としおの読書生活

田舎に住む大学院生であるとしおの読書記録を綴ります。主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にも旅行やパソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:恋愛

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山田悠介さんの『僕はロボットごしの君に恋をする』を読みました。

山田悠介さんの作品を読むのは久しぶりだったのですが、想像以上に面白く、切なくも美しい物語で感動しました。


文庫版ではハードカバー版では語られなかった3年後の物語も掲載されておりそちらもよかったです。

以下あらすじの紹介と感想を書いていきます。





あらすじ


2060年、ロボットが普及し、三度目のオリンピックが迫る東京で、人型ロボットを使い、テロを防ぎための国家的極秘プロジェクトが進んでいた。

主人公の大沢健はAIロボット研究所に所属しており、極秘プロジェクトのメンバーで、人型ロボットを操縦する捜査官の一人である。

健は極秘プロジェクトを同僚の陽一郎や健の想い人の咲に助けられながらも奮闘する中、咲の勤務先にテロ予告が届く。

健は咲をテロから守ることができるのか!?

また、健と咲は結ばれるのか…。


感想(ネタバレあり)


『僕はロボットごしの君に恋をする』の舞台となる2060年の東京では、2020年現在研究が進められている車の自動運転が街のいたるところに使われていました。

また、街のいたるところにロボットがあふれていますが、安全性を守るためにロボットと分かるように作られていたり、AIが独立して操作を行うのではなく、人とAIが協力して操作を行うという設定が実際に実現する可能性がありそうでリアリティがありよかったです。



物語についてはネタバレになってしまいますが、ラストシーンのどんでん返しに驚かされました。

なんとなく物語の終盤には健が人間ではなく実はロボットの可能性があると感じていたのですが、本当にロボットであると分かったときはすごく切なかったです。

健が咲のことを好きになったきっかけは陽一郎による記憶の操作(創造)によるものですが、最終的に健が恋愛感情を抑えきれず自分の意志から動き始めたことから、現実世界でも将来的にはロボットにも自覚が芽生える可能性がありそうだと感じました。

また、いつの日か恋愛のような数式では解決できない事象をロボットが理解できるようになれば、ロボットや人間など関係なく自由に恋愛などができる世界が生まれる可能性がありそうですね。







ラストシーンと3年後の物語について


ハードカバー版では3年後の未来について書かれていないので、中東に送られて物語が終わるという結末になっていますが、少し終わり方としては雑だなと感じました。

ワスレナグサの花言葉などから健がどんな場所でどんな姿になったとしても心の中で咲のことを想い続けているということを表現したかったのかもしれませんが、個人的には微妙な終わり方だと感じてしまいました。


一方、文庫版では中東に送られた3年後の様子が描かれています。こちらの結末もいきなり健がもどってきたりと少し雑なオチには感じました。

しかし、山田悠介さんが本作で表現したかったロボットでも人間と変わらない感情を持つことができるという結論が分かりやすく表現されていたのはよかったなと思いました。

小説としては個人的には、3年後の物語も含めて完成だと思います。




『僕はロボットごしの君に恋をする』の劇場版アニメ化について


『僕はロボットごしの君に恋をする』について調べていたらちらほら劇場版アニメ化についての情報がでてきました。

そこで少し調べてみたのですが、小説と一緒にアニメPVがYoutubeなどで公開されたという情報しか見つかりませんでした。

劇場アニメ化はガセなのかな…。真相を知っている人がいれば教えてほしいです。

個人的に近未来を描いているアニメ作品はどのように表現されるのか楽しみなので、劇場版アニメ化されているなら見てみたいな。




最後に


『僕はロボットごしの君に恋をする』をロボットの感情のあり方について上手に表現されている面白かったです。

また、さすがは中学生から大人気の作家ということで文章も読みやすいので、普段小説を読まない人でも楽しめる作品となっていますので、気になる方はぜひ読んでみてください。






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三浦しをんさんの『愛なき世界』を読みました。

最初は表紙の美しさにつられてなんとなく購入した本ですが、読了後はこの本を読めてよかったと思えるぐらい素晴らしい作品でした。

三浦しをんさんは学術分野が関連する作品をよく書かれていますが本書もその一つです。本書で扱っているのは植物学ですが植物学について知識がない人でも読みやすいように三浦しをんさんらしい工夫が施されていました。




