としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:原田マハ

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原田マハさんの『さいはての彼女』を読みました。

キャリアウーマンの女性たちの旅での出会いを描いた作品でした。

今はコロナの影響で旅行はできないけど、コロナが収束したら私も彼女たちのように女満別空港に行き時間を忘れるぐらいのんびりと北の大地を満喫したいなと思いました。

以下、あらすじと感想になります。


『さいはての彼女』のあらすじ


母と娘を見捨てた父を見返すために涼香は25歳で起業して、今では社員100人を率いる立派な社長となった。

何もかもが順調に見えた人生だったが失恋と社会の内紛で心も体もくたくただ。

そんな彼女は退職することになった秘書高見沢に最後の仕事として沖縄での長期休暇の宿の手配をお願いした。

しかし、高見沢にこれを頼んだことは大失敗だった。

彼女を待ち受けていたのは沖縄とは真逆の北海道の女満別行の飛行機だった。

しかも、レンタカーでBMWを借りる予定だったのに、高見沢が予約したのは手動でしかサイドミラーが動かせないようなおんぼろ車だった。

北海道に絶望してた涼香のもとに一人のハーレーに乗っていた女性ライダーが現れた。

彼女の名前は凪というらしい。

思いがけぬトラブルがきっかけで出会った二人は凪のサイハテにタンデムして旅行することとなった。

凪との出会いは涼香に新しい人生を歩ませていくのだった。



感想


さいはての彼女


涼香は父への恨みを返すためだけに社長になってしまうなどけっこう自己中心的な人物でワンマン社長であることが想像できる人物です。

そんな彼女のワンマンっぷりが恨みを買い退職することになった秘書の高見沢に仕返しされてしまい、沖縄でリゾート予定がまさかの北海道旅行になってしまいました。

おそらく高見沢がぎりぎりの時間に涼香を迎えに来たのも考える時間を与えたくないという嫌がらせだったんでしょうね。

そんな涼香でしたが彼女は北海道で耳の聞こえない女性ハーレーライダーである凪に出会うことで短い期間の間に考え方が大きく変わっていきます。

涼香が変化したのは最後の高見沢に対しての「もう一度、一緒に走ってみない?」というセリフから分かりますね。

おそらく旅に出る前の涼香でしたら辞める部下や秘書に対してこのようなセリフははけなかったでしょう。

凪の耳が聞こえないことを億劫にしない強い意志が涼香を変えたんでしょうね。

私はあまり一人旅をする経験がなかったためこのように旅先で新しい友人ができるということを体験したことがなかったのですが、凪のような素敵な人に出会えるきっかけになるのなら一人旅もありかなと思いました。

コロナが収束したら一人で時間を作って自由気ままに旅がしたいと感じさせられる作品でした。


旅をあきらめた友と、その母への手紙


物語は友人のナガラと一緒に来るはずだったホテルに、ハグが一人で来るところから始まります。

久しぶりに一人で旅行することになったハグは常にナガラのことを考えています。

これを見てハグにとってナガラはどんな人よりも大切な存在なんだろうなということが伝わってきますね。

物語の最後でナガラの母にハグが手紙を書きますが、手紙の中の「ナガラと、そして自分のために、人生を、もっと足搔いてください。」という言葉はすごく素敵だなと感じました。

人生良いことばかりではないかもしれないけど、一生懸命人生に抵抗すればいつかは必ず素敵な日がやってくるだろうという意味であるこの言葉は私の胸にとても響きました。

私も毎日仕事で疲れていたりするけど人生を楽しくなるために色々なことをしてみようと思いました。


また、物語の中の回想でナガラがハグに私たちが女性同士でよかったというシーンがありましたが、確かに女性二人旅はあってもいい年した男性二人旅ってなかなかないなと思いました。

女性同士だったらお洒落なレストランも行きやすいのだろうなと思うと男性である私にとっては少し羨ましいです。

周りの目を気にしてしまう私は男の友人とお洒落なところに旅行とかは一生ないんだろうな…。他の男性の方はそんなの気にしてなかったりするのかな?





