としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:ミステリー

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道尾秀介さんの『ソロモンの犬』を読みました。

友人から進められて読んだのですが、オチが意外すぎる作品でした。

以下、あらすじと感想になります。



『ソロモンの犬』のあらすじ


2週間前、大学生の同級生である秋内、京也、ひろ子、智佳たちは平凡な夏を過ごしていた。

そんな平凡な日常を突如突き破るかのようにある事件が起きた。

彼らが通う大学の助教授・椎崎境子の一人息子陽介が秋内の目の前でトラックにはねられた。

陽介がはねられた原因は、陽介の飼い犬オービーが突如道路に向かって走り出し、陽介が引きずられたためである。

目の前で陽介がはねられたことでショックを受けた秋内だったが、事件現場の近くにいた京也たちの不可解な行動にある疑問をいだく。

オービーが突如走り出すのは本当に不慮の事故だったのだろうか…。

事件の真相を解明するために行動する秋内だったが、予想だにしない事実が彼を待ち受けていた。



感想(ネタバレあり)


物語の中に、京也と智佳の怪しい行動などのミスリードがたくさん混ざっていて、道尾秀介さんのオチで驚かせてやるといった意志を感じる作品でした。

物語の途中で陽介が死んだ原因に気が付くことができた人は相当な推理オタクぐらいしかいない気がしますね。


陽介の死について


陽介がはねられた原因となったオービーの行動が陽介の父である悟から陽介を守るために行ったことだと分かったときはとても複雑な気分になりました。

まさかオービーが飼い主を守ろうとしてとった行動が、陽介の死につながるとは…。

作中では間宮がオービーは陽介が死んだことを理解できていないという風に述べていましたが本当にそうだったのだろうか…。

陽介が救急車に運び込まれているときもしかしたらオービーは何かを感じていたかもしれないと思うと複雑な気持ちになります。

飼い犬が飼い主を悪意なく殺してしまう作品は初めて読んだので、動物が好きな自分としては結構複雑な気持ちになってしまいました…。


最初、私は京也が犯人だと考えていました。

誰も見ていない隙にオービーをコマセでつって陽介を殺したとか推理していましたが、見当違いでしたね。(序盤でコマセの入っているバケツにつっこんでいたので)

ただ、オービーが走り出す原因を作ったのは椎崎に母性を求めた京也です。

なので真相が分かり、犯人はいなかったと分かっても心の中に嫌な気分が残りました。


ミスリードについて


『ソロモンの犬』ではいたるところで読者をだますミスリードが隠されていました。

物語の中盤で秋内が智佳は京也が好きかもと思っている場面がありましたが、それが原因で私は一時は京也と智佳がグルになって陽介を殺そうとしたのかとか疑っていました。

智佳の行動って読者からしてみたら怪しいところが多すぎるんですよね(笑)

秋内が通りかけたときにでいきなり智佳が隠れたシーンとかありましたが、あんなのどう考えても智佳と京也が隠れてデートしようとしてたとしか思えませんでした。

その前から、京也と智佳の二人の関係に微妙な感じの場面が多かったので物語を読んでいてかなりこの二人に振り回された気がします。


また、京也が目が見えていないことなんて作中で伏線があったのかもしれませんが、私は気が付きませんでした。

そのため秋内が京也がいた場所から陽介トラックにひかれたことが見えていたということに気がついた場面では、「やっぱり京也が犯人だ!」とか思ったのですが実際は違いました。

読んでいる私の心情は、

『京也犯人?→京也は犯人じゃないか→やっぱり京也が犯人だ!!』

ということの繰り返しでした。

秋内の推理に完全に振り回されてしまいましたね(笑)



まとめ


『ソロモンの犬』はミスリードを誘っていたりして読者を楽しませるように書かれていたため自分好みの作品でした。

道尾秀介さんはミステリーで有名なので他の作品も読んでみようと思います。






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喜多喜久さんの『恋する創薬研究室』を読みました。

こちらの作品は、喜多喜久さんが得意とする化学と恋愛を組み合わせた小説です。

ラブケミストリーシリーズとかと比べると爽やかな恋愛小説というよりは、女性の恋愛に対するどろっとした様子などが描かれており、従来とはひと味違う作品でした。

以下、あらすじと感想になります。



『恋する創薬研究室』のあらすじ


理系の大学院生である花奈は、イケメン助教授である北条智樹に恋をした。

しかし、彼女はこれまでの人生で恋人ができたことがない。

その上、実験が下手で研究も上手くいっておらず恋どころではない状況…。

そんな彼女のもとにある日一通のメールが届いた。その内容は、学内で噂されている恋愛相談事務局に来てほしいというものだ。

恋愛相談事務局に努める早凪に出会ったことで、パッとしない理系女子から卒業しようと一念発起し、恋を叶えるための奮闘を始める。

ところが、花奈の前に美人で成績優秀なライバルが立ちふさがり、不気味な脅迫状まで届くように…。

果たして彼女の恋は届くのだろうか。

恋愛、実験、謎解きが合わさったラブコメ×理系ミステリーがここに開幕!



