今回は、川島隆太さんが書かれた『スマホが学力を破壊する』を紹介します。
川島隆太さんは東北大学の教授をしている方で、少し前に『脳を鍛える大人のDSトレーニング』の監修を行っています。
ゲーム監修にも携わっていますが川島隆太先生は、ゲームを全然しないみたいです(笑)。
内容
本書の構成は下記のようになっています。
- 第一章:スマホを使うだけで成績が下がる!?
- 第二章:睡眠不足が成績低下の原因か
- 第三章:スマホが先か学力が先か
- 第四章:LINE等インスタントメッセンジャーの影響
- 第五章:テレビやゲームの影響
- 第六章:どれだけの生徒がスマホ等を長時間使用しているのか
- 第七章:勉強中のスマホ使用の実態
- 第八章:メディア・マルチタスキング
- 第九章:スマホが脳発達に悪影響を与えている
- 第十章:スマホ依存度評価
本書はほぼ全ての章で図とグラフを使いスマホが及ぼしている影響を説明しているため視覚的にも分かりやすい本となっております。
第一章では、最初にどうして川島先生がスマホの影響で学力が低下していると思うようになったのかということを説明しています。その後、スマホを操作している時間と成績の関係をグラフを用いて解説しています。
第二章では、スマホは直接関係なくスマホの影響で睡眠時間が減少したから学力が低下したのかもしれないということについて言及しています。
もともと睡眠時間が短すぎたり、長すぎたりする子どもは睡眠時間が6~8時間の生徒と比べて成績がよくない傾向にあります。スマホによる影響で睡眠時間が短い子どもが増えたことが学力が低下している原因であれば、スマホは学力の低下に直接的な関係はありません。しかし、調査の結果適切な睡眠時間をとっている子どもであれ、スマホの操作時間が長ければ学力が低下しているということが分かりました。
第三章では、スマホが学力を押し下げているのか、それとも学力が低い子どもとスマホに親和性があるのかということについて説明されています。
川島先生の調査の結果、どんな児童・生徒であれスマホを使用し始めると成績が低下していることが分かりました。スマホを非使用であったり、以前使用していたが使用を中止した生徒らは、成績が上がる傾向があります。
またスマホの使用を開始しても一日の使用時間を一時間未満に抑えることができる生徒らは、成績が低下しません。
第四章では、LINE等のインスタントメッセンジャーの使用時間と学力を比較しています。
インスタントメッセンジャーもスマホと同じで使用時間が長ければ長いほど学力が低下しているみたいです。また、第三章と同様で、非使用の生徒や使用を中止した生徒は学力が上がる傾向があります。
第五章では、ゲームやテレビが学力にどれぐらい影響しているのかということが調査されています。
意外なことに、平日のゲーム時間が一時間未満の生徒のほうが全くしない生徒よりも数学の成績が良いみたいです。ゲームにより空間情報処理能力が高まることが影響しているみたいです。ただゲームをしすぎている生徒はゲームのプレイ時間に比例して成績が下がっているようです。
テレビの視聴時間による成績の影響も意外なことに一日の平均視聴時間が四時間未満であれば全く見ない生徒よりも成績が良いみたいです。これは、まったく視聴しない生徒は、社会への関心が薄いことや、その時間をスマホ操作に使っていることが原因であると推測されています。
第六章では、どのくらいの割合の中学生がスマホを長時間使用しているかについて分析されています。
平成26年と平成29年のデータを比較するとスマホを使用する生徒の割合が増加しています。平成26年には、Lineを使っていない生徒が過半数以上であったが、平成29年の調査では過半数未満になっていた。
第七章では、勉強中にスマホを使用しながらのながら勉強をしている生徒がどれぐらいいるのかについて調査されている。
調査の結果、小学5年生でも過半数以上の児童がスマホを使用しながらのながら勉強をしているみたいです。中学3年生に至っては8割以上の生徒が自宅学習中にスマホを操作しています。
スマホ所有者の生徒の訳3分の2が音楽を聞きながら勉強しており、その他勉強中にスマホでゲームをしている生徒が34%、動画を視聴している生徒が44%、Lineをしている生徒が43%いるみたいです。
数値を見ると勉強をしながら複数のアプリを使用している生徒がいるのが分かりますが、使用アプリの数が多いほど学力が低下する傾向にあります。
第八章では、人間がマルチタスクを行えるのかについて言及しています。結論を言うと、ほとんどの人間がマルチタスクはできないみたいです。
第九章では、スマホが脳の発達に悪影響を与えているのかということに注目しています。スマホなどで文章を入力したり電話で相手と話すのは、手書きで文字を書いたり直接相手と会って話すのと比べて前頭前野が活動しないため脳に影響があるみたいです。
第十章では、スマホ依存度の評価の方法がのっています。
以上で簡単な本書の概要の説明を終わります。本書ではより詳細な川島先生による説明がのっていますので興味がある人には、ぜひ読んでもらいたいです。
感想
以前から若者の間でスマホ依存症が問題になっているという本はいくつかありましたが、学術的にスマホが学力低下と関係があるということについて言及されている本は私が知っている限り本書が初めてです。
本書を読んだことで私もスマホとの付き合いを改めて考え直さなければいけないと思いました。
また、現在の小中学生の多くがスマホで動画を見たり、ゲームをしながら自宅学習をしているということに驚きが隠せませんでした。
このブログを読んだ保護者の方がいれば子どもにスマホがどれほど悪影響を及ぼしているのかを説明してほしいです。また他の保護者の方にも情報を共有していただければよいと思います。
教員の方が読んだのであれば、グラフなどを利用して児童・生徒がスマホの凶悪さを理解できるように説明してもらいたいです。
また自分は、スマホ依存症かもしれないと自覚のある人にも読んでいただきたいです。スマホによる学力の低下は、子供だけではなく大人も深刻に考える必要がある事態です。
ぜひ多くの人に本書を手に取ってもらいスマホとの付き合い方を改めて考え直してほしいです。