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「坂東蛍子シリーズ」で有名な神西亜樹さんの新作『東京タワーレストラン』を読みました。

「坂東蛍子シリーズ」と比べると登場人物一人一人のキャラは濃くないのですが、2020年から150年たった世界では食事がゼリーになっているという斬新な設定を上手く表現できている作品でした。

以下感想になりますがネタバレも含まれているので未読の方は注意してください。



斬新な世界観


本書は、150年後の東京タワーのレストランで記憶を失った主人公サジタリ(匙足巧)が仲間たちと料理をしていくという物語でした。

150年後の世界は現代と食事事情が大きく変わっており、ラーメンやチャーハンといった食事の味の概念は残っているが、見た目がゼリー化しているという不思議な世界でした。

食事がゼリー化したことにより、食材はすべて粉末状になっており、分量通り機会に投入するだけで誰でも料理(ゼリー)が作れるようになったが細かい味付けができなくなったという設定のおかげで、多くの人間が食に関心が薄くなったと分かるように描かれていました。

150年後ならではで牛などの食材がクローン技術の力で作られているというのも未来感があり良かったです。ただ牛のクローンの失敗率(人間化してしまうのが) 1/800 というのは高すぎる気がしなくもない。

牛人間も牛と同様に食べる世界だと考えれば倫理観が欠如しているからそこまで気にする必要がないのかもしれない。

また食に関心が薄くなった世界で一部の富裕層だけ食事に関心があるというのもリアリティがある気がします。やはり、金持ちはどんな世界でも娯楽を楽しむものなんですね。




匙足巧(サジタリ)の正体


物語序盤では、サジタリは記憶を失って自分の名前や料理ができるなどの日常的なことしか覚えていませんでした。

記憶を失っても美味しい料理を作りたいというこだわりは残っており、ビストロヤクザの到来に備えて準備しているモウモウの手伝いをしたりしていました。

物語が進むにつれてサジタリの正体が分かるのかと思いきやなかなか真相にはたどりつきません。

しかし、物語の終盤でナポリタンを作ったことをきっかけに、昔自分を作ってくれた博士がナポリタンを作っていたことを思い出し自分がロボットであるという記憶がよみがえります。

ヒナカがタイムトラベラーであるなどの設定から、本当に記憶を何らかの理由で失って未来に来た人間であると思っていたので、アンドロイドであったというオチにはなかなか驚かされました。

また物語の中でちょいちょい「源馬廻の冒険」が挟まれていましたが、彼の正体はサジタリでした。しかも最後まで読むと分かるんですが『東京タワー・レストラン』が
源馬廻が描いている物語だという。東京タワーレストランで自身の記録を本として出すがそれは実は物語の中の物語という面白い設定でした。


ヒナカの正体


ヒナカは第二章の途中までは天井に引きこもっている謎の女性でした。

サジタリが話そうとしても関わるなと言って話そうとしません。しかし、サジタリが話し続けると話しにのり、その後も良くしゃべっていることからとてもおしゃべりな人物であるということが分かります。

また二章で未来人参のポタージュを飲んだことで天井から降りてきますが、降りてこなかった理由はサジタリを思ってのことで記憶を失う前のサジタリを知っている人物でした。

第三章を読んでいると繊月の行動について詳しく知っていることからなんとなく察した人が多いのかもしれませんが、ヒナカの正体は未来の繊月でした。サジタリや自分自身を救うために未来から来たということだったんですね。

最終的にサジタリが記憶を取り戻しても自己を保つことができヒナカが再び寂しい思いをしなくて良かったです。


最後に


第四章の「思い出ナポリタン」タイトルからして春亥と父の思い出のナポリタンを再現するのがメインだと思いきや、裏にはサジタリと博士の思い出というテーマもあるタイトルとなっており上手いことできているなと感じました。

最後まで驚きの連続で世界観に引き込まれるような作品でした。ただ、個人的には150年後ではなく1000年後とかでも良かったのではないのとも思っています。150という数字にもしかしたらなんかしらの意味があるかもしれませんが。

「坂東蛍子シリーズ」を読んでいない人でも楽しめると思うのでぜひ読んでみてください。