としおの読書生活

田舎に住む大学院生であるとしおの読書記録を綴ります。主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にも旅行やパソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:森見登美彦

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森見登美彦さんの『四畳半タイムマシンブルース』を読みました。

四畳半神話シリーズの16年ぶりの新作ということでしたが、当時の登場人物のイメージを崩さない笑える作品でした。



『四畳半タイムマシンブルース』のあらすじ


8月11日の炎熱地獄と化した真夏の京都で、学生寮の唯一のオアシスである「私」の部屋のエアコンが動かなくなった。

エアコンが動かなくなった原因は、妖怪のごとき悪友である小津がエアコンのリモコンを水没させたことが原因だ。

エアコンを失ったことでこの夏をどう乗り越えようと、「私」が想いを寄せるクールビューティ明石さんに相談していると、ガラクタだらけの廊下で某青い猫型ロボットが登場するアニメででてくるタイムマシンを発見した。

試しにダイヤルを昨日に合わせて、小津を乗せてみたところ、小津は本当に昨日にタイムスリップしてしまった。

「私」の天才的なひらめきから、タイムマシンを利用して過去から壊れる前のエアコンを回収することになった。

しかし、この安易な考えが原因で宇宙消滅の危機につながる…。


感想(ネタバレあり)


本作は「四畳半神話体系」と「サマータイムマシン・ブルース」のコラボ作品となっています。

私は「サマータイムマシンブルース」を見たことがないため、そちらについてはどれぐらいリスペクトしている作品なのかが分からないのですが、四畳半神話体系の続編という点から見ると登場人物のイメージをくずさない良い作品でした。

四畳半神話体系と同じように主人公である「私」は、常に想い人である明石さんのことばかり考えて一人で色々と葛藤しているし、明石さんは天然な感じだがどこか不思議な魅力がある人だし、悪友の小津は相変わらず不気味で人の不幸を幸せに感じる人物だし、樋口さんなんか25年後でもまだ寮に住んでいるみたいです。

変な登場人物ばかりだけどやっぱり四畳半神話体系っていい作品だなと感じさせられました。


原案の「サマータイムマシン・ブルース」でも、エアコンのリモコンのために昨日と今日だけをタイムトラベルするという物語みたいですが、せっかくタイムマシンを見つけたのにこんなに小さいスケールのことしかしないというところが、四畳半神話とマッチしていていいコラボ作品になった気がします。


一つ本作を読んでいて気になったことがありました。

物語の中で樋口さんは愛用のシャンプのヴィダルサスーンを盗まれてしまいます。

ヴィダルサスーンを盗人から守るために、タイムトラベルした樋口さんは、昨日の樋口さんからヴィダルサスーンを盗みますが、そもそも最初に樋口さんのヴィダルサスーンを盗んだのは誰なんでしょうか?

樋口さんもヴィダルサスーンを盗まれることがなければ過去の自分から盗むなんてことをしないはずなので、原点にもどると「私」が間違えて持って帰っていたりして。





物語の最後で明石さんが「みんながどれだけ好き放題をしても過去は変えられない」と語っています。

これは、ある程度どの時間軸でどのようなことが起きるのか大筋が決まっているため、誰がどんな行動をしても運命は変わらないという解釈でよいのかな。



明石さんが「四畳半神話体系」と「タイムマシンブルース」の映画を新作で撮りたいという感じで物語は終わりましたが個人的にこの終わり方は結構好きです。

妄想になりますが四畳半神話大系も四畳半タイムマシンブルースも「私」や明石さんなどの物語に登場してきた人物が撮影してきた作品という風にも考えることができますね。


最後に


またいつの日か今回みたいなかたちで四畳半神話大系が他作品とコラボということで復活してほしいな。

「サマータイムマシン・ブルース」もAmazon Primeで見れるみたいなので一度見てみよう。






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森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』を久しぶりに読み返しました。

