんだと分かりました。

ただ、本書を読んでイギリスの良いところもたくさん知ることができました。

演劇の授業があったりして人々の感受性を国全体で育てようとしていたりします。これって本当に良いことだなと思いました。

イギリスの人がフレンドリーだと思われる要因などは、学校でコミュニケーション能力を育てることに力を入れているからなんでしょうね。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んでイギリスに行ってみたいという気持ちが強まりました。





日本語しか話せないのが情けない


10章の『母ちゃんの国にて』を読んで日本語しか話せない日本人が情けないと感じました。

日本人には日本語以外の言語を話す習慣がないため、言語に対して完璧性を求めがちです。

そのため、物語の中のレンタルビデオ店の場面で少しカタコトな日本語を聞いたり、日本語を話せないだけで怪しいという烙印を押される場面がありました。

この物語では日本人が日本人に怪しまれるというおかしな物語として描かれていましたが、外国の言葉を流暢に話すことができる人なんてほとんどいないと思います。

店員が片言の言葉が怪しいと思ったのは、日本に住む日本人以外の割合が少ない影響なんでしょうね…。


また、日本料理店で中年男性に絡まれた場面で、日本語を話せない息子を中年男性が馬鹿にしていました。

これを読んでいて日本語を話せない子どもと対話ができない、英語が話せない日本人は恥ずかしいなと思いました。

英語って世界で最も使われている言語なんだから、外国に住む人々とコミュニケーションをとるために必須の技術なのにいい大人がそれすらできないなんて駄目だなと感じました。

私自身も英語を話すことができず、中年男性と変わらないため英語を勉強しなければと本書を読んで改めて思いました。

これからの国際化に対応するために、完璧な言葉を話そうとするのではなく片言でも外国語を話せることが大切だということを理解した教育がこれからの日本に求められると感じました。



まとめ


本書は幼い息子の視点から多様性に欠ける私たちに様々なことを教えてくれる素晴らしい作品でした。

また、イギリスの教育文化なども知ることができ面白かったです。

これからの時代に負けないように多様性に対応できる人間になりたい。