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村木美涼さんの『商店街のジャンクション』を読みました。

着ぐるみを着ることでいつもと違う自分に変わりたい三人の葛藤を描いている作品でなかなか面白かったです。

以下、あらすじと感想になります。



『商店街のジャンクション』のあらすじ


三人の男女は年齢も性別も違うが似たような悩みを持っている。

滝田は、チャッキーを着ることで何かから守られている気持ちになる。

水谷は、日常生活において「右」にしばられていて怖くてできないことが多い。

兵頭は、小学生のころから逃げてばかりの人生を変えたがっていた。

そんな人生に疲れた三人はあるとき、滝田が商店街の映画館でビラ配りをしているときに来ているチョッキーという犬の着ぐるみを一日交替で着ることになる。

自分の悩みを解決するために着ぐるみを着たい三人はかわるがわるチョッキーの中に入り、商店街でビラを配る。

チョッキーの着ぐるみを着ることで彼らはいつもと違う自分へと変わる。

いつもと違う自分になった彼らが気づいた真実とは…。



感想(ネタバレあり)


新しい自分へと変わりたい三人


人生一度は自分以外の何者かになってみたいと思ったことがあるのではないのでしょうか。

本作はチョッキーと呼ばれる犬の着ぐるみを着ることで自分以外の何者かになりたいという多くの人の願望を実際にやってみた三人の物語でした。

三者三様似たようで少し違う悩みを持っていたのですが、私がの作品の登場人物の中で一番共感できた人物は水谷でした。

彼女は道を歩いてても右に曲がる、一歩目も右足からととにかく右を選択できる場合、全て右にするという変わった女性です。そんな彼女には人からの評判が気になるという悩みを持っています。

周りの人からの評判が気になるというのは多くの人が持っている悩みなのではないのでしょうか。私も彼女と同じ悩みを持っているため読んでいてすごく共感できました。

そんな自分を変えたいと一歩踏み出すのはすごく怖いことですが、彼女を見ていたら自分を変えるためには勇気をださないとだめだとエールをもらった気がします。

チャッキーとして働いたあとの彼女は時計で岩倉と話していました。その様子からおそらく正直に「私何でも右からなの」と自分のことを打ち解けて仲良くなっていたのが想像できますね。





着ぐるみを着るということは


着ぐるみを着ることを物語中ではいつもと違う自分になるということと表現されていました。

私はこれまでの人生で着ぐるみを着たことがないのですが、人生一度でいいので着ぐるみを着て周りからいつもと違う自分として見られたいと思いました。

おそらく、着ぐるみなんて着たくないよと思っている人は今の自分に満足しているのでしょう。

今の自分に満足できていない私としてはミッキーの着ぐるみを着て周りから憧れのまなざしを向けられてみたいなとか思ってしまいました。

また、作中で水谷が着ぐるみに包まれていることに安心していました。

全身を何かで覆うことで外敵から守られているような安心感が得られるのか、誰かに抱き着かれているような気分になるのか気になるところです。



まとめ


『商店街のジャンクション』は着ぐるみを着て新しい自分になるというなかなか斬新な作品ですが、作品のテーマ自体は人間の真理をついていておもしろかったです。

ただ、小説を読んでいてどこが悪いとは言わないのですがなんとなく文章がリズムよく読めなかったのだけが残念でした。

それでもいつもと違う自分になりたいと思っている人にはおもしろい作品だと思うので未読の方はぜひ読んでみてください。