としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:恋愛

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小坂流加さんの『生きてさえいれば』を読みました。

こちらは『余命10年』よりも前に書かれた作品で小坂流加さんが亡くなった後に発見され、出版されることになったみたいです。

本作を通してどんなにつらいことがあったとしても生きてさえいれば、新たな喜びを見つけることができるということを学びました。

以下、あらすじと感想になります。



『生きてさえいれば』のあらすじ


どんなに辛く悲しいことがあったとしても生きていれば、恋だって始められる。
生きてさえいれば人は幸せになることができる。

小学生の千景は大好きな叔母・春桜の見舞いに来た日、羽田秋葉様と知らない人の宛名が書かれている手紙を春桜が大切に手元に置いているのを見つけた。

心臓の病気で病室を出ることができない春桜に代わり、千景は一人東京から大阪へ手紙を届けることを決意した。

大阪で春桜が手紙を届けたかった相手であるかつての恋人・秋葉と出会った千景は、そこで自分の知らないかつての春桜の青春の日々を知ることになる…。


読者モデルで大学のアイドル的存在である春桜。

父の形見を持ち続ける秋葉。

二人は大学で出会ったことをきっかけにお互いに少しずつ惹かれあっていたが、そんな二人に過酷な運命が訪れる。

命の大切さと純粋な思いを描いた、奇跡のラブストーリーがはじまる。



感想(ネタバレあり)


この作品は生きることの価値について書かれている素晴らしい作品でした。

道徳の教科書としてとりあげても問題ないのではないかと思うぐらいです。(性的な描写とかもあるから小学生には無理か…)


『生きてさえいれば』で得た教訓


『生きてさえいれば』を読んで得た教訓は、冒頭でも述べた通り生きてさえいれば幸せが訪れるということです。

長い人生で辛いことや悲しいことがいつ訪れるかが分かりません。

突然病気にかかったり、大切な人を亡くしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、人生はこのような辛いことだけではなく、楽しいことや嬉しいことといったたくさんの幸せも訪れます。


千景は物語の序盤では、いじめにあっていることが辛く春桜の手紙を届け終えたら自殺しようと考えていました。

しかし、秋葉と出会いを春桜の過去の話を聞くことで、生きてさえいれば幸せが訪れるということに気が付きます。

作中に明示的には書かれていませんが、千景はこれからどんなに酷いいじめに自殺しようとは二度と考えないでしょう。

春桜と秋葉が再び再開できたよう、千景もいつか辛いことを乗り越えて幸せに出会うに違いありません。


著者の小坂流加さんは若くして病気にかかっており自分が長くないことが分かっており、生き続けることができる人は幸せだと感じていた想いを本作に込めているような気がしますね。


家族の絆


本作はタイトル通り生きてさえいれば幸せだということがメインテーマですが、もう一つのテーマとして家族の絆が描かれています。

春桜も秋葉も両方とも自分が若いときに父や母を亡くしてしまっています。

唯一残った肉親は二人とも兄妹(姉妹)だけです。

しかし、春桜は冬月と仲良くしたいがお互いに劣等感を感じながら生きているため、二人は仲良くすることができませんでした。

また、秋葉も別の義父との子である夏芽に対して、半分しか血がつながっていないことから嫌悪感をいだいています。

お互いに唯一の肉親とは上手くいっていませんでしたが、秋葉は交通事故で義父と母をなくし、妹の夏芽が半身不随の怪我を負ったことをきっかけに一方的に嫌悪感をいだいていた妹との関係をみなおすことになります。

千景が秋葉を訪ねた段階では、大学時代とは違い本当に兄妹が仲良くお互いを想いあっていることが伝わってきました。

春桜と冬月に関しては、仲良くしている描写はありませんが怪我をした春桜のために冬月が大好きだった仕事を辞めていることなどから、仲良くはなれないが冬月も春桜に対して家族の絆を感じていることが分かります。

また、ラストシーンで夏芽と秋葉が二人のもとにやってきたことで、春香は夏芽と秋葉をきっかけにこれからさらに冬月とつながることが想像できます。


若者の中には父が嫌いだ、母が嫌いだなんて言っている人が多いかもしれませんが、この作品を読んだ人はきっと家族の大切さに気がつくんでしょうね。



まとめ


『生きてさえいれば』を読んだことで毎日仕事が辛いなど小さなことで疲れていましたが、その辛さと同じかそれ以上に人生では楽しいことがいっぱい待っているんだということを再認識することができました。