冬空のクレーン


仕事が自分の全てだと思い生きていたキャリアウーマンが職場でのトラブルがきっかけに旅に出る物語でした。

この物語を読んでいて、自分のなかでは自分は会社に必要な存在だと思っていても、いざその人がいなくなっても会社って回るんだなということを感じさせられました。

仕事が全てではないよという今の時代を語っている物語ですね。


また、最近は会社のモラルなどが厳しくなっていることを感じさせる作品でした。おそらく、20年前ぐらいだったら横川は会社を訴えようとか思わなかったんでしょうね。

こういう社会の変化って良いところも悪いところもあるなと感じました。

個人を尊重される時代になったからこそ集団での絡みが少し少なくなったような気がして寂しさも感じます。

だからと言って志保のようにみんなの前で横川を傷つけるのもどうかと思ったり…。

難しい問題ですね。


作中で野生の丹頂鶴を見ることができる伊藤タンチョウサンクチュアリが舞台として登場するのですがここって実在する場所なんですね。

丹頂鶴って動物園でしか見たことがないので野生の鶴がどんな風に飛ぶか見てみたいと思いました。


風を止めないで


「さいはての彼女」に登場した凪の母の物語です。

この物語を読んで凪が魅力的な女性である理由が分かりました。

彼女は亡き父の「そんな『線』はどこにもない。」という言葉があったからこそ耳が聞こえないということで線をひかずに耳が聞こえる人たちと同じ土俵で生きることができているんでしょうね。

人なんてそれぞれ個性があるものなんだから何かが自分と違うからといってそこで線引きしてしまうのはよくないということを感じました。

私も凪のような強い人間になりたい。

凪はきっとどんなに辛いことがあったとしても常に前を見続けて、父の背中を追って生きていくんでしょうね。



まとめ


『さいはての彼女』はふとしたときに自由に旅をすることで人は成長するんだということを教えてくれる作品でした。

コロナが収束したら一人ぶらりと北海道に行こう。






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原田マハさんの『ギフト』を読みました。

本作は仕事や恋愛などで悩んでいる主人公たちが、人にギフトを送ったり、人からギフトをもらうことで幸せを見つける短編が20個収録されています。

全ての作品が5分ほどで読むことができるので、少し悩みがあるときなどに一つ物語を読むとすっきりした気分になることができます。

以下、感想になります。



感想


ギフトを贈る意味


子どものことは誕生日やクリスマスなどイベントごとに父や母からギフトをもらったり、逆に自分から友人や家族にギフトを送ることが多々ありました。

しかし、大人になるにつれてもらえるギフトの数も徐々に減っていき、自分からもわざわざ人に贈り物をするということが少なくなったような気がします。

本作はそんな大人になってギフトを送ることが少なくなった人にぜひ読んでもらいたいと感じる作品でした。

プレゼントってどんな些細なものだったとしても、自分があげる相手のことを思って選んだものだった場合必ず喜んでくれること間違いないに違いません。

もしかしたら些細なギフトをあげることで人が持つ大きな悩みを解決するヒントになる可能性があります。

本作を読んだことで何かを人に贈るということは、送られる物以上に贈られた人を幸せにすることができる可能性があるということを学ぶことができました。





同じギフトでも人によって得るものは違う


私がこの短編集の中で好きな作品は『コスモス畑を横切って』、『茜空のリング』、『小さな花畑』の三篇です。

これらの物語は全て結婚式の招待状を受け取った場面から物語が始まる連作となっています(もちろん一篇ずつ独立しているのでそれぞれよんでもおもしろいが)。

『コスモス畑を横切って』の主人公は同じ人物を好きになってしまったことがきっかけに疎遠になってしまった大学時代の親友から結婚式の招待状を受け取りました。

もう交わることのないと思っていた親友から招待状という幸せなギフトをもらったことで、再び大学時代に通っていたコスモス畑で二人は友情を取り戻すことができます。

招待状という贈り物が主人公に親友を与えることになりました。


『茜空のリング』では、いつまでも彼氏からプロポーズされないことで悩んでいる女性が主人公です。

友人が結婚することで自分の彼氏も結婚を意識してくれると思っていましたが、彼に特に変化はありませんでした。

しかし、結婚式の当日少し早めに彼と会場に行こうとした主人公は、彼から夕陽に照ららされる観覧車という世界最大の結婚指輪をもらうことになります。

招待状という贈り物が主人公に結婚というギフトを贈り込んでくれました。


『小さな花畑』は、初めて結婚式に参加する新婦の女性友人四人のうちの一人が主人公です。

彼女たちは自分より早く結婚する新婦におめでというという言葉を素直に言えず嫉妬を覚えていました。

しかし、実際に結婚式で新婦に出会うとおめでとうという言葉が言えないぐらい主人公たちは感動していました。

そして彼女らは花束のような色合いのドレス姿の自分たちの幸せな写真を新婦に送りました。

招待状という贈り物が主人公たちに人から幸せをもらったら幸せを返そうということを教えてくれました。


これらの連作を読んで同じギフトをもらったとしても人によってとらえ方は違うが、どの人間も幸せになるということを学びました。

この記事を書きながら各物語を読み直していたのですが、5ページにも満たない作品で泣いてしまい原田マハさんという作家のすごさを再認識しました。



まとめ


ギフトは大人になってから人に贈り物をすることの重要性を再認識させられる作品でした。

私も長いこと大切な友人などに贈り物をしていませんでしたが、この本をきっかけに今年の誕生日は彼らを幸せにできるものを贈ってみようと思います。






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