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本屋大賞受賞作である瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』 を読みました。

最初は、主人公の親が何度も変わっているということで鬱系な感じの小説を予想していたのですが、読み終わってみるととてもすっきりした作品で、爽やかな気持ちになることができました。

以下、あらすじと感想を書いていきます。



『そして、バトンは渡された』のあらすじ


幼いころに母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ森宮優子。

その後も大人の都合に振り回され、優子は3人の父と2人の母を持つ女の子だ。

何度も住む場所や名字が変わり、高校生の今は、20歳しか離れていない、血のつながっていない"父"である森宮さんと一緒に暮らしている。

優子は、そんな複雑な家庭環境であるにも関わらず、健気で強い女の子だ。学校の先生などからは、家庭のことを気にされるが、彼女は気を使われることに困った様子を見せる。

なぜなら、血のつながらない親の間をリレーされながらも出会う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきたため、家庭環境で困ったことがないからだ。

そんな優子自身についに伴侶を持つときが来た…。

優子の成長を描く中で、彼女の過去の回想がつづられる愛にあふれた家族小説。



感想(ネタバレあり)


読了後とりあえず感じたことは、
  • 森宮さんみたいな父親がほしい!
  • 森宮さんかっこよすぎる!
  • 優子のような幸せな人生が送れるならたくさんの親がいるということも悪いことではないかも!

ということでした(笑)

『そして、バトンは渡された』を読む前は、本屋大賞のほんだけどそこまで面白い」のかなと疑問に思っていました。

しかし、読了後は、こんな作品を発売してから1年以上読んでいなかったなんてどんだけもったいないことをしていたんだと感じさせられました。

瀬尾まいこさんの作品もいままで一度も読んだことがなかったのですが、『そして、バトンは渡された』をきっかけに他の作品も読んでみたいと思いました。


森宮さんと優子のW主人公


「そして、バトンは渡された」は優子と森宮さんのW主人公で描かれている作品です。

第一章では、大人の都合で振り回される優子が主役で、第二章では、娘を送り出す森宮さんが主役となっています。

W主人公の作品として書かれているのは、分かるのですが男性の私からしてみたら優子より森宮さんの方が主役という感じが強いような気がします。

森宮さんは、梨花さんとの結婚を機会に優子を娘として迎えます。自分が優子の本当の父親ではないけど、優子に父として認めてもらえるように本当の父親以上に父親らしくしようとします。

父親らしくしようとして、朝からかつ丼を作ったりなど少し空回りしている感じもありますが、優子と森宮さんの関係は、本当の家族以上に理想の家族なんだなという感じがします。

血がつながっていないからこそ、少しお互いに気を使いあうため、優子と森宮さんは良い距離感を保てているのかなと思います。

血がつながっている家族だといっても、お互いのことを完璧に分かりあうことはできないので少し距離感があるぐらいがもしかしたら理想の家族なのかもしれませんね。


第二章で森宮さんだけが、早瀬君と優子の結婚をなかなか認めないあたりも、森宮さんが優子の将来を本当に心配していることが分かりけっこうエモいです。

ラストシーンの優子がバージンロードを一緒に歩く相手に森宮さんを選んだときは、優子と森宮さんの信頼関係が分かりむちゃくちゃ泣いてしまいました。





たくさんいる優子の父と母


優子にはたくさんの父と母がいますが、全ての父と母に愛されている優子がすごく羨ましいです。

『そして、バトンは渡された』を読むまでは、再婚などがきっかけで義父や義母が増えることに関してマイナスのイメージしかありませんでした。

しかし、本作を読んでみんながみんな義父や義母が増えることにマイナスのイメージを持っているわけではないということが分かりよかったです。

優子の父と母で一番好きなのはもちろん森宮さんなのですが、私が二番目に素敵な人だなと思ったのは梨花さんです。

梨花さんは、優子と離れたくない一心で水戸さん(優子の実の父)からの手紙を優子に渡さないなどのマイナスのシーンもありましたが、それも優子を想う愛情故です。

個人的な偏見になりますが、今まで義母って血のつながっていない娘のことを邪魔に思うものだと思っていました。(グリム童話の読みすぎが原因かも…)

しかし、梨花さんそんな私のイメージを覆す良い母でした。

優子にピアノを弾かせたい一心で泉ヶ原さんと結婚したり、自分が病気になり優子を育てることができなくなると自分の代わりに優子を大切にしてくれる森宮さんを探したりして、梨花さんが自分の人生以上に優子のことを大切に思っていることが分かりました。

梨花さんや森宮さんを見ていると家族関係は血のつながりなんかより、相手のことをどれだけ大切に思っているかどうかということが大切であると分かりますね。



まとめ


『そして、バトンは渡された』は、『家族』というテーマをすごく上手に描いている作品ですごく面白かったです。

登場人物みんながいい人であり優子を大切に思っているので、終始涙が止まらない作品でした。

読了後はきっと、皆さん幸せな気持ちで胸がいっぱいになると思いますので未読の方がぜひ読んでみてください。

優子の人生を知って、皆で幸せを共感していきましょう。