明日からもどんなに辛くてもいつか訪れる幸せのために頑張っていきたいです。


小坂流加さんの他の作品として『余命10年』もおすすめですので未読の方はぜひ読んでみてください。









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喜多喜久さんの『恋する創薬研究室』を読みました。

こちらの作品は、喜多喜久さんが得意とする化学と恋愛を組み合わせた小説です。

ラブケミストリーシリーズとかと比べると爽やかな恋愛小説というよりは、女性の恋愛に対するどろっとした様子などが描かれており、従来とはひと味違う作品でした。

以下、あらすじと感想になります。



『恋する創薬研究室』のあらすじ


理系の大学院生である花奈は、イケメン助教授である北条智樹に恋をした。

しかし、彼女はこれまでの人生で恋人ができたことがない。

その上、実験が下手で研究も上手くいっておらず恋どころではない状況…。

そんな彼女のもとにある日一通のメールが届いた。その内容は、学内で噂されている恋愛相談事務局に来てほしいというものだ。

恋愛相談事務局に努める早凪に出会ったことで、パッとしない理系女子から卒業しようと一念発起し、恋を叶えるための奮闘を始める。

ところが、花奈の前に美人で成績優秀なライバルが立ちふさがり、不気味な脅迫状まで届くように…。

果たして彼女の恋は届くのだろうか。

恋愛、実験、謎解きが合わさったラブコメ×理系ミステリーがここに開幕!



感想(ネタバレあり)


本作は最後にどんでん返しを狙ってイヤミスな感じにしようとしていたのだろうが、個人的な感想としては正直微妙だなといった感じの作品でした。

もともと喜多さんのさわやかな恋愛小説を読みたいという想いがあったので、より微妙に感じてしまったというのもあると思いますが、作品としても全体的にまとまりにかけているのかなという印象が残りました。

ラストも後味悪いような、悪くないような微妙な感じだったり…どちらかに振り切ってくれていたらもっと面白かったのかな?

少子化対策で恋愛相談室があったり、インフルエンザの薬を作っていたり物語のテーマとしてはなかなか面白そうなものが多い気がしたのも相まって残念な作品でした。

悪いところばっかり語ってもあれなので以下は個人的に驚かされた部分などについて書いていきます。


早凪の正体について


ラストシーンで早凪の正体が敏江だと分かったときは、結構驚かされました。

敏江は、智輝から見たらおじいちゃんの奥さんだったのでまさか20代の早凪だとは思いませんでした。

敏江を事故に巻き込んでしまったのが早凪だと思っていたり、敏江が足が悪いことも年寄りだから足が÷悪いという風に読者に想像させるような書き方をしていたため、敏江と早凪が同一人物であったということを予想できませんでした。

正体を知るまでは智輝君おばあちゃんのことが好きなんてなかなかやるなとか思っていたのですがまさか年下だったとは…。

そりゃあ若くて心がきれいな女性がいたら花奈ちゃんは負けちゃうだろうなという感じでした。


登場人物が全員悪い人物に見えてしまう


『恋する創薬研究室』の登場人物ってほとんどの人がなんかしらの嘘をついていたり、性格が悪い奴だったりしてあんまり好きになれませんでした。

物語の都合上、智輝君や花奈ちゃんも悪い奴に見えてしまうのは仕方ないかもしれないけどもう少し挽回の要素がほしかったです。

特に花奈ちゃんは恋愛初心者で奥手という設定だったので、もっとうぶな恋愛を描いてほしかった…。

まさか、脅迫を受けたふりをして智輝君の気をひこうとするなんて相当悪い奴ですよね…。

早凪も恋愛相談院という立場だから智輝に恋人ができないことを心配していたという設定も分からなくはないが、そんな協力をしてほしくなかったですね。


また、花奈のライバルとして描かれていた結崎もただただ性格の悪い奴という風な感じで気がついたら物語からフェードアウトしていましたね。

ジャンプ漫画じゃないから友情を書けとは言わないものの、結崎が智輝を好きになった理由などを掘り下げて感情移入させてほしかったです。


実はラブケミストリーと同じ世界線


『恋する創薬研究室』は大学は違えど別作品の『ラブケミストリー』と同じ世界線で起きている物語でした。

花奈が大学院入試を受けたしばらく後に藤村君がプランクスタリンの合成ルートに関する論文を提出していることが書かれていましたね。

世界線が同じっていうのは、喜多喜久さんの作品が好きな身として嬉しかったのですが、花奈が実は合成の天才だったという設定はいらなかった気がしました。

藤村君は特殊な能力もあるが毎日論文を読むなどかなりの努力家なので合成ルートを見つけることができたのは納得がいくが、大学院で問題を見ただけの花奈が合成ルートを見つけることができたのは納得いきませんでした。



