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タイトルにある書店という言葉に惹かれて三萩せんやさんの『神様のいる書店 まほろばの夏』を読みました。

読み始めた時点ではあまりでメッセージ性がなく内容の薄い作品だと思ったのですが、読み終わってみると読者に伝えたい強いメッセージがあると分かる作品でした。

読了後誰もがきっと自分の持っている本や家族をもっと大切にしようと思うこと間違いないでしょう。

以後ネタバレを含むので未読の方はご注意ください。



『神様のいる書店 まほろばの夏』
「本と友達になれるなんて、とっても素敵なことだと思わない?」本好きの高校生・神山ヨミは、司法教諭の紹介で「まほろば屋書店」で夏休みのバイトをすることに。そこは、魂が宿り生きている<まほろ本>を扱った、世にも不思議な書店だった。お店で出会った同僚の青年・サクヤは金髪で無愛想、不良みたいな見た目。しかし彼はいつも、ヨミが見たこともないほど美しい本を持っていて——。




生きている不思議な本である"まほろ本"の存在

『神様のいる書店』では魂を持つ本であるまほろ本がキーアイテム(アイテムという言い方は失礼かも)となっています。

まほろ本にやどる魂の形は色々あるようで犬、猫、人間など様々なものが存在しています。魂の形がどういったルールで決まっているのかなどは本作ではしっかり触れられてはいません。

ただ作中でヨミが補修を行った昆虫が描かれているまほろ本のかたちは蝶であったことや豆田の持つ本の大きさが小さかったことから本の内容や大きさがまほろ本の姿に影響を及ぼしていると言えるのではないのでしょうか。サクヤなどの例外もあるため確実だとは言えないが。

また、まほろ本には生物と同じように生死という概念があるようです。ページが破けると怪我をおい、損傷が激しくなると死んでしまうようですが、これは本としての役割を果たせなくなったら(読者が読めなくなる)死んでしまうということでよさそうですね。

現実にまほろ本のようなものは私の知る限りでは現在は存在していませんが、本作を読むともしかしたら私たちの持つ本も魂を持っている可能性もあるかもしれないなと思ってしまうので、本を大切に扱わなければならないと思わされてしまいます。

本を補修する技術を持ち合わせない私としてはとりあえず本の置く場所などに気を使おうと思いました。



人間になりたいまほろ本・サクヤの存在

サクヤは人間に憧れ人間になりたいと願っているまほろ本です。

作中でサクヤは自分が空っぽの存在であることや文字を書いたりすることができないことを嘆いたりする描写がたびたびあります。文字が書きたいから人間に憧れるという理由はなんとなくわかるのですが本なのに中身がないというのは読んでいる途中は少し不思議に感じる点でした。

ただその理由は物語の終盤で明らかになりました。ヨミが壊れたサクヤを修復しようという場面でサクヤはカバーのデザインとは打って変わって中身は何も書かれていない真っ白な本であることが分かります。

サクヤは自分に内容がないため読者に何も与えてあげることのできず本としての役割を果たせないことがネックとなって人間にあこがれたのでしょう。

最終的に人間になれたサクヤはこれから中身のなかった自分の存在を埋めていくような人生を送っていくことができればいいですね。

関係ないですサクヤの他にも人間になりたがっているまほろ本の形が人型であるため、もしかしたら人型のまほろ本はみんな人間になりたがっているという法則があるのかもしれません。



ヨミの成長

本作ではサクヤの変化の他にヨミの人間としての成長が描かれています。

物語の冒頭でのヨミは家族ともあまりうまくいかず、中学でいじめられたことが原因で人間関係に強く踏み込めない人物でした。そのためそれらのことから逃げるために図書館にこもり本の世界に逃げ込んでいました。

ヨミはまほろば屋書店との出会いがきっかけで人間として変化し始めます。

バイトでうまくできなかった補修の作業のアドバイスを図書館で働いている姉からアドバイスをもらうことにしました。姉に苦手意識を持っていたヨミでしたが、アドバイスの際に姉がヨミがどうしたら理解しやすいの考えてアドバイスしてくれたことをきっかけに姉がヨミのことをよく見て大切にしてくれていたということに気が付きます。

また友人関係では、昔あったいじめが原因で友人のフミカとも一歩引いた付き合い方をしていましたが、フミカからの親友だよねという言葉をきっかけに一歩引くのをやめるようになりました。

最後の場面では姉から両親が喧嘩している原因のほとんどが自分が原因であると教えられたことで家族がヨミを大切にしていることを理解することができました。

ヨミが本に恩返ししたいという気持ちをもって図書館から飛び出たおかげで人間として一回り成長することができてよかったです。



最後に
駄文をここまで読んでくださった皆様ありがとうございます。

『神様のいる書店』には続きの物語が出ているみたいなのでそちらもまた読んでみようと思います。

そちらでは本作でスポットライトがあまりあたっていなかった人物たちにも触れているのかな?