としおの読書生活

田舎に住む大学院生であるとしおの読書記録を綴ります。主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にも旅行やパソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:湊かなえ

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湊かなえさんの新刊『ブロードキャスト』が販売していたので早速購入して読ませていただきました。

前作の『未来』は10周年にふさわしい湊かなえさんらしいイヤミス小説でしたが『ブロードキャスト』は前作とは打って変わって爽やかな学園青春小説です。

湊かなえが10周年にして初めて挑む学園青春小説に読む前からワクワクがとまりませんでした。

以下、あらすじと感想を書いていきます。







『ブロードキャスト』のあらすじ


町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。

その後、陸上の強豪校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、ある理由から陸上部に入ることを諦め、同じ中学出身の正也から誘われてなんとなく放送部に入部することに。

陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。

目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに参加することだったが、政策の方向性を巡って部内で対立が勃発してしまう。



感想(ネタバレあり)


今までの湊かなえさんの作品とは違い読了後とても爽やかな気分になる作品でした。

イヤミスが得意な普段の湊かなえさんらしさは少ないけど若者に訴えかけたいテーマが分かりやすく私はとても好きな作品です。


物語の終わりでは圭祐が陸上をできなくなったという挫折から立ち直り正也たちと放送部のコンクールで優勝するという新しい夢を見つけることができてよかったです。

圭祐は陸上ができなくなったことがきっかけで良太との距離が離れてしまいましたが終章でのやりとりを読んでいると今後も親友としてうまくやっていけそうですね。


『ブロードキャスト』のメインテーマは挫折から立ち直り新しい夢を見つけることだと思います。

しかし、私はメインテーマ以上にイジメに対する湊かなえさんのメッセージが印象的でした。今までの作品でもイジメをテーマにしているものはありましたが本作は特にリアリティが高かった気がします。

咲楽が中学時代いじめらていてスマホ恐怖症になってしまったという話をきっかけに正也はラジオドラマである「ケンガイ」を書きあげます。

「ケンガイ」はSNSでいじめにあった人間がケンガイという症状を発症してしまい発症者がいる半径1㎞以内ではケータイが県外になってしまい使用できなくなるという内容です。

「ケンガイ」の作中ではイジメの事実を認めない大人やいじめから救われるには家族や友人からの助けが必要であるということが表現されていました。

正也のラジオドラマに関わったおかげで圭祐が咲楽をイジメる生徒にたいしてイジメを助長するようなSNSのグループに入らないという場面もよかったです。イジメが起きているクラスで圭祐や圭祐を助けた堀江、委員長のような存在があればSNSイジメは軽減するんでしょうね。

本作を読んで自分の周りでイジメが起きている人がいれば一人では勇気はでないかもしれないが、仲間とともに圭祐のようにイジメに対して立ち上がってほしいです。また自分の友人がイジメられていたら自分もイジメる側にまわるのではなく友人を支えてほしいです。



ところでみなさんは本作でどの登場人物が好きですか?

どの登場人物も魅力的なんですが私は陸上部の顧問である村岡先生と原島先生が好きです。

湊かなえさんの作品にでてくる教師はだいたいはダークな一面を持っている人物が多いです。

しかし、『ブロードキャスト』の教師陣はそんなことがなく素直に好感がもてる人物ばかりです。

村岡先生は、序章を読んだだけでは単なる熱血教師で自分に酔っているのでは…というイメージがありましたが、終章で自分に酔っているだけではないことが分かりました。

圭祐と村岡先生のインタビューシーンは感動的です。村岡先生は自分が犯した選手生命を失うという失敗を良太にしてもらわないために生徒に恨まれようが良太の選手生命を優先しました。

これを知ったとき、序章を読んだときの私はなんて愚かだったんだと後悔しました。


原島先生も事故で陸上ができなくなった圭祐にもう一度陸上をやらないかと問いかける場面があります。

もし圭祐が正也と放送部で作品を作る良さに気が付かなければ、きっと原島先生の言葉に救われたのでしょう。


また、教師陣で登場が少ない放送部の顧問である秋山先生も私は嫌いではありません。

読む人によってはこんな顧問嫌だなと思う人がいるのではないかと思いますが、私は新米教師は忙しいだろうし全国に行かなければならないというプレッシャーがあるせいで部活に積極的になれないという気持ちが分かります。

ただ今後、秋山先生は自分の行動を反省し、忙しいながらも部活の顧問として生徒と一緒に成長していくような気がします。




最後に


『ブロードキャスト』は本当に爽やかな青春小説で湊かなえさんのこういった作品も今後も読んでみたいですね。

本作でも書かれていましたが物語の捉え方は人によって違うと思うので、皆さんの感想をコメントで教えていただければ嬉しいです。好きな登場人物なども聞いてみたいな。


また、この作品は学生に読んでもらいたいので、早く文庫化して手軽な値段で購入できるようになってほしいです。





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今回は、湊かなえさんが書かれた『未来』を紹介します。

湊かなえさんといえば数々の大ヒット作を書かれていることで有名な作家で、多くの作品が映画化またはドラマ化されています。

本作はデビュー作の『告白』を書かれてから、10年目の作品となっており今度はどんなどんでん返しの結末が待っているのか読む前から楽しみの作品でした。




あらすじ


病気で父を亡くした小学四年生の章子のもとにある日、住所も差出人名前もない手紙が届いた。

その手紙の冒頭には「私は二〇年後のあなた三〇歳の章子です。」と書かれており、未来の自分から届いた手紙であった。

手紙の内容は未来の章子しか知らないようなことが書かれていたため、その手紙を信じた小学生の章子はその日から未来の章子に返事を書き始めた。

物語は、未来の章子への返事が書かれた手紙とともに進んでいく。



感想(ネタバレあり)


