としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:冬野夜空

3657169_s


冬野夜空さんの『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』を読みました。 

話題通り王道の純愛ストーリーだったので内容も予測できてしまったのですが、最後まで読み終わったときは涙が止まりませんでした。

以下、あらすじと感想になります。



『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』のあらすじ


主人公は、クラスで目立たない男子高校生・天野晴彦。彼の趣味は、亡き父の影響で始めた写真を撮ることだ。

ある夏の日、雨の中の花火を撮りたいという意欲にかられて友人の塁と花火大会に行くことになった。

雨が降る花火大会の中、ビニール傘をさした浴衣姿の女性を見つける。

切なげに花火を見上げるその美しい姿に見とれて、思わずカメラを構えると、その女性の正体はクラスの人気者、天文部の綾部香織だった。

翌日の放課後、輝彦は香織に「君を、私の専属カメラマンに任命します!」と告げられる。

この一言が平穏だった輝彦の人生を変えることになった。自由奔放な香織につられて輝彦は様々な場所へと連れていかれる。

香織に振り回されることも悪くないと思い始めた輝彦は、ある日衝撃的な事実を知ることになる。

それは、香織は明るい笑顔の裏で重い病と闘っているということだった。

病だと知った後も本当の香織を撮ることを目標にシャッターを切り続ける輝彦。はたして彼は、本当の香織を写真に残すことができたのだろうか。

苦しくて、切なくて、でも人生で一番輝いていた夏の2カ月間。2人の想いが胸を締め付ける、究極の純愛ストーリー!



感想(ネタバレあり)


作品としては個人的にはかなり感動できてかなり好きな部類です。

ただ、王道恋愛小説ということもあり、どうしても似たような作品である『君の膵臓をたべたい』と比較してしまう作品でした。

以下の感想にはキミスイのネタバレも少し含まれています。

キミスイとの類似点をあげてみると少し考えただけでも以下の5点を思いつきました。

  • 主人公の輝彦が地味な男子高校生
  • ヒロインの香織が明るい性格で人気者だが重病で余名わずか
  • 最後に二人で旅行に行く
  • 輝彦が香織のことを「君」と呼ぶ
  • 最後に日記で香織が輝彦にメッセージを残している

正直、読んでいる途中だともっと多く類似点が思いついていました。

逆にキミスイと違うところを軽く考えてみると以下の3点ぐらいしか思いつきませんでした。

  • ヒロインの香織はキミスイとは違い病気で亡くなる
  • 輝彦の友人が香織のことが好きだった
  • 恋愛要素がキミスイより強い

正直、王道な物語だから多少内容が似るのは仕方がないのかもしれませんが、あまりにもそっくりすぎる気もしますね…。若者狙いで主人公が高校生だから類似するのは仕方がないのでしょうが…。


ここまで悪い感想ばかり上げてしまっていますが、『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』でいいなと思うところもたくさんありました。

まず先ほどもあげたのですが、キミスイより恋愛要素が強いです。

それゆえに、輝彦が香織の願いを叶えようと努力している姿が描かれており、恋愛系がバリバリ好きという人にはこちらの作品の方が好みかもしれません。


二つ目は、輝彦が香織が生きることができないと知ったときに、彼女の最高の瞬間を遺影として残そうという考え方が面白かったです。

遺影というと真面目そうな顔写真や笑顔の作品が多い気がしますが、美しい瞬間を遺影として残すというのがいい考え方だなと思いました。

たしかに私も自分が死ぬことになるとしったら、無理して笑っている姿を残されるよりも、自分の最高の姿を写真で残してほしいですね。

作品のテーマ通り、星の一瞬のきらめきと人生の一瞬のきらめきをかけているのもよかったです。



まとめ


『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』は一生懸命生きる人の美しさを描いている作品でした。

本作は、キミスイとの類似点も多いのですが、王道恋愛小説としてオリジナルな要素もあり面白かったので未読の方はぜひ読んでみてください。

展開が予想できたとしても最後まで読んでほしい作品でした。








3238792_s


冬野夜空さんの『あの夏、夢の終わりで恋をした』を読みました。

読み始めの印象としては妹を亡くして悲しんでいる主人公が恋愛していくだけのありがちの設定という印象でした。しかし、物語が進むにつれてどういう気持ちをこめて書かれた話か分かり非常におもしろかったです。