本作は様々な賞を獲得したり、2017年にはアニメ映画化されるほどの大人気作で、森見登美彦さんの代表的な作品です。

読んでいると自宅にいるにも関わらず、自分も先輩や乙女と京都の街を冒険しているような気分になれました。

以下、あらすじと感想を書いていきます。






あらすじ


「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。

しかし、「黒髪の乙女」は何度出会っても先輩の想いには気がつかない。

先輩も彼女に自分の気持ちを伝えることができず、頻発する偶然の出会いがあるたびに「奇遇ですねえ!」と言うばかり。

そんな二人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者や珍事件との出会いばかり。

先輩は幾多の珍事件のなかで黒髪の乙女に想いを伝えることができるのか。



感想(ネタバレあり)



純粋な『黒髪の乙女』


先輩が想いを寄せる、サークルの後輩の黒髪の乙女がとにかくかわいい作品です。

黒髪の乙女は純粋な性格で人を疑うということを知りません。その日出会った人に何度胸を触られたとしても、偶然手があたっているだけだと思うような人物です。

しかし、その純粋さが原因で先輩が何度偶然を装って出会ったとしても、先輩の「奇遇ですね」という言葉を信じてしまい、なかなか先輩の想いに気がつきません。

先輩が彼女と結ばれるために必死に努力しているのに、想いが実らない様子が読者をやきもきさせます。

ただ、物語を読み進めるにつれて、先輩の想いに気がつき純粋無垢な少女から恋する乙女へと変化していきます。

最後まで読んだ人は恋する乙女になった彼女にやっと想いに気づいたかと安堵すること間違えないでしょう。



とにかく遠回りな『先輩』


『黒髪の乙女』との恋愛を成功させるために、先輩は様々な手を打ちますがとにかく遠回りな方法を選びます。

読んでいる多くの人は、直接遊びに誘ったりしたら気持ちをもっと簡単に伝えられるのにとやきもきしたに違いがありません。

黒髪の乙女が古本市に行くと分かれば、普通でしたら一緒に行きましょうと誘うでしょう。

しかし、先輩は偶然出会い、同じ一冊の本をとろうとして手が触れるという少女マンガのような運命の出会いを求めて彼女を追いかけます。そんな先輩の様子を読んでいるとおもしろいのですが、何だか少しだけ切ない気持ちになってしまいます。

もしかしたら現実でも、人生で恋愛をした経験がなければ、先輩のように草食系の中の草食系のような行動をしてしまう人がいるのかもしれません。

ただ、先輩のように彼女をこっそり追いかけているとストーカーとして訴えられる危険があるので気をつけないといけませんね(笑)。





登場人物の感情や行動が伝わりやすい独特な文体


森見登美彦さんの書く文章は他の作家では味わえない個性的なものです。

特に先輩や乙女の心理を描写する文章が上手で彼らがどのようなことを考えているのかが、伝わりやすいため読んでいるこちらも彼らと一緒に四苦八苦しているような気分になります。

個人的に一番気に入っている文章を紹介しておきます。

彼女が後輩として入部してきて以来、すすんで彼女の後塵を拝し、その後ろ姿を見つめに見つめて数ヶ月、もはや私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威と言われる男だ。

『夜は短し歩けよ乙女』 p.81より

『私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威』という表現がとても好きで、どんだけ彼女の背中を追っかけて来たんだよっていう感じです。

他にも魅力的な文章がたくさんで読んでいてとても楽しい気持ちになります。



最後に


『夜は短し歩けよ乙女』を久しぶりに読み返しましたが、とてもおもしろかったです。

映画を見たことがないのでそちらも見てみたいです。

また、関連作品である『四畳半神話大系』も読み返したくなりました。近いうちに読み返そうかな。







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森見登美彦さんの第2回京都本大賞受賞作の『聖なる怠け者の冒険』を読みました。

『聖なる怠け者の冒険』は『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』などと同じように京都の町が舞台となった作品で他作品で出てきた要素などもおり交ぜられているため森見登美彦さんのファンなら誰もが楽しめる作品となっています。