感想(ネタバレあり)


本作は最後にどんでん返しを狙ってイヤミスな感じにしようとしていたのだろうが、個人的な感想としては正直微妙だなといった感じの作品でした。

もともと喜多さんのさわやかな恋愛小説を読みたいという想いがあったので、より微妙に感じてしまったというのもあると思いますが、作品としても全体的にまとまりにかけているのかなという印象が残りました。

ラストも後味悪いような、悪くないような微妙な感じだったり…どちらかに振り切ってくれていたらもっと面白かったのかな?

少子化対策で恋愛相談室があったり、インフルエンザの薬を作っていたり物語のテーマとしてはなかなか面白そうなものが多い気がしたのも相まって残念な作品でした。

悪いところばっかり語ってもあれなので以下は個人的に驚かされた部分などについて書いていきます。


早凪の正体について


ラストシーンで早凪の正体が敏江だと分かったときは、結構驚かされました。

敏江は、智輝から見たらおじいちゃんの奥さんだったのでまさか20代の早凪だとは思いませんでした。

敏江を事故に巻き込んでしまったのが早凪だと思っていたり、敏江が足が悪いことも年寄りだから足が÷悪いという風に読者に想像させるような書き方をしていたため、敏江と早凪が同一人物であったということを予想できませんでした。

正体を知るまでは智輝君おばあちゃんのことが好きなんてなかなかやるなとか思っていたのですがまさか年下だったとは…。

そりゃあ若くて心がきれいな女性がいたら花奈ちゃんは負けちゃうだろうなという感じでした。


登場人物が全員悪い人物に見えてしまう


『恋する創薬研究室』の登場人物ってほとんどの人がなんかしらの嘘をついていたり、性格が悪い奴だったりしてあんまり好きになれませんでした。

物語の都合上、智輝君や花奈ちゃんも悪い奴に見えてしまうのは仕方ないかもしれないけどもう少し挽回の要素がほしかったです。

特に花奈ちゃんは恋愛初心者で奥手という設定だったので、もっとうぶな恋愛を描いてほしかった…。

まさか、脅迫を受けたふりをして智輝君の気をひこうとするなんて相当悪い奴ですよね…。

早凪も恋愛相談院という立場だから智輝に恋人ができないことを心配していたという設定も分からなくはないが、そんな協力をしてほしくなかったですね。


また、花奈のライバルとして描かれていた結崎もただただ性格の悪い奴という風な感じで気がついたら物語からフェードアウトしていましたね。

ジャンプ漫画じゃないから友情を書けとは言わないものの、結崎が智輝を好きになった理由などを掘り下げて感情移入させてほしかったです。


実はラブケミストリーと同じ世界線


『恋する創薬研究室』は大学は違えど別作品の『ラブケミストリー』と同じ世界線で起きている物語でした。

花奈が大学院入試を受けたしばらく後に藤村君がプランクスタリンの合成ルートに関する論文を提出していることが書かれていましたね。

世界線が同じっていうのは、喜多喜久さんの作品が好きな身として嬉しかったのですが、花奈が実は合成の天才だったという設定はいらなかった気がしました。

藤村君は特殊な能力もあるが毎日論文を読むなどかなりの努力家なので合成ルートを見つけることができたのは納得がいくが、大学院で問題を見ただけの花奈が合成ルートを見つけることができたのは納得いきませんでした。



まとめ


『恋する創薬研究室』は個人的には喜多喜久さんらしくない微妙な作品でした。

すすんで人に読んでほしいと感じる作品ではありませんでした。

喜多喜久さんの作品が好きな方なら読んでみてもいいかもしれませんが、ラブケミストリーとかの感じが好きだという人は私のようにがっかりする可能性が高いです。

もし、当ブログをみて読んだひとがいるなら感想を教えてほしいですね。







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