としおの読書生活

田舎に住む社会人の読書記録を綴ります。 主に小説や新書の内容紹介と感想を書きます。 読書の他にもワイン、紅茶、パソコン関係などの趣味を詰め込んだブログにしたいです。

タグ:藤野恵美

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バレンタインデーということでチョコが関係する物語を読みたいと思い藤野恵美さんの『ショコラティエ』を読んだので感想をまとめます。ネタバレもありますので未読の方は注意してください・

最初は高級チョコのパッケージのようなデザインの表紙に惹かれて、あまり内容には期待せずに買った本なんですが読んでみる物語にどんどん魅了されてしまいました。

お菓子作りの才能はあるけれど貧しい家庭の聖太郎、子供向けチョコレート会社の御曹司であるが何事にも本気になることができない光博、ピアニストを目指す凜々花の神戸で過ごす三人の友情や恋愛面が巧に描写されているところが本書の魅力です。


【目次】
あらすじ
感想
最後に


『ショコラティエ』のあらすじ


小学校から中学校の途中までは仲が良かった聖太郎と光博ですが、成長するにつれて聖太郎が貧しい自分と光博では住む世界が違うのではないのかと感じるようになり、次第に遊ばないようになるという描写はリアリティがありよかったですね。


高校生になり、聖太郎は一度は自分の夢を諦めて公務員などの安定した職業に就こうと思いますが、担任の先生の支援や母親の助けがあり高校卒業時には、ソマリという店でパティシエとして働けるようになりました。また恋愛面では協会のコンサートで凜々花に再会したことをきっかけに凜々花との仲を縮めていきます。

一方、光博は普通の高校生らしい恋愛を経験したりするのですが、最愛であった祖父をなくしてしまいます。その後、現実逃避するかのようにダイエットと勉強に打ち込み高校卒業後は知名度のある大学に入学することになりました。


就職後、聖太郎は朝から晩までソマリで働き続け、店主である相馬や先輩から技術を教えてもらったり、仕事後もお菓子作りに打ち込むなど充実した生活を過ごしています。また仕事を始めてしばらくしてから凜々花に告白して付き合うことも決まり仕事、私生活ともに充実した生活を送っています。
しばらくして、聖太郎は新人を対象にいたコンクールに出場することになります。オリジナルケーキ作りに試行錯誤した結果そこで見事優勝しフランスへ三週間留学する権利を得ます。

大学に入学した光博ですが大学で学ぶことの意味を見出せずしだいに大学に行かなくなります。このことが原因で光博と両親との間には以前よりも深い溝ができ、次第に光博自身も夢がない自分が生きる意味を見出せなくなります。
多くの人は光博のように受験勉強して普通に大学に行きそこで勉強するんでしょうが、周りに凜々花や聖太郎といった夢を追っている人間ばかり見ていると、無意味に勉強しているのがばからしくなるのかもしれません


自堕落した光博の生活でしたが阪神淡路大震災の日をきっかけに博光の人生は大きく変わります。災害にあった神戸の街並みを見たり、親が自分を心配していることをきっかけに光博は社会のために働きたいと思うようになり、父の会社の向上で働き始めます。その後営業職、開発職と博光はキャリアをあげていき働くことの楽しさを知ります。

聖太郎は光博とは違い留学先で神戸の街が被災にあったことを知ります。被災で師匠である相馬を亡くしたことをきっかけに、フランスでショコラティエとして働くようになります。ショコラティエとして働き始め三年が過ぎたころ、日本で店を出さないかと持ち掛けられた聖太郎は日本で出店を使用としますが地元の神戸で店を出すのを認められず一度は頓挫してしまいます。

そのしばらく後に、知り合いの助けもあり神戸でショコラティエとして店を出せたのですがなかなか経営は波に乗りません。しかし、そんな現状を知った博光は聖太郎のチョコを自分がプロデュースすれば売れるようになると考え共同経営しないかと話しを持ちかけます。

聖太郎と光博、一度は離れ離れになった二人でしたがチョコをきっかけに再開して物語は続きます。




感想(ネタバレあり)


最終的にチョコをきっかけに知り合った二人がチョコをきっかけに再会する物語でした。

物語の途中ではチョコの話より、パティシエの話を読んでるみたいという印象もありましたが、最後のオチへのつなげ方をみると納得の一冊でした。

聖太郎と博光の心理描写にリアリティがあり物語を読み進めていくとまるで自分が登場人物になったかのような気分にさせられてしまいました。

中学時代に博光と仲良くしたいが上手く仲良くできない聖太郎の気持ちはまるで自分が経験しているかのように悲しくなってしまいました。実際、自分が中学は公立高校に行き友達が私立に行ったため縁が切れてしまったという人も多いのではないのでしょうか。そういった人には聖太郎の気持ちが分かる人が多いのではないのでしょうか。

凜々花が現れたことで、読んでいる途中はドロドロの恋愛劇になってしまうのか恐れたのですが、凜々花もピアニストという夢を追い続ける存在でした。

また光博の両親は、物語序盤では子どものことをあまり考えていないかのような描写でしたが、震災後はそのイメージが吹き飛びました。光博の父が大声を出しながら光博を探しに来る場面では思わず泣いてしまいました。やはり子どもを大切に思わない親はいないんですね。

最終的に聖太郎と光博はこれから二人で仕事をともにしていくという場面で物語は途切れますが、二人ならば源二とその兄のように立派なコンビになって、ピーチョコにも負けない製品を作り上げることができるんでしょうね。



最後に


『ショコラティエ』は本当に素敵できれいな物語なので未読の方は是非一度読んでみてください。

また、バレンタインデーやホワイトデーに愛する人にチョコの代わりに本書をプレゼントするのもすごく素敵だと思います。




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藤野恵美さんの『ぼくの嘘』を読みました。

高校生の甘酸っぱい恋愛模様を描いた作品で、読んでいていすごくキュンキュンする作