本作も他の湊かなえさん作品と同じく色々と考えさせられる作品となっておりました。湊かなえワールドが大好きな人であればすごく気に入る一作になっていると思います。

私は湊さんの他の作品もほとんど読んでいますがこの『未来』が一番好きかもしれないと思えるほどお気に入りの作品となりました。

冒頭の未来の章子からきた手紙を読んだ瞬間から早速タイトル回収かと興奮し、その後読めば読むほど続きが気になり気がつけば一日で読み終わっていました。




「章子」~エピソードⅠ


私は、湊かなえさんの作品を読む際は、どういうオチが待っているのか冒頭から警戒しながら読みます。本作では最初の未来の章子からの手紙を読み、その後最初の章子の返事を読んだときから違和感を感じていました。

まず、この手紙には四年生までに習う漢字しか使われておらずひらがなが多く使われていました。その手紙を読んだ時点ではまだ小学四年生である章子に未来の章子が配慮したのかなぐらいに思っていました。

しかし章子が返事を書いた手紙には四年生以降に習う漢字も普通に使っていたため未来からの手紙は三〇歳の章子ではなく現在同じ時間軸にいる人物が書いたのではないのかと考えました。

しかし、悲しいことに最初の章での私の推理はここで終わってしまいました(笑)

なぜなら、未来からの手紙が冒頭以降届かないんです。これでは推理のしようがありません。そのうえ、章子の生活がどんどんひどいことになっていくため推理よりも物語よりに集中してしまうんです。

林先生いい人だけど怪しいなとか思っていたら案の定だし、おばあちゃんにお母さんは人殺しだと言われるし、章子はいじめられひきこもるし、早坂がろくでもない人間だし…

読めば読むほど章子どうなっちゃうんだろうと気になってしまい手紙が誰からきたとかどうでもよくなってしまいました。

最初の章の「章子」が終わりエピソードⅠを読んだところでやっと手紙が誰からのものなのかなんとなく予想ができました。

亜里沙にも同一の手紙が届いたことから、私にはすでに未来からの手紙は未来からのものではないという予想があったため章子と亜里沙の共通の知り合いの篠宮先生だと考えました。序章で章子がもしかしたら篠宮先生が書いたかもしれないということを書いていたこともヒントとなりました。





エピソードⅡ


エピソードⅡで手紙を書いたのが篠宮先生であると分かりました。

手紙の差出人が分かったのは良かったのですが、エピソードⅡも教師のありかたについて色々と考えさせられる内容でした。

湊さんの作品に出てくる教師はだいたいの人物がかわいいそうだが、いい人という設定の人物が多い気がします。

篠宮先生は作品を読んでいると児童理解もきちんとできておりすごくいい教師であると伝わってくる。ただ、昔学費に困りいけない動画にでていたのが分かったことから退職を求められます。

これは実際に保護者の立場だとどう考えるのだろう。篠宮先生に教師であり続けてほしいと思う人は少数派なのだろうか?

校長先生が言っていた子どもに知られても大丈夫なのかという意見は分からなくもない。

しかし、実際に篠宮先生ほどよい先生がいた場合やめてほしくないと思う人も多いはず。

篠宮先生についてその後どうなったのかは詳細には書かれていないが原田君と今後も幸せに暮らし続けることを祈るばかりだ。

エピソードⅡを読み終わった時点で、残っていた謎は章子のお父さんとお母さんはどういう関係ということだけす。


エピソードⅢ


エピソードⅢでは父の良太と母の文乃(真珠)のことが書かれていました。

この章を読んで、森本誠一郎がすごく魅力的だと感じました。

エピソードⅢの冒頭で、森本は悪魔みたいで殺されても仕方ないと思いました。

しかし、読み進めていくにつれ、森本にも森本なりの悩みがあったのだと分かりとてもかわいそうな人物であると分かりました。

最後の森本からの手紙を読んだときは涙が止まりませんでした。森本には真珠とともにドリームランドに行ってその後も良太と仲良く過ごしてほしかった…。


終章


終章はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか人によってとらえ方が変わる終わり方をしていました。私個人としては、ハッピーエンドだと思います。

章子と亜里沙の両方が物語上では、これまで常に一人で悩み続けてきました。

これまでの章では、お互いにやっと悩みを相談することができた相手が章子は亜里沙、亜里沙は章子と親友どうしでした。

終章前までは、相談できる相手はお互いだけであったが、終章で章子は相談できる相手が周りにたくさんいることに気づくことができました。

二人がすぐに幸せな生活を送れるかどうかは分かりませんが、30歳になるときには一緒にドリームランドに行き手紙に入っていたしおりを手に入れて未来からの手紙を本物のものとするんでしょうね。


ブログを書きながら気がついたが主要人物のほとんどが父か母のどちらかを亡くしている片親なんですね。このことを意識しながらもう一度読み返すと違った視点で楽しめるのかもしれません。


疑問点


読了後に二つの疑問が残ったのでこの疑問が分かる人がいればコメントで教えてほしいです。

  1. フロッピー(エピソードⅢ)を読んだ章子は父親に対してどういう気持ちをもったのか?
  2. 智恵理さんはフロッピーの内容を読んで自分の意志で家を燃やすことを決めたのか?
よろしくお願いします。



最後に


湊かなえさんの10周年の集大成である『未来』を読んだら久しぶりにデビュー作の告白を読み直したくなったな。

『告白』を読んでからもう一度『未来』も読み直そう。






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湊かなえさんの『サファイア』を久しぶりに再読しました。

『ポイズンドーター・ホーリーマザー』を読んだ影響で久しぶりに湊かなえさんの短編をもっと読みたいと思ったことがきっかけで『サファイア』を読み直しましたがやっぱり面白いですね。

