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映画化されるということで話題になっていたので東野圭吾さんの『パラレルワールド・ラブストーリー』の小説を読みました。

久しぶりに東野さんの作品を読んだのですが読みやすいしやはり安定の面白さがありますね。

また本作は初めて出版されたのが1995年とかなり前の作品であるにもかかわらず全く古臭さを感じさせない作品となっていました。



『パラレルワールド・ラブストーリー』のあらすじ


親友の恋人は、かつて自分が一目ぼれした女性だった。嫉妬に苦しむ敦賀崇史。

ところがある日の朝、目を覚ますと、彼女は親友ではなく自分の恋人として隣にいた。

そんな状況に混乱する崇史は、「どちらの世界が現実なのか」疑問を抱くようになる。

存在する二つの「世界」と消えない二つの「記憶」。

交わることのない世界の中で、恋と友情は翻弄されていく。


感想(ネタバレあり)


夢があるSF要素


冒頭にも書いたのですが本作品は本当に1995年にかかれたのではないのかと思えるほど現代的な内容となっているSF小説となっていました。

本作のSF小説の題材として脳科学や拡張現実(こちらは物語に直接的な関りはないが)などが扱われています。

拡張現実は近年では PlayStationVR が販売されるなどして実用段階が近い技術となっていますが『パラレルワールド・ラブストーリー』が執筆された当時では夢のまた夢のような技術であったのですがそれを物語中に上手く絡めているのはさすが東野圭吾さんだと感じました。

ただ技術的に1995年だとまだ開発があまり進んでいない段階なので当時の技術力を思い返すことができるのも面白いですね。

また本作のメインのSF題材となっている脳科学では業界でタブーとなっている人体実験が行われているという業界のタブーが行われています。

主人公の親友の智彦は脳科学の技術で人間の記憶の操作ができるのかという研究を行っており、作中ではこの技術が実現したことによりある悲劇が起きてしまっています。

2018年現在でも1995年と同様で記憶を操作するという技術は実現していませんがいつが実現する未来が来るのかもしれませんね。本作のように人体実験を繰り返さなければ実現できないような気がしますが。


交わる二つの世界


本作はタイトルにパラレルワールドとつくのでパラレルワールドものだと思いいざ読み始めてみるとそれは東野圭吾の巧みな罠でした。

物語序盤では二つの世界のうちの一つは崇史が智彦より先に麻由子に出会えた世界(電車の中)で、もう一つが出会えなかった世界なのかなと解釈していたのですがそれは全くの見当違いでした。

物語中盤に来ると失っていた崇史の記憶が徐々に戻っていくことで物語の真相が少しずつ分かり始めてくるため二つの世界が同じ時間軸の世界であり平行世界ではなかったことが分かります。

これに気づいたときはやられたなと感じてしまいました。

ネタバラシされてみるとパラレルワールドだと二つの世界の時間軸をずらす必要がないのだということに気が付きますがタイトルにパラレルワールドと入っているのでまさかそんなことをされるとは予想もしていませんでした。

この作品を読んだ他の人は物語序盤の時点で二つの世界がパラレルワールドではないということに気が付いていたのかが気になるところです。




友情か恋どちらを優先するべきか


私は本作で東野圭吾が伝えたかったことは人間は友情か恋どちらを優先するのかということだと思うのですが、どちらが正解かと言われると難しい問題ですね。まるで答えのない迷路のようです。

『パラレルワールド・ラブストーリー』では崇史と智彦の友情が真由子という女性が現れたことで壊れてしまいます。

崇氏は智彦との友情よりも真由子への思いを優先してしまいます。恋を優先した崇史は智彦も自分同様真由子のことを優先していると思い込んでいたのですがそれは崇史の勘違いでした。

物語の終盤で分かる事実ですが智彦は崇史のことを親友として信じていました。

そのため崇史が真由子のことを狙っているなどと想像すらしていなかったみたいで、崇史が真由子を好きであるという真実を知った智彦は自分の記憶をなくす(記憶をなくすだけではなくコールドスリープにする)ことで崇史との友情を保とうとします。

多くの読者は崇史よりも智彦に好感を持つと思いますが崇史が間違っているかどうか聞かれるとはっきり答えられないと思います。

あくまで私の意見としては友情を優先しろと思ってしまいます。ただ実際に崇史の立場に自分がたってしまった場合どうするべきか決められないんだろうな。

本作を読んだ他の方がどう思ったのかコメントなどで教えてくれると幸いです。


最後に


まだ真由子のことなど書きたいことは色々ありますがそれを書いてしまうとこの物語を否定してしまいそうなのでここらで筆をおきます。

もし本作を未読のかたがいればぜひ読んでみてください。

来年の映画でどんな風に表現されるのかが楽しみです。