感想に少しだけだがネタバレもあるので未読のかたはご注意ください。


森見登美彦『聖なる怠け者の冒険』
社会人2年目の小和田君は、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら夜更かしをすることが唯一のお趣味。そんな彼の前に狸のお面をかぶった「ぽんぽこ仮面」なる人物が現れて……。宵山で賑やかな京都を舞台に果てしなく長い冒険が始まる。






感想
読み終わった後最初に思ったことは物語の内容がわずか1日分しかないのに1日分だとは思えないほど充実しているということでした。

しかも主人公の小和田君は倉のなかで妄想を膨らませながら怠け者のように半日近く眠っていたので実質主人公が何もしていない(怠け者としての姿勢を貫いている)時間が物語の半分以上だという…。しかし小和田君のどんな状況でも自分の怠け者としての意思を貫き通すところはどこかかっこいいようにも感じてしまいます。小和田君のような人物を魅力的に見せることができるのは森見登美彦さんだからできる技なんだろうな。


個性豊かな登場人物
内容が充実していたと感じる理由は様々な個性豊かな人物の視点から物語が構成されているからなのかもしれません。本作は主人公の小和田君以外の人物も魅力的なのもいい点です。

後藤所長は人生の達成感を得るために人々の称賛がほしくてぽんぽこ仮面という慈善事業を始めました。しかし、作中では自分が助けてあげた人から追われるという恩をあだで返すような行為をされてしまいます。また自分の休日をけずり怠け者としての本能をおさえてまでぽんぽこ仮面としての活動を行っていることに疑問を抱く場面もあります。最終的に町中の人がぽんぽこ仮面になったおかげでぽんぽこ仮面を引退できたのは後藤所長にとって良かったのだろう。

休日探偵の玉川さんは、浦本探偵とは違い探偵としての意欲は高いが能力がありません。しかも極度の歩行音痴で物語中の大部分は京都の町で迷子になってしまいふらふらとしていました。ただ浦本探偵の「迷うべきときに迷うことも才能」という言葉を聞いていると玉川さんは迷いながらも自分の職務を全うしているように感じます。

恩田先輩と桃木さんのカップルは二人とも休日を計画的な行動を行うことで充実させようという意識がすごかったです。小和田君のように怠け者のような休日がいるなか恩田先輩たちのように休日だからこそ色々なことをして充実させようという人も世の中には多いのだろう。私は本作の登場人物のなかでこの二人が一番好きです。

この他にも多くの人物が登場するがどの人物も本当に魅力的でした。




他作品と関連する要素
他作品で出てきた要素が出てくるのも本作の良いところで、森見登美彦さんのファンならば色々と探してしまうのではないのでしょうか。

偽電気ブラン、猫ラーメン、下鴨幽水荘など他にも様々なものが現れました。

多くの他作品の要素が登場した中で私が特に良かったなと思ったのは津田さんの出演です。これは『四畳半神話大系』のファンにはたまらないのではないのでしょうか。

あの悪友だった津田さんが10年後には蕎麦打ちの職人になっているとは想像もできませんでした。津田さんも歳をとれば丸くなるんだなと思ってしまいました。ひたすら津田の弟子が蕎麦を打ち、それを招待客が食べ続ける無間蕎麦は実際にあるのならば行ってみたい気がしますね。



最後に
森見登美彦ワールド全開の作品を読むと京都の街並みが素敵に描写されているからなのか京都に遊びに行きたくなってしまいます。私も小冒険として来年は祇園祭宵山に行ってみようかな。

あとがきで『聖なる怠け者の冒険』は新聞連載のときや文庫化前では内容が少し違うと書いていたのでそちらも読んでみたいな。

本書を読んだ人のなかで森見登美彦さんの他作品をまだ読んでいない方は他の作品もおもしろいのでぜひ読んでみてください。



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今回は、森見登美彦さんの『ペンギン・ハイウェイ』を読んだのでそちらを紹介していきます。