どの物語も宝石が関わる素敵な短編ばかりで湊かなえさんらしさを残しながらも後味の良い作品も混ざっており私のお気に入りの一冊です。

以下、各物語のあらすじと感想を書いていきます。





真珠



あらすじ


序盤は平井篤志が林田万砂子のムーンスター社の製品の歯磨き粉である「ムーンラビットイチゴ味」が林田の人生においていかに重要であるのかという話に耳を傾けながら平井自身もムーンスター社の「マイルドフラワー」というシャンプーと自分の人生の関りを思い出します。

林田の「ムーンラビットイチゴ味」に関する話は最初のうちはいくつか疑問に思う点はありながらも平井も共感しつつ物語が進行していきます。

林田の話が短大時代のことになり、最初に出ていた疑問が平井の中で疑惑へと変化していきます。

彼女は短大時代に同じ「ムーンラビットイチゴ味」を愛用していたことでM子と意気投合します。しかし、M子は寮が火事にあった際にそのまま帰らぬ人になってしまいました。

この話を聞いて疑惑が確信になった平井は林田に火事で実際に亡くなったのは林田万砂子本人で今の林田はM子が整形したのではないのかと問いただします。

最初のうちは林田も反論しますが、最終的に観念して彼女は自身の本当の名前は倫子だと名乗ります。

火事のあった日に林田本人と服を交換し自分がいつも身につけているイヤリングをつけさせたことで倫子本人だと偽装していたのです。

その後倫子は林田のふりをして生きていきますが50歳のころ自分の愛していた「ムーンラビットイチゴ味」がなくなるのを知りそれを阻止したいという欲求のためだけに再び火事を起こします。

平井はムーンスター社から派遣された人間で会社の名誉のために彼女が裁判の場でムーンラビットについて語るのを阻止しなければなりません。また整形した林田の醜さから平井自身も昔整形した自分の妻をこれからも愛し続けることができるのか悩まされます。

物語は平井がこれからの未来に絶望する場面で終わります。


感想


この物語のキーアイテムは「ムーンラビットイチゴ味」という歯磨き粉でしたが厳しい親のしつけで甘いものを禁じられていた倫子は幼少のころから唯一許されている甘いものが歯磨き粉であったため歯磨きが大好きな人間になり歯医者いらづの生活を送っていました。

一方、成り代わられた林田本人も倫子と似たような境遇で生活しており甘い歯磨き粉で歯を磨くのが大好きな人間でした。

この二人のどちらか片方が虫歯があり歯医者に通ったことのある人間だったら倫子の成り代わりのトリックはうまくいかなかったのだろう。二人とも歯形で判別することができなかったゆえに真珠のイヤリングが二人の成り代わりを成功させるための重要なアイテムとなりました。

最後の平井が二つの悩みから未来に絶望する嫌な終わり方は湊かなえさんの作品らしくていいですね。







ルビー



あらすじ


この物語は東京の出版社で働く女性が実家のある島に帰る場面から始まります。

実家の窓からは老人福祉施設「かがやき」が見えます。これまで交渉してきた先で全て断られ、ようやく主人公の母と父が許可して建てられた施設です。

妹の話によると畑仕事の際に「かがやき」の最上階からおーいおーいと声をかけてくれる老人のことを「おいちゃん」と呼んでいました。

最初は母親に声をかけていたおいちゃんですが、父も妹も親しくなり彼と話すことが日課となります。

そんななかおいちゃんから食事に招待され、その際に母は赤い大きなブローチをもらいます。

女性はおいちゃんに関する話を妹としている中、仕事で用意した「情熱の薔薇事件」について語り始めます。

昭和の頃、鉄工場で財産を築き上げたことから「鉄将軍」の異名を持つ男性がいました。鉄将軍は妻への愛情を示すために時価一億円相当のブローチをプレゼントします。

しかし、妻はそれを愛情と受け取らず愛情を求めていた妻は夫の秘書と関係を持ち駆け落ちしようとします。鉄将軍がいない隙を見計らって逃げようとするが、駅のホームで二人は鉄将軍と出会ってしまいます。

それを見た鉄将軍は二人を自宅に連れ帰り問いただします。その際に激高した鉄将軍は二人を切りかかります。

そのご鉄将軍は無期懲役、妻は死亡、青年は行方不明で妻に捧げたブローチを持って逃げたのではないかと言われています。

話をしているうちに様子がおかしくなった妹を姉は問いただします。鉄将軍はおいちゃんなのではないかと。

最初のうちは言い訳をしようとする妹ですが、最終的に老人ホームの職員の園田君から鉄将軍に関する話を聞いていたことを白状します。

実はかがやきという老人介護施設は元受刑者専用の老人ホームでおいちゃんこそ姉の話にでてきた鉄将軍でした。

二人はお互いに母親がもらったブローチから話をそらそうとして物語は終わります。


感想


この物語に登場する父親と母親は誰にでも優しい聖人のような存在でした。そんな夫婦を気にいったおちゃんは母親に自分が愛した人に送ったブローチをおくったのでしょう。

物語の終わり方は良い解釈も悪い解釈もできるでしょうがおそらく悪い解釈が正解でしょう。

良い解釈は姉妹ともにブローチのことは黙り続けてこれからも両親がおいちゃんと上手くやってほしいという解釈です。しかしこの解釈は欠点だらけでもし姉妹ともに両親のように聖人的な存在であれば高価なブローチの話になっても口の中が乾いたりはしないだろう。

悪い解釈は二人がこのブローチを狙っているということです。姉妹ともに同じ考えを持っているため片方が狙わないということはありません。高価なブローチを狙った姉妹を抱えて今後この一家はどうなるのだろう…。



ダイヤモンド



あらすじ


この物語は主人公である古谷治がお見合いパーティーで知り合った山城美和にレストランでプロポーズをして受け入れられた場面から始まります。彼にとって今が人生の絶頂なんでしょう。