まとめ


『恋する創薬研究室』は個人的には喜多喜久さんらしくない微妙な作品でした。

すすんで人に読んでほしいと感じる作品ではありませんでした。

喜多喜久さんの作品が好きな方なら読んでみてもいいかもしれませんが、ラブケミストリーとかの感じが好きだという人は私のようにがっかりする可能性が高いです。

もし、当ブログをみて読んだひとがいるなら感想を教えてほしいですね。







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山田悠介さんの『僕はロボットごしの君に恋をする』を読みました。

山田悠介さんの作品を読むのは久しぶりだったのですが、想像以上に面白く、切なくも美しい物語で感動しました。


文庫版ではハードカバー版では語られなかった3年後の物語も掲載されておりそちらもよかったです。

以下あらすじの紹介と感想を書いていきます。





あらすじ


2060年、ロボットが普及し、三度目のオリンピックが迫る東京で、人型ロボットを使い、テロを防ぎための国家的極秘プロジェクトが進んでいた。

主人公の大沢健はAIロボット研究所に所属しており、極秘プロジェクトのメンバーで、人型ロボットを操縦する捜査官の一人である。

健は極秘プロジェクトを同僚の陽一郎や健の想い人の咲に助けられながらも奮闘する中、咲の勤務先にテロ予告が届く。

健は咲をテロから守ることができるのか!?

また、健と咲は結ばれるのか…。


感想(ネタバレあり)


『僕はロボットごしの君に恋をする』の舞台となる2060年の東京では、2020年現在研究が進められている車の自動運転が街のいたるところに使われていました。

また、街のいたるところにロボットがあふれていますが、安全性を守るためにロボットと分かるように作られていたり、AIが独立して操作を行うのではなく、人とAIが協力して操作を行うという設定が実際に実現する可能性がありそうでリアリティがありよかったです。



物語についてはネタバレになってしまいますが、ラストシーンのどんでん返しに驚かされました。

なんとなく物語の終盤には健が人間ではなく実はロボットの可能性があると感じていたのですが、本当にロボットであると分かったときはすごく切なかったです。

健が咲のことを好きになったきっかけは陽一郎による記憶の操作(創造)によるものですが、最終的に健が恋愛感情を抑えきれず自分の意志から動き始めたことから、現実世界でも将来的にはロボットにも自覚が芽生える可能性がありそうだと感じました。

また、いつの日か恋愛のような数式では解決できない事象をロボットが理解できるようになれば、ロボットや人間など関係なく自由に恋愛などができる世界が生まれる可能性がありそうですね。







ラストシーンと3年後の物語について


ハードカバー版では3年後の未来について書かれていないので、中東に送られて物語が終わるという結末になっていますが、少し終わり方としては雑だなと感じました。

ワスレナグサの花言葉などから健がどんな場所でどんな姿になったとしても心の中で咲のことを想い続けているということを表現したかったのかもしれませんが、個人的には微妙な終わり方だと感じてしまいました。


一方、文庫版では中東に送られた3年後の様子が描かれています。こちらの結末もいきなり健がもどってきたりと少し雑なオチには感じました。

しかし、山田悠介さんが本作で表現したかったロボットでも人間と変わらない感情を持つことができるという結論が分かりやすく表現されていたのはよかったなと思いました。

小説としては個人的には、3年後の物語も含めて完成だと思います。




『僕はロボットごしの君に恋をする』の劇場版アニメ化について


『僕はロボットごしの君に恋をする』について調べていたらちらほら劇場版アニメ化についての情報がでてきました。

そこで少し調べてみたのですが、小説と一緒にアニメPVがYoutubeなどで公開されたという情報しか見つかりませんでした。

劇場アニメ化はガセなのかな…。真相を知っている人がいれば教えてほしいです。

個人的に近未来を描いているアニメ作品はどのように表現されるのか楽しみなので、劇場版アニメ化されているなら見てみたいな。




最後に


『僕はロボットごしの君に恋をする』をロボットの感情のあり方について上手に表現されている面白かったです。

また、さすがは中学生から大人気の作家ということで文章も読みやすいので、普段小説を読まない人でも楽しめる作品となっていますので、気になる方はぜひ読んでみてください。