あらすじ


洋食屋の見習いである藤丸陽太は、出前で訪れた東京大学で植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。

しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好きで恋愛には全く興味がない。

見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちに支えられ、地道な研究に情熱を燃やす日々……人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか⁉


感想(ネタバレあり)


三浦しをんさんらしい一つのことに集中する人間たちを描いた素晴らしい作品でした。

第一章は藤丸陽太の視点で描かれていたためこのまま最後までずっと藤丸の視点で物語が進行するものだと思っていました。

しかし、二章から四章までという物語の大部分がヒロインである本村紗英の視点で描かれていたのには驚かされました。

本村紗英の視点は自分も分野は異なるが理系の大学院生であるため今後研究を続けていってよいかどうかの葛藤や、いかに自分が今行っている研究が大好きなのかなどの共感できる話が多くまるで自分の物語を読んでいるような気分になりました。

私と同じように多くの理系の学生が本村紗英の悩みに共感を持てるのではないのだろうか。

悩みを持っている紗英とは対照的に料理人として生きると決めて料理の道を極めようとしている藤丸もかっこいいですね。料理人と研究者って全く違う職のように思えますが『愛なき世界』を読んでいると根本的には変わらないのだと分かりますね。

この二人の他にもすべての登場人物が魅力的な作品でした。

またヒロインの本村紗英が植物学の研究を行っているため植物に関する研究や実験の様子が描写されていましたが詳しい知識がない人でも読みやすいように詳しい説明などが施されているのも本作の素晴らしい点です。

この作品を読んでいるだけでまるで自分も植物学の研究者の一人になれたような気分になれます。






『愛なき世界』の意味


タイトルの『愛なき世界』ですが物語を読み始める前はこのタイトルの意味が分かりませんでした。恋愛を求めていない男女の話が描かれるのかなどと思っていましたが全然違う意味でした。

読了後私は『愛なき世界』には二つの意味があるのだと思いました。

一つ目は作中でも言われていたように植物の世界のことですね。植物の雄しべと雌しべは人間とは違いお互いを愛し合っているから子孫を残すわけではありません。植物の本能として子孫を残し続けるだけです。ですからこれが一つ目の愛なき世界の意味になります。

二つ目は研究者(職人)の世界のことです。本作にでてくる多くの研究者が研究一筋で恋愛のことなど考えていません。松田研究室に所属しているメンバーたちも岩間以外は恋人がいません。恋人がいる岩間でさえも学会のときしか彼氏とあえず会ったとしても研究に集中しているわけではないので愛をはぐくんでいるとは言えません。そのため研究者の世界が愛なき世界だと思いました。

また物語の冒頭で藤丸の師匠である円谷も若いころは妻がいたが料理に没頭するあまり出て行かれたと書かれています。こうしたことから一つのことに没頭する人間は愛なき世界にしか存在でいきないということを示しているのではないのでしょうか。


ラストシーンで藤丸と本村の関係は


藤丸と本村の関係は読んでいる側からしたらすごく歯がゆい感じでした。

藤村が本村に対して一途であるのに対して、本村は藤村が本気で自分のことを好きなのが分かっているため無下に扱えませんでした。

読者側からしたら藤村すごくいい人っぽいから早くくっつけばいいのにって思っている人が多かったのではないのでしょうか。

作中では、藤村が本村の研究の成功とともに二度目の告白をしますが、植物学者として生き続けたい本村は藤村のことを振ってしまいました。藤村のことは嫌いではないだろうにそれでも研究一筋の道を選ぶ本村の植物大好きな思いが分かりますね。

二人が恋人関係になることはありませんでしたがいつかは二人もくっつくのではないのでしょうか。

藤村の師匠である円谷は花屋の女性店主であるはなちゃんと年をとってから一緒に暮らし始めましたがそれは未来の藤村と本村の関係を表しているのかもしれません。


最後に


三浦しをんさんの作品を久しぶりに読みましたがやっぱり面白いですね。

本作を読み終わった今自分も植物を育てたい気分です。

藤村を見習って私もサボテンを育て始めようかな。





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