プロポーズが終わりレストランをでた古谷は店の硝子戸にぶつかって意識を失ってしまった雀を保護します。雀は脳震盪を起こしていたみたいでしばらくしてから意識を取り戻し飛び去って行きます。

その晩、古谷のアパートに昼間助けてもらった雀を名乗る女性が彼にお礼がしたいといって訪ねてきます。雀は神様にお願いして一週間だけ人間に変身できるようにしてもらったというがとても信じられる話ではありません。何か頼んだら帰ってくれると思い古谷は美和の一番欲しいものを調べるように依頼します。

それから二日後、雀は同じ格好で古谷のアパートを訪れます。そして美和の最も欲しいものは鈴木崇史という男性だと答えます。信じられない古谷は、雀に美和のことをさらに調べてくるように依頼します。

翌日、雀は美和は栄養士の専門学校などには通っておらず小さな食品会社で事務をしていることを伝えます。また鈴木は妻子がいる既婚者だということも教えます。

この話をきいて古谷は借金がある鈴木に美和が脅されているのではないのかと考え、雀にデジカメを渡して証拠の写真をとるように依頼します。

翌日、音声しかとれていなかったが古谷の考えは正しく鈴木は借金があるみたいでした。古谷はこの動画を持って美和の家を訪れます。家を教えていない美和は古谷の突然の訪問に驚きつつも部屋に招き入れます。古谷が雀から聞いたことを美和に伝えると美和は鈴木から脅されていたと言います。

美和の部屋からの帰りに古谷はやはり美和は自分のことが好きであると勘違いして帰るのですが、翌日雀からレコーダーが渡されます。そのレコーダの内容は美和と鈴木が古谷をカモにしているうまのものでした。

これにはさすがの古谷も美和からの愛情はなかったということに気づかされます。最後に古谷は雀に美和に渡したダイヤモンドの指輪を取り戻してほしいお願いします。

翌朝、テレビで美和と鈴木が交通事故で亡くなったというニュースが流れます。呆然としている古谷ですがそのときドアのほうから音がします。

ドアを開けるとダイヤモンドの指輪を持った雀が亡くなっていました。古谷はダイヤモンドを雀の翼につけそれとともに雀を埋めてあげます。

それから一週間後警察に美和の交通事故を作った重要参考人として古谷は警察によばれます。

車には事故を起こすための細工や古谷の髪の毛が社内にあったため疑われていました。また、デジカメやレコーダーからストーカー行為をしていたことが疑われています。

物語は古谷が雀のことについて話すかどうか悩んでいる場面で幕をとじます。


感想


この物語は湊かなえさんらしいイヤミスの物語というよりかは世にも奇妙な物語的な話でした。

雀は古谷にとって天使であったのか悪魔であったのか微妙な存在ですね。警察に雀のことを話しても頭のおかしいやつ扱いされるのは目に見えてるし、そないとしてもそれはそれで犯罪者として警察にすんなりと捕まってしまいそうです。

物語には関係ないが古谷はこれまで50年間の人生で女性との交際が全くないのが分かるほど初心な人物ですね。普通ならプロポーズする段階までいっておきながら相手の連絡先や自宅を知らない時点でおかしいとなりそうですけどね。

これも古谷がストーカーをしていたと疑われる要因になりそうだ。もしかして雀は古谷の妄想でストーカーを実際にしていたのではないのかと疑ってしまう。



猫目石



あらすじ


この物語は大槻家が隣人の坂口愛子の行方不明になった猫の捜査を手伝う場面から始まります。猫は木の上におり夫の靖史文の手で救出されます。

猫を救出したことをきっかけに坂口は大槻家の住人に対して親しく話しかけるようになります。

そんな中坂口は大槻家が抱えている秘密を家族ごとに話していきます。

夫である靖文には妻である真由子が近所で万引きをしているという秘密を話します。靖文はその話を聞き実際に妻が万引きしているのかを確認しにいきましたが坂口のいう通り本当に万引きしていました。

娘の果穂には父の靖文あ昼間から図書館に毎日のようにいるという話をします。果穂は父は仕事をしているのでそんなわけがないと思い図書館に確認しに行くのですが本当に父はそこにおりリストラされていたのです。

妻である真由子には娘の果穂の秘密を話します。その秘密は靖文と年齢の近い男性にあっているという話でした。その事実を確認しにいくと確かに果穂は夫と年齢の近い男性にあっており援助交際できなことをしていたみたいです。

その後日、坂口が車にひかれてなくなったというニュースがながれます。

大槻一家はそれぞれの秘密を話し円満に解決したみたいです。


感想


物語の終わりで大槻一家は秘密をお互いに打ち解けあい円満に解決したような感じでした。

坂口が物語の終わりで亡くなっているのはおそらく三人が猫を利用して坂口をうまく誘導し車にひかれさせたのだろう。

大槻家にとって坂口は人の秘密を探しこそこそと話す嫌な奴ですが、坂口のような人間がいたおかげでお互いに打ち解けあえたのではないのでしょうか。

大槻家はそれぞれの秘密が亡くなった後、次に家族全体で坂口を殺したという秘密を抱えていてなんだか不気味です。

この真実を知っているのは坂口の飼っていた猫のみです。



ムーンストーン



あらすじ


この物語は元市議会議員の妻である小百合の回想からはじまります。

妻は夫がはじめて市議会議員選挙に出馬する際に選挙事務所でアルバイトしていたことで夫と知り合い結婚します。

夫は市議会議員として順調な生活を送っており次の市議会議員選も当選確実だと言われていたが所属する党の支部から県会議員の格上げを打診されます。その後、市議会議員を辞職し県会議員選に出馬するが落選してしまいます。