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三浦しをんさんの『愛なき世界』を読みました。

最初は表紙の美しさにつられてなんとなく購入した本ですが、読了後はこの本を読めてよかったと思えるぐらい素晴らしい作品でした。

三浦しをんさんは学術分野が関連する作品をよく書かれていますが本書もその一つです。本書で扱っているのは植物学ですが植物学について知識がない人でも読みやすいように三浦しをんさんらしい工夫が施されていました。




あらすじ


洋食屋の見習いである藤丸陽太は、出前で訪れた東京大学で植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。

しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好きで恋愛には全く興味がない。

見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちに支えられ、地道な研究に情熱を燃やす日々……人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか⁉


感想(ネタバレあり)


三浦しをんさんらしい一つのことに集中する人間たちを描いた素晴らしい作品でした。

第一章は藤丸陽太の視点で描かれていたためこのまま最後までずっと藤丸の視点で物語が進行するものだと思っていました。

しかし、二章から四章までという物語の大部分がヒロインである本村紗英の視点で描かれていたのには驚かされました。

本村紗英の視点は自分も分野は異なるが理系の大学院生であるため今後研究を続けていってよいかどうかの葛藤や、いかに自分が今行っている研究が大好きなのかなどの共感できる話が多くまるで自分の物語を読んでいるような気分になりました。

私と同じように多くの理系の学生が本村紗英の悩みに共感を持てるのではないのだろうか。

悩みを持っている紗英とは対照的に料理人として生きると決めて料理の道を極めようとしている藤丸もかっこいいですね。料理人と研究者って全く違う職のように思えますが『愛なき世界』を読んでいると根本的には変わらないのだと分かりますね。

この二人の他にもすべての登場人物が魅力的な作品でした。

またヒロインの本村紗英が植物学の研究を行っているため植物に関する研究や実験の様子が描写されていましたが詳しい知識がない人でも読みやすいように詳しい説明などが施されているのも本作の素晴らしい点です。

この作品を読んでいるだけでまるで自分も植物学の研究者の一人になれたような気分になれます。






『愛なき世界』の意味


タイトルの『愛なき世界』ですが物語を読み始める前はこのタイトルの意味が分かりませんでした。恋愛を求めていない男女の話が描かれるのかなどと思っていましたが全然違う意味でした。

読了後私は『愛なき世界』には二つの意味があるのだと思いました。

一つ目は作中でも言われていたように植物の世界のことですね。植物の雄しべと雌しべは人間とは違いお互いを愛し合っているから子孫を残すわけではありません。植物の本能として子孫を残し続けるだけです。ですからこれが一つ目の愛なき世界の意味になります。

二つ目は研究者(職人)の世界のことです。本作にでてくる多くの研究者が研究一筋で恋愛のことなど考えていません。松田研究室に所属しているメンバーたちも岩間以外は恋人がいません。恋人がいる岩間でさえも学会のときしか彼氏とあえず会ったとしても研究に集中しているわけではないので愛をはぐくんでいるとは言えません。そのため研究者の世界が愛なき世界だと思いました。

また物語の冒頭で藤丸の師匠である円谷も若いころは妻がいたが料理に没頭するあまり出て行かれたと書かれています。こうしたことから一つのことに没頭する人間は愛なき世界にしか存在でいきないということを示しているのではないのでしょうか。


ラストシーンで藤丸と本村の関係は


藤丸と本村の関係は読んでいる側からしたらすごく歯がゆい感じでした。

藤村が本村に対して一途であるのに対して、本村は藤村が本気で自分のことを好きなのが分かっているため無下に扱えませんでした。

読者側からしたら藤村すごくいい人っぽいから早くくっつけばいいのにって思っている人が多かったのではないのでしょうか。

作中では、藤村が本村の研究の成功とともに二度目の告白をしますが、植物学者として生き続けたい本村は藤村のことを振ってしまいました。藤村のことは嫌いではないだろうにそれでも研究一筋の道を選ぶ本村の植物大好きな思いが分かりますね。

二人が恋人関係になることはありませんでしたがいつかは二人もくっつくのではないのでしょうか。

藤村の師匠である円谷は花屋の女性店主であるはなちゃんと年をとってから一緒に暮らし始めましたがそれは未来の藤村と本村の関係を表しているのかもしれません。


最後に


三浦しをんさんの作品を久しぶりに読みましたがやっぱり面白いですね。

本作を読み終わった今自分も植物を育てたい気分です。

藤村を見習って私もサボテンを育て始めようかな。





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