DSC_2223

今回は、前川裕さんの『クリーピー』を紹介します。

『クリーピー』は映画化したことから存在を知り購入しました。

ただ、一年間ほど存在を忘れて放置していたのですが、読了後はどうしてもっと早く読まなかったのかと後悔してしまうほど面白かったです。





『クリーピー』のあらすじ


大学教授で犯罪心理学を専門としている高倉は、妻と二人で一戸建てに暮らしている。

ある日、高校の同級生であった刑事の野上から八年ほど前に起きた四人家族の父、母、息子が娘だけを残し失踪した一家失踪事件の分析を依頼される。依頼内容は失踪事件で唯一残された娘が今になり意外なことを言い出したのでその信憑性を判断してほしいというものであった。

この依頼をきっかけに高倉の周りでは不可解な事件が頻発するようになる。野上の失踪、学生同士のトラブル、向かいの家での出火など…。しかしそれは、まだ事件の発端でしかなかった。

不可解な事件の連続から隣人である西野への奇妙な疑惑が生まれる。



ネタバレ


本作のテーマはなり代わりです。なり代わりの同義語に「なりすまし」というものがあります。

なりすましというのは、他の人のふりをして活動することですね。

インターネット上では、SNSなどで特定の個人や組織を名乗ったアカウントを用意し、問題発言などでターゲットにとって不本意な評判を作り出すことです。つまり他人のをして活動することです。

本作はなり代わりがテーマということで他人のふりをした人物が現れるのです。

本作でなりすましをしている人物は二人いました。

一人は、野上の義兄の矢島善雄でした。

矢島は、西野と水田と大和田の三人となり代わりをしていました。

西野となり代わりをしているというのは、本物の西野の娘である西野澪の発言から序盤のほうで分かりました。

しかし、屋島が西野以外の人物ともなり代わりをしているとはその時点では思いませんでした。

物語の内容的に日野市一家三人行方不明事件とも矢島が関わっているのは分かりましたが、まさか本多一家の隣人の水田にもなり代わっていたとは…。

一番驚いたのは、大和田へのなり代わりです。序盤から高倉のゼミ生の燐子に大和田の振りをしてメールをしていたとは。矢島が高倉のことも警戒しあらかじめ策をうっていたことがよく分かります。

もう一人のなり代わりを行っていた人物は、河合園子です。河合は、野上の振りをして高倉に手記を残しました。

物語の結末を読むまで、野上が残した手記をまさか河合が書いたとは思いませんでした。まさか、共犯者が河合だとは…。

河合の手記の内容が9割の真実と1割の嘘からできていたため物語中でもほとんどの人物が騙されていました。読者で河合が野上を殺したと気が付いた人はいたのかな?



感想


『クリーピー』では、たびたびなり代わりが起きましたが身近でなり代わりって起こると思いますか?

田中さん一家は、あまり外に出なかったため西野家のなり代わりに気が付くことができませんでした。実際に私も今住んでいる部屋の隣の住人の顔も知らないため、いきなり人が変わっても気づかないでしょう(笑)。

私以外の人でも都会に住んでいる人や近所付き合いの意識が低い若いひとなんかも、近所の住人がいきなり入れ替わっても気づかなさそうですね。

こうした事件を防ぐためにも日ごろからの近所づきあいって大切なんだなって思いました。

あと、本作で前川裕さんの作品を読むのは初めてになるのですが、情景説明がすごく上手であったため場面の創造がしやすい文章になっていたなと思いました。これをきっかけに前川裕さんの他の作品も読んでみたいと思いました。『クリーピー』の続編として『クリーピー スクリーチ』があるみたいなのでそちらを読んでみようかな。