落選後夫は父が経営する建築会社に再就職するのですがこのころから小百合の家庭の様子はおかしくなってきます。夫は県会議員に落選したことでプライドがズタズタになっておりことあるごとに妻に暴力をふるうようになります。

夫の暴力は日に日にエスカレートしていきついに娘にまで暴力をふるいます。そんな夫に耐えきれなくなった小百合は夫の足をすくって転倒させたさいに置物を振り下ろして殺してしまいます。

こうしてたいほされた小百合のもとにある弁護士が小百合を弁護したいと訪ねてきます。その弁護士は小百合の中学生の同級生の久美でした。

久美はもともとひこみじあんな性格であがり症が原因でいじめを受けていました。

そんな久美を救ってくれたのが小百合です。小百合は久美に読書感想文コンクールに出場するように促します。この読書感想文コンクールをきっかけに周囲から久美をイジメる人はいなくなりました。

それから久美は小百合のグループに所属するのですがあることがきっかけでそのグループの友人が久美を親友だと認めてくれていないことを知ります。

それは友人の一人が旅行のお土産を買ってきたときにも露骨にでていました。その友人はお土産にムーンストーンを用いたアクセサリを買ってきたのですが久美の分だけありません。そんな久美の様子を見て小百合はピアスをとり片方を久美にあげ二人で名札の土台の部分につけるようになりました。

その後久美と小百合は高校に進学後疎遠になってしまいましたが、久美は今有名弁護士となっていました。

久美は小百合への恩を忘れずに小百合を守るためにやってきました。小百合が弁護をお願いすると久美が力強いまなざしで小百合に優しく微笑む場面で物語は終わります。


感想


久美と小百合の友情の物語ということでとても後味の良い話です。

小百合はこのあと久美の弁護によって救われたらうれしいな。

ムーンストーンは二人の愛を伝える石だと言われていますが、中学時代に小百合から受け取った愛情を久美が大人になって返そうとするのがすごくいいな。






サファイア



あらすじ


紺野真美は人に何かをしてもらうことのできない女性でした。近所の人から飴をあげると言われても必ず断るような人間です。

しかし、大学時代一人旅をしていたときに中瀬修一と出会い、真美は少しずつ変化していきます。

真美は修一とのやりとりを通じて物をもらう際に重要なのは値段なんかより相手の気持ちであると知ります。手料理を作った際に修一に感謝されたことでこれを知りました。

修一から初めての誕生日プレゼントで口紅をもらいます。口紅に合わせた化粧をしたさい修一からとても綺麗だと言われます。しかし修一には元の顔も好きだから化粧をするのはたまにでいいと言われて口紅はいつも使うような道具にはなりませんでした。

修一の誕生日に真美はオーダーメイドのカバンをプレゼントします。

修一にいつでも身に着けることのできるものをプレゼントした真美は初めて修一に誕生日プレゼントに指輪が欲しいとおねだりします。修一はそのおねだりをやっとおねだりしてくれたねと言って喜んでひきうけました。

しかし誕生日の当日修一は現れませんでした。修一は電車にひかれて亡くなっていました。その夜真美は夢で修一からサファイアの指輪をもらい右手の薬指に毎日つけるように言われます。

翌日修一の姉から真美に渡したいものがあると連絡がはいりました。伺うと夢でみた言葉と全く同じことを書いた手紙とサファイアの指輪が修一の遺品から渡されました。

その一週間後、隣人のタナカから修一が悪徳商法のアルバイトに参加していたことを知らされます。そのアルバイトはタナカが修一に声をかけたみたいで指輪を購入するお金に困っていた修一は悪徳商法と分かったあとも真美に指輪を送るためにそのアルバイトを続けます。

アルバイトの内容は道行く人々にアンケートに答えてもらい、その後オーダーメイドの五十九万円の指輪を売りつけるというものでした。

修一はそのアルバイトで三人から契約をとっており、それがきっかけで恨まれて殺されたのではないのかと真美は考えます。

その事実を修一の姉に打ち明けるのですが、そこで真美は修一が死んだのを自分のせいにしたくないだけだということに気が付きます。

真美が初めてのおねだりをしたから修一は死んだのだと。その後真美は、もう二度と『欲しい』なんて口にしないと誓うのだった。


感想


サファイアはあまり後味の良い作品ではありません。

真美は自分が欲しいとおねだりしてしまったから修一は死んだと考えています。しかし元をただせば騙した修一が悪くさらにたどっていくとアルバイトを紹介したタナカが悪いなど原因を探るときりがありません。

修一は真美の初めてのおねだりが嬉しくて研究室の生活が忙しくても真美のために指輪を買ってあげたかったのだろう。

なんだか複雑な物語です。



ガーネット



あらすじ


ガーネットはサファイアの後の真美を描いた物語です。

真美は大学卒業後、小さな食品会社で働きます。そこの広報部でCM制作を担当したところ大ヒットで賞をもらいます。

その後、夢の中で現れた修一に革表紙の本を渡されます。その本は「あなたが作る世界でたったひとつの本」というタイトルでこの本を修一に手渡されたことがきっかけで真美は作品を書いたところ佳作で文芸誌にのります。

色々なことで成功している真美は会社の先輩の女性から嫉妬され、いやがらせを受けるようになります。いやがらせはだんだんエスカレートしていき最終的に階段から突き落とされ殺されかけます。

この出来事をきっかけに会社を退職し修一を殺した人間も同じような人間だと考え、「墓標」という作品を描き上げます。

この作品が大ヒットし映画化することが決定しました。その映画の主演女優と真美が近々対談することが決まり、対談当日二人は人生を変えた品を見せあったのですが相手が見せてきたのはタナカや修一が販売した五十九万円のオーダーメイドの指輪でした。

その指輪は修一ではなくタナカが売ったものだと分かるのですが、その女優は当初は恨んだが自分に似合うオーダーメイドの指輪が届きこの指輪のようになりたくないという一心で努力した結果女優になったみたいです。

