DSC_2235

今回は、友田明美さんの『子どもの脳を傷つける親たち』を読んだので本書の概要や感想を書いていきます。

本書は、友田先生の小児科医としての実体験や研究結果が分かりやすくまとめられていました。マルトリートメントと脳の関係がテーマになっています。

友田明美さんは、福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援研究室および本学附属病院子どものこころ診療部で小児科医として、子どもの発達に関する診療・研究・教育をしている先生です。



【目次】
内容
感想





内容


本書の構成は下記のようになっています。
  1. 序章 :健全な発達を阻害する脳の傷つき
  2. 第一章:日常のなかにも存在する不適切な養育
  3. 第二章:マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響
  4. 第三章:子どもの脳が持つ回復力を信じて
  5. 第四章:健やかな発育に必要な愛着形成
  6. 終章 :マルトリートメントからの脱却


序章:健全な発達を阻害する脳の傷つき

序章では、心と脳の関係や脳科学と子どもの発達の関係が簡潔に説明されています。また子ども虐待の社会的なコストが実数値で出されているため虐待が社会的に重要な問題になっているということが把握できます。



第一章:日常のなかにも存在する不適切な養育

第一章では、最初に虐待が子どもの心にどのような影響をもたらされるかが記されています。

虐待は下記の四種類に定義されています。
  • 身体的虐待
  • 性的虐待
  • ネグレクト
  • 心理的虐待
身体的虐待と性的虐待は、昔から取り上げられる機会が多く分かりやすい虐待です。
ネグレクトというのは、近年取り上げられる機会が増えましたが「育児放棄」のことです。
心理的虐待は、暴言で子どもの心を傷つける虐待です。また、直接子どもに危害を加えるものだけではなくDVを見せるのもこの心理的虐待に含まれます。

次にマルトリートメントについて書かれていました。

虐待といえば偏ったイメージが強く実際に子どもに対して不適切な養育をしていても保護者は虐待ではないととらえることが多いです。

マルトリートメントは虐待をより広く定義した概念です。大人側からの行為がどんなものであれ子どもに不適切な行為であればマルトリートメントです。

マルトリートメントの実例や上記の虐待の定義におけるマルトリートメントの例や解決法が本章では分かりやすく書かれていました。



第二章:マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響

第二章のはじめではこれからマルトリートメントが脳のどの部分に影響するのかを分かりやすく説明するために最初に脳に関する説明が図を使い分かりやすく簡単に書かれています。脳科学について知らない人でも読みやすいように工夫がされていました。

その後、マルトリートメントの種類に伴い脳のどの部分に影響するのかを実験結果をもとに書かれています。脳の部位によって成長が盛んになる時期が異なるため、マルトリートメントを受ける時期によって脳へ与える影響が異なるみたいです。



第三章:子どもの脳がもつ回復力を信じて

第三章では、マルトリートメントで傷ついた脳の傷は、治るのかを扱っています。

子どもの脳の傷を治すには、薬物療法と心理療法がありますが本書では主に心理療法について書かれています。

心理療法についてそれぞれの実例ごとに病院で実際に行っている療法について古くから行われていることから最新の方法まで詳細に説明されています。またそれだけではなく実際に保護者が子どもに対して実践できる療法に関する説明もあります。

本章の最後には、実例に基づいたケーススタディものっています。



第四章:健やかな成長に必要な愛着形成

第四章では、古くから発達心理学で扱われている愛着形成とマルトリートメントの関係について書かれています。愛着形成とは、子どもと養育者との間に心のつながりが生まれることです。マルトリートメントの影響で愛着形成が正しく行われなければ、人間関係を正しく形成できない人間に成長する恐れがあります。

本章では、その他にも発達障害と愛着障害の違いについて説明されています。それぞれの障害の症状は類似しているが治療法は異なるため、どちらの障害であるのか判断することは治療を行う上で重要になります。

愛着形成が失敗している子どもと養育者に対しての愛着の再形成の方法ものっています。



終章:マルトリートメントからの脱却

終章では、今後のマルトリートメントの対処法や苦しんでいる子どものために養育者ができることなどが書かれています。


感想


本書はマルトリートメントについて非常に分かりやすく書かれていました。マルトリートメントという言葉は現在の日本では聞きなれない言葉ですが、子どもを育てる上で重要な言葉となるため多くの人に知ってもらいたいです。

本書の良いとこおろはマルトリートメントで苦しんでいるのは子どもだけではなくそれを行う養育者も傷ついているということに言及されていたことです。マルトリートメントを行う養育者の多くは自分自身が子どもにとって不適切なことをしているという自覚がないため、そうした養育者を支えるのもマルトリートメントを防ぐうえで重要です。

最後になりますが私は、本書をより多くの人に本書を読んでもらい子どもを傷つける人を減らしてもらいたいと思いました。子どもと関わる仕事をしている教育者の方々や、現在子育てを行っている養育者の方々、その他多くの人に本書を読んでいただきマルトリートメントの存在を知ってほしいです。