『ペンギン・ハイウェイ』は2010年に日本SF大賞を受賞しており、2018年8月17日から映画が上映されるほどの人気作です。

作者の森見登美彦さんは、自身の京都大学での生活をもとに書かれた『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』などの作品を書かれている方です。

私は、大学生以外が主人公の森見登美彦さんの作品を読むのは本作が初めてであったためとても新鮮な気持ちで読ませていただきました。




あらすじ


小学四年生のアオヤマ君は毎日きちんとノートを書き、たくさん本を読むため大人にも負けないほどいろいろなことを知っている。

ある日、アオヤマ君の住む町に突然ペンギンが現れた。

ペンギンが突如現れた事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることが分かったアオヤマ君は、お姉さんとペンギンの謎を研究することにした。

研究を進めていくうちに現代科学では証明ができないような様々な事象が起こる。

アオヤマ君はペンギンの謎を解き明かすことができるのか。


おもしろいポイント


私は、本作の魅力は二つあると思う。

一つ目は、物語の主人公となるアオヤマ君の変化であると思う。

アオヤマ君は、勉強熱心であり小学四年生だとは思えないほど賢い人物である。ただその賢さがゆえに物語の序盤などでは、どんな物事も理論的に解決しようとする。それゆえに恋愛などの理論で説明できないことにはうとい人物となっている。

そのためアオヤマ君が歯科医院のお姉さんを魅力的に感じるのはおっぱいがあるからだなどの謎理論を展開しおっぱいの魅力について考える場面などがあり非常におもしろい(笑)

そんなアオヤマ君の考え方が物語が進むにつれて変化していくのが魅力的だ。


二つ目は、森見登美彦さんの不思議な世界観だ。

森見登美彦さんは他の作品も独特な世界観を持っている作品が多いが本作も不思議な雰囲気を持っている作品となっている。

突如現れるペンギンや不思議な生き物、<海>と読んでいる謎のものなど…

どこにでもある普通の世界観にこういった不思議な要素を自然と取り入れることができているのも本作の魅力だ。本作を読んでいると自分も同じ世界にいるような不思議な感覚を味わうことができる。

森見登美彦ワールドを体験してみたい人にはぜひ読んでほしい。


感想


読了後の感想として最初に思ったのは、アオヤマ君は強い子であると感じた。

物語の最後にアオヤマ君の大好きであったお姉さんが <海> が消えるとともにいなくなってしまうが、それえでも泣かないアオヤマ君はとても強い子であると思った。

私は、アオヤマ君がお姉さんのことを好きであると分かったのにその直後お姉さんがいなくなったため涙を流してしまった。アオヤマ君が泣かないのに私が泣くのもおかしな話である。

アオヤマ君はこの不思議な出来事の研究を突き詰めることでいつかお姉さんと再会することができ一緒に海に行くことができると考えているから泣かなかったのかな…。もしそうであるならアオヤマ君にはお姉さんにぜひ再開してほしいと思う。


本作を読み終わったあと私なりにお姉さんとは何者であったのか少し考えてみたが正体が分からない。本当不思議なお姉さんだ。

物語の中でお姉さんはペンギンを出すことができ、ペンギンは<海>をつぶすことができるため時空を調整することができる人物であると書かれている。

お姉さんの正体を解き明かすにはそもそも<海>とはなんなのかということを考えなければならない気がする。

海が出現した時期とお姉さんが現れた時期は同じなのか?それとも海が現れたからお姉さんが不思議な人物に変化したのか…考えているときりがなく分からない。

この記事を書き終わったら考察が書いているブログを捜して自分なりに改めて考えてみたい。


最後になるが、『ペンギン・ハイウェイ』は魅力的な作品であった。本作を読んでいると私もアオヤマ君、ウチダ君、ハマモトさんと一緒に<海>の研究をしている気分になれた。読んでよかった。






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