指輪を買って幸せそうにしている女優を見て真美はないてしまいます。

次にこれだけは手放せない品として真美はオーダーメイドのカバン、女優はタナカからもらったポストカードをもらいました。ポストカードにかかれた「暁の空に輝くガーネットを見つけた」というメッセージを見て真美は女優にその男性と幸せになってほしいというメッセージを残します。

タナカも修一を巻き込んだ罪に苦しんでずっと幸せになれないままでいたのでした。

対談後真美のもとにあるファンレターが届きます。

そのファンレターの送り主は修一から指輪を購入した人物でした。真美のカバンを対談の写真で見て修一の知り合いだと気が付いたみたいです。

そのファンレターの内容はオーダーメイドの指輪のおかげで幸せになれた、修一と真美に感謝を伝えたいという内容でした。

その夜真美はさらに多くの人を幸せにするためにこれからも作品を書き続けることを決意します。


感想


爽やかな終わり方の作品でした。サファイアが暗い気持ちで終わったのに対してこちらは幸せな作品でした。

最初は恨みをきっかけに「墓標」を書き上げた真美でしたが物語の終わりには自分の憎しみの気持ちで作品を書くのではなく人を幸せにするための作品を書きたいと思えたのがよかったです。

タイトルのガーネットのように暗くなった気持ちがこの作品をよんで明るくなったという人が多いのではないのでしょうか。


最後に


どれも面白い短編ばかりでした。

皆さんはどの物語がお気に入りですか?

私は一番ムーンストーンが好きです。小百合と久実の友情がでていて幸せな気持ちになれる作品でした。


まだ、読んだことがないひとはぜひ読んでみてください。






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湊かなえさんの『ポイズンドーター・ホーリーマザー』が文庫化されていたので購入してみました。短いながらも湊かなえさんらしいイヤミスが味わえるみたいなので楽しみです。

今度WOWOWで連続ドラマ化するみたいですね。



湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』

女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から届いた古郷での同窓会の誘い。欠席を表明したのは、今も変わらず抑圧的な母親に会いたくなかったからだ。だが、理穂とメールで連絡を取るうちに思いがけぬ訃報を聞き……。(「ポイズンドーター」)母と娘、姉と妹。友だち、男と女。善意と正しさの掛け違いが、眼前の光景を鮮やかに反転させる。

本作は以下の6つの短編から構成されています。
  • マイディアレスト
  • ベストフレンド
  • 罪深き女
  • 優しい人
  • ポイズンドーター
  • ホーリーマザー
以下各短編についてネタバレを含んだ感想になりますので未読のかたは気を付けてください。






マイディアレスト

マイディアレストは妊婦の妹が殺人事件に巻き込まれて殺害されてしまい、姉が刑事に事情聴取をされている場面から始まります。

物語の序盤では姉に対して妹や母親の態度が酷いなと感じてしまっていたのですが物語を読み進めていくにつれて不穏な空気がでてきます。

最後の場面では、蚤をとる要領で妹のお腹をつぶしてその後顔をつぶしてしまいます。最後の「誰が何度あの夜のことを私に訊いても、答えは同じだ。——蚤取りをしていました。」という文章にはぞっとしてしまいました。

途中ででてきた猫の蚤取りが殺人につながっているとは思いもよりませんでした。

この物語は姉の目線で物語がしんこうしているため姉はかわいそうな人に移りますが、客観的にみると無職でいつまでも結婚せず家族から見ると姉はお荷物でしかありませんね。

母親が姉に対して厳しく、妹に対して厳しくないのも母親が物語中で言っているように年齢の問題であったり、姉を育てたことで育児慣れしてきたというところもあるんでしょうね。

一遍目からここまで衝撃的な作品が掲載されていると思わなかったので驚かされてしまいました。



ベストフレンド

ベストフレンドは大学四年の時に初めて脚本コンクールに応募し、九年目にしてようやく最終選考に残り優秀賞を受賞することができた漣涼香(さざなみすずか)が主人公です。

漣涼香は授賞式の日に最優秀賞の大豆生田薫子(まみゅうだかおるこ)と涼香と同じ優秀賞の直下未来(そそりみらい)と出会います。

授賞式の場で涼香は審査員三人中二人は涼香の作品を最優秀賞に推していたのに涼香のあこがれの存在である野上浩二が病気を盾に薫子の作品を最優秀賞に選んでいたことを知る。

その後涼香が書いた別のプロットが野上の手で映像化されるが評判が上がらず打ち切りされてしまう。一方薫子は脚本家として着実に成功をおさめる。

涼香は成功する薫子と自分の違いに耐えられなくなり、いつしか薫子のことを疎ましく思う。

最後の場面で凱旋帰国する薫子を涼香は花束を持って待つが薫子を刺そうとする人物から薫子をかばって涼香はなくなってしまう。


最後の涼香が刺される場面が本当に衝撃的でした。私は涼香が薫子を恨んで嫉妬から空港で薫子を刺そうとしているのだと思っていました。しかしそれは勘違いであったみたいで涼香は薫子を最初は恨んでいたかもしれないが徐々に才能を認め始めて最後は純粋に脚本家としての良きライバル(親友)として花束を渡しにきただけでした。

一方涼香を刺した直下は、涼香と違い薫子の才能を認めることができず最終的に薫子を殺そうとするという暴挙に出ます。

物語の途中でたびたび出てくる "『』" の台詞は涼香の心情ではなく直下のブログに書き綴られていた言葉だったとは…。

この物語の終わり方は正直爽やかなものではないが最後の最後に涼香と薫子のお互いが脚本家として競いあうことができる親友だと気が付くことができたのは良かったのかもしれない。