以下あらすじと感想になります。




『あの夏、夢の終わりで恋をした』のあらすじ


2年前妹を目の前で起きた事故で妹を亡くしたことをきっかけに、自分から幸せを遠ざけ、公開しない選択にこだわってきた透。

しかし、ある日立ち寄ったカフェでピアノを演奏していた咲葵に対して自分らしくない一言がこぼれた。

「一目惚れ、しました」

この告白の言葉がきかっけで透の人生は一変していく。

妹への罪悪感を抱えつつ、咲葵のおかげで幸せに満ちた人生へと変わっていく透だったが…。

咲葵から「――もしも、この世界にタイムリミットがあるって言ったら、どうする?」と言われ、この世界の真実を知知ったとき、透は究極の選択を前にどのような答えを出すか?

後悔を抱える透と咲葵2人の、儚くも美しい、ひと夏の恋――。



感想(ネタバレあり)


読了後、人生は色々な選択肢があり、その選択一つ一つでこれからの人生が少しずつ変わっていくんだ、自分も後悔しない選択をしないとという風に感じました。


パラレルワールド


『あの夏、夢の終わりで恋をした』は透と咲葵が妹の雫を助けた世界と助けられなかった世界の二つのパラレルワールドを描いている作品でした。(正確には最後に透が腕を失わなかった世界もあるから三つ)

物語の序盤で透と咲葵がピアノのために「if」という映画を見に行くシーンがありましたが、序盤から読者に少しずつこの物語はパラレルワールドを題材に提示していると教えているのがいいなと思いました。

ただ、私は「if」がでてきた当たりでは、咲葵は偽名を名乗っているだけで実は透の妹かもとか思っていました。完全に予想が外れましたね(笑)


夢の世界が崩壊する直前の『いつかまた』という台詞もすごく素敵でした。

物語の中でラヴェルは記憶を失った後に自分の作った曲が一番素敵だと感じたと書かれていました。
咲葵と透にとってお互いがラヴェルにとっての「亡き王女のためのパヴァーヌ」のような存在で、どんな世界にいたとしてもこの二人は恋に落ちるんだろうなということが伝わりました。

作中で描かれてはいませんが、怪我で透が記憶と腕を失った世界でも、咲葵は苦しんでいる透を支えてあげているんだろうなということが想像出来ます。


後悔の清算


この物語のもう一つのテーマは「後悔の清算」でした。

透は雫を助けられなかったことをずっと後悔して生きていましたが、咲葵の手助けもあり世界が崩壊する直前には雫を助けられなかった後悔を受け入れて前に進もうとしていました。

人生生きていればどんな人でも後悔の一つや二つはあるでしょう。

ただどんな後悔があったとしてもそれは清算していくことができるので、苦しくても自分を幸せにすることを諦めてはいけないというメッセージが『あの夏、夢の終わりで恋をした』からは伝わりました。

こちらの作品は2020年6月に出版されているみたいなので、コロナで苦しんでいる人たちに対して頑張ってほしいということを伝えたかったのかもしれませんね。





エピローグについて


『あの夏、夢の終わりで恋をした』のエピローグって個人的に賛否両論がある気がしました。

人によってはエピローグでわざわざ、別の世界での透と咲葵の幸せな様子は描く必要がなかったのではと感じてしまう気がします。

私個人としても、咲葵が夢に入る前の世界で幸せになっている二人の様子を描くか、エピローグなしで第七章の夢の終わりに君を想うで終わりでもよかった気がします。

あくまで私の推測になりますが、冬野夜空さんがエピローグを書こうと想ったのは先ほど私の感想でも書きましたがどんな世界線にいたとしても透と咲葵の二人は愛しあっているということを伝えたかったのではないのでしょうか。

そう考えるとエピローグも悪くないと感じることができます。



最後に


冬野夜空さんの作品を今回初めて読みましたがとてもおもしろかったです。
ライトノベルという理由だけで読んでいない人はけっこうもったいない気がします。

本記事を読んで興味を持った方はぜひ読んでみてください。





↑このページのトップヘ