横関大さんの『わんダフル・デイズ』を読みました。
小説を読みながら盲導犬についての知識が吸収できる本で非常に勉強になりました。
今まで知らなかった盲導犬に関する事実を知ることができて良かったです。
以下、あらすじと感想になります。
『わんダフル・デイズ』のあらすじ
主人公は盲導犬訓練センターに勤務し始めたばかりの新人指導員である歩美。
盲導犬訓練センターで働き始めて三か月、優秀な盲導犬の指導員になることを志し午前中に座学を受け、午後にセンターの掃除を行うという生活を送っていた。
そんな歩美にとうとう指導員が着いた。
歩美の指導員となる男の名前は阿久津。
阿久津は指導員としては優秀でこれまで多くの盲導犬を指導してきたが、その反面人とのコミュニケーションが苦手なようだ。
そんな彼女らがある日、盲導犬であるジャックのパートナーから最近ジャックの調子が悪いという相談を受けた。
ジャックの不調の原因を調査していた二人はある事実に気づく…。
明るい歩美と人が苦手な阿久津の性格が全然違う凹凸コンビが送る、盲導犬×ミステリー小説。
感想(ネタバレあり)
盲導犬について知らなかった様々な事実
『わんダフル・デイズ』を読んで盲導犬の存在は小学生のころから知っているが、知らない事実がたくさんあったことに気づかされました。
まず第一話の『パピーウォーカー』を読んでいて、タイトルのパピーウォーカーという存在を知りませんでした。
引退した盲導犬を一般家庭で引き取るという制度があるのは知っていたのですが、将来的に盲導犬になる子犬を一年間ほど預かるパピーウォーカーという制度があるのは知りませんでした。
てっきり盲導犬って子犬のころから指導センターで将来盲導犬になるために育てられていると思っていました…。
また、盲導犬っていう存在は知っていたけど実際に見ることってほとんどないなとは思っていたのですが、需要に供給が追い付いていなかったんですね。
盲導犬指導員の人数にも限りがあるし、本当に優秀な犬しか盲導犬になれないという事実を考えると仕方ないのかもしれません。
ただ、視覚障害者の人で盲導犬を求める人が多いのは事実なので盲導犬をできる限り多く輩出できるように国全体で取り組みが必要なんだろうなという風に感じました。
本作ではこのほかにも盲導犬の行動原理や利口さが分かるシーンがたくさんあり盲導犬について色々と知ることができました。
歩美と阿久津の凹凸コンビ
最初は盲導犬を育てることがメインの物語だと思っていたらまさかの推理物で意外でした。
元気な歩美と推理力抜群で寡黙な阿久津というミステリーあるあるのコンビだったのですが、凹凸コンビでありながらもどこか相性のいい感じもあり読んでいてすごくほっこりしました。
歩美のとにかく明るいキャラクターは読んでいて気持ちが暗くなる物語があるなかで明るい気持ちになれました。
また、新米指導員ということもあり盲導犬にあまり詳しくない読者が共感しやすいような人物に仕上がっていたのもよかったです。
一方、阿久津は人とはコミュニケーションをとるのが下手だが、犬とのコミュニケーションをとるのは誰よりも得意だという様子から犬への愛を感じられるキャラになっていてました。
歩美にとっても指導員だけど読者からしても盲導犬に関する様々なことを教えてくれる先生的なキャラで物語を楽しみながらも盲導犬の知識が入りやすいようになっていてよかったです。
ただ、この二人のコンビに関して物語を読んでいてその演出いるのかなと思う部分が二つありました。
一つ目は歩美と阿久津がやたら美男美女と言われていることについてです。
盲導犬メインの作品なので別に指導員の二人がどんな顔していてもいいだろと読んでいて感じてしまいました。
二つ目は、歩美と阿久津がやたらと昭和のオヤジギャグを連発していたことです。
歩美の祖父が大好きだったことを強調したいのかもしれませんが、使うにしても使用頻度を減らしてほしかったですね。
いいシーンでオヤジギャグがとんでくると横やりが入ったような気がするんですよね…。
なんか映像化を狙いすぎて二人のキャラを濃く作りすぎているなという風に感じました。
まとめ
『わんダフル・デイズ』は盲導犬の現状を読者に教えてくれるいい作品でした。
少しミステリー要素が多いようにも感じましたが、盲導犬の知識ばかり詰め込むのとはちがい飽きずに読める工夫だと考えるといい作品でした。
この作品を読んで私ももっと盲導犬について詳しくなりたいなと感じたので、未読の方はぜひ読んでみてください。