罪深き女

この物語は電気店で刃物を振り回して死傷者十五名を出した黒田正幸容疑者の知り合いだとして警察に彼のことを話す天野幸奈が主人公です。

天野幸奈は警察に黒田正幸は母子家庭で苦労していたことを伝え子ども時代には幸奈が母から虐待される正幸に食べ物を与えていたことなどを教えた。

最終的に幸奈と正幸の関係は正幸が幸奈を母親から解放するためにアパートを燃やしてしまいそれぞれが母親を亡くして孤児院に引き取られてしまい二人の関係は終わってしまいます。

そして事件の一週間前に二人は電気店で再開します。幸奈は再会を喜び今の自分が幸せであることを伝えましたが、正幸が幸奈だけ幸せになっていることを恨み殺人事件を起こしたと幸奈は話します。

しかし、今までの幸奈の話を警察から教えられた正幸は反論します。

そもそも正幸はもともと母親に虐待されていなかったが正幸の母の再婚を憎んだ幸奈の母の嫌がらせが原因で暴力を受けるようになった。

火事を起こしたのも幸奈を救うためではなく自分の母の暴力に耐えきれなかったからだ。

殺人事件を起こしたのも運の悪い人生に嫌気がさしただけで正幸は幸奈のことを覚えてすらいなかった。


幸奈の警察への証言は見当違いのものばかりでしたね。幸奈は自分のいいように思い出を解釈していただけで正幸にはなんとも思われていませんでした。

もし正幸が幸奈一家にであっていなければ幸せに暮らせいていたのかがきになりますね。

正直幸奈が不幸に酔いしれているだけだと分かった状態で「罪深き女」をもう一度読み直すと胸糞が悪い話で気持ち悪いですね。



優しい人

会社の同僚ときていたバーベキューで奥山友彦が殺害され、犯人は交際相手の樋口明日実であるとされている。この物語では友彦を知る人物と明日実の心情から事件の真相が浮かび上がってきます。

友彦を知る人物の証言はどれも似たような内容で友彦は自己主張が苦手だが頭がよく優しいというものばかりでした。

明日実の心情では明日実の小さいころからのエピソードが語られている。子どものころから母親に人に優しくするのが当たり前だと教え込まれてきました。

そのため社内でも気持ち悪いといわれている友彦にたいして同情していまい優しくしてしまいました。その結果友彦から勘違いされてしまい、明日実は友彦からのストーカー被害に苦しめられることになります。明日実をそれを上司や警察などに相談するが相手にされません。

明日実は友彦が最後一緒にバーベキューにいけば諦めてくれるといったのでそれを了承します。

しかしバーベキューの場で友彦は彼氏を人質に脅迫し、明日実に結婚をせまります。その行為に嫌悪感をいだいた明日実はテーブルにあった包丁に手を取り友彦を刺し殺します。


友彦の周りの人間の話を聞いてると友彦はとても優しい人物のように見えます。しかしそれは表向きの話でした。ブログで人の悪口をかくなど友彦は裏の顔をもっていました。

一方明日実も表向きは友彦と同じく優しい人です。しかし明日実は優しいのではなく人から頼まれたことを断れずにやっているというタイプでした。

最後の優しい人の証言はとても深いですね。優しいことは素晴らしいのかもしれませんが我慢して優しくしたり無理して優しさを背負わせるのはあまりいいことではないのかもしれませんね。

周りの人間ももし優しい人を見かけたらそれを拍手して見守るのではなくその優しい人の手助けをするべきなんでしょうね。



ポイズンドーター

この物語の主人公は女優である藤吉弓香です。彼女は母親に女で一つで育てられたが、レール通りの人生を歩むのが苦痛となり母親の言動にストレスを感じるようになる。

そんな弓香に社会的なテーマを取り上げて討論する番組のオファーが届く。テーマは "毒親" でした。毒親に苦しんでいる子どもたちの励みになると思い、オファーを引き受ける。

その番組のあと親友である理穂から弓香の母親がなくなったという連絡が届く。

世間では毒親のエピソードや弓香が出版した本が原因で自殺したのではないかと噂されている。


この物語のタイトルは毒娘だ。親をテレビやネットなどで批判するような人間は毒娘(毒息子もいるだろうが)だと言いたいのだろう。

親が子どものころをテレビなどでほめることはあっても批判することはない。一方子どもはネットやテレビを通じて親を批判することがある。

世間一般からみれば毒なのは親ではなく子どもなのかもしれない。




ホーリーマザー

『ホーリーマザー』はポイズンドーターの後の物語で、弓香の友人の理穂視点です。

理穂の義母は弓香の母の友人であり、弓香が母のことを毒親であると公表したことが許せなかった。理穂は義母のことを疎ましく思いながらも義母の抗議文に訂正を加えた週刊誌に送る手助けをした。

そんな中、理穂に弓香から久しぶりに連絡が入りヒステリックな調子で会えないかといわれる。

弓香と再会した理穂は弓香の母の佳香は毒親ではないと反論し、本当の毒親を知っていると伝える。ただ理穂の言いたいことは弓香には通じませんでした。

弓香と別れた理穂は娘から嫌われて毒親だと思われたとしても自分が母にしてもらったように育てたいと考える。いつか娘も母は自分のために厳しかったのだと分かってくれるから。


毒親の基準って難しいですね。少し厳しいぐらいだったら子どもは親のことを毒親だと思うことはないかもしれませんが、継続的に厳しいのが続くと精神的にまいってしまい親のことを毒親認定しまう可能性があります。

一方物語中に登場したマリアの母親のような人物は娘を金儲けのために売るというどをこした毒親だ。理穂は毒親と言っていいのはこういう人物だけであると言っているが本当にそうなのだろうか?

母親が全員完璧な聖母のような存在になるのは無理だろう。たあだ子どもにさえ将来的に聖母(良い母だったと)思ってもらえれば、毒親と悪態づかれることはないので教育成功なのだろう。

弓香も結婚して姑と出会うことがあったら自分の母のことを毒親だといわなかったのかもしれないですね。



最後に

ここまでご覧いただきありがとうございます。

どの短編もメッセージ性が強く深く考えられる話ばかりでした。また多くの話が読了後後味が悪かったのではないのでしょうか。

私は本作の中では一番『ベストフレンド』が好きです。最後に涼香がなくなったのは後味が悪かったですがまだハッピーエンドと言えるのではないのでしょうか。

みなさんはどの話が好きですか?

他にも湊かなえさんの短編が読みたい方には『サファイア』がおすすめなのでこちらもぜひ読んでみてください。


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2015年に発売された『ユートピア』がとうとう文庫化されました!

帯に書かれている「善意は悪意より恐ろしい。」というコメントを読んだだけでニアミスの女王である湊かなえさんらしい作品であると分かり読む前から楽しみでした。




あらすじ


太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。鼻崎町は、先祖代々からの住人と外から来た新たな入居者が混在する町である。

その町で生まれ育った母とともに過ごしている久美香は、幼稚園の頃に交通事故に遭い、小学生になっても車椅子生活を送っている。

一方、陶芸家のすみれは、ある事件と彩也子が久美香にむけて書いた詩をきっかけに、久美香を広告塔に車椅子利用者を支援する福祉ブランドの立ち上げを思いつく。

出だしは上々であったが、久美香が歩いているところを見たという噂がネット上で流れ始め、徐々に歯車が狂い始める…。


ユートピアの魅力


『ユートピア』の魅力は湊かなえさんの作品らしい衝撃の結末もありますが、それ以上に福祉問題と家族についてメッセージ性があるところだと思う。

最初に福祉問題について記していく。

陶芸家のすみれは自分の売名(完全に利用するためではなく慈善の思いもあったが)のために久美香と彩也子の関係を利用しようとしました。

結果としては、ネットに悪い噂が流れすみれの考え通りことはうまく運びませんでした。

現実にもすみれのように福祉事業をきっかけに自分の名を売ろうとする人は多くいます。売名のために多額の寄付をしたりするのは何もしない人間と比べると福祉に貢献しているといえますが果たしてそれは本当に正しいことなんでしょうか。

次に家族についてだが、本書をよい進めていくと家族とはなんなのか、自分にとって自分の家庭はユートピアなのか問いかける場面が多々ある。

物語を読み終わると改めて家族の大切さを知ることができるのではないのだろうか。

本書を読むことで現実に様々ある福祉問題に改めて考え直すことができるのではないのでしょうか。また家族の関係と自分にとってのユートピアとはどういう場所であるのか改めて考えてほしいです。


感想(ネタバレあり)


ここから先は、『ユートピア』を読んだ私の感想を記します。ネタバレも含みますので本書を未読の方は読まないようにしてください。






















『ユートピア』もさすが湊かなえさんだという作品になっていました。

序盤は鼻崎町の商店街の祭りの準備のシーンから始まりどちらかといえばのんびりして幸せそうな作品が始まるような始まり方でした。

しかし終わってみれば全然平和な要素が少なく衝撃的な終わり方でした。

物語を読み進めていくと、ところどころに昔あった殺人事件のことが書かれていたので結末はこの殺人事件に関係ある終わり方なんだろうなと思い読んでおり、殺人事件の犯人が健吾であるというのはなんとなく分かり私なりに結末を予測しながら読み進めていました。

読み終わってみれば本書の結末は私が予想していたものと大きくかけ離れており衝撃的でした。この物語にでてきた三つの家族(すみれと健吾は家族ではないが)について私なりの思いを書いていく。


まず、菜々子の一家についてです。久美香の足が治っており本当に歩けたということに衝撃を受けました。久美香の足が治っているというネット上や学校での噂は、私は嘘だと思っていたので最後の彩也子の日記を見たときは衝撃的でした。

久美香は、お父さんとお母さんに仲良くしてもらうために自分の足が治っていることを言い出せませんでした。つまり久美香が足を怪我している家族の環境が久美香にとってはユートピアにとって近いものであったわけです。

しかし、本当のユートピアに行くために最後足が治ったことを伝えることができてよかったです。菜々子も久美香のおかげで現在の家族が自分にとってのユートピアだと気が付くことができたのではないのでしょうか。


次にすみれと健吾の関係です。大学時代の元カレである健吾がすみれのために環境の良い街に工房を建ててくれたおかげで、すみれにとって鼻崎町はユートピアとなりました。

しかし、実際は健吾が盗まれた金を取り戻すためにすみれを利用しようとしていただけでした。

ユートピアを失ったすみれは、今後新たなユートピアを見つけることができるんでしょうか。正直私は、すみれはいつまでも現実に向き合えずユートピアを追い続けていたためそこまで好きな人物ではないがいつかは幸せになってほしいと思う。


最後に光稀の家庭について思いを書いていく。私は正直最初は都会に憧れている光稀の考え方があまり好きではなく、光稀にたいしてもあまり良い印象をいだいていなかった。

しかし、終盤では旦那が自分と娘を都会に住ませるために毎日遅くまで仕事をしていたという告白をうけ改心できたことから光稀という人物の印象が良くなった。

光稀も都会に住む自分ではなく、どんな場所にいたとしても大切な家族がいればそこがユートピアであるということに気が付くことができてよかった。


湊さんはこの物語を通してユートピアとは何なのかということを読者に伝えたかったのだと思う。


最後に


この記事は自分の考えを書き連ねているだけなので読みづらいものとなってしまいましたが、ここまで読んでくれたみなさんありがとうございます。

本記事を読んで、まだ『ユートピア』を読んでいない人はぜひ読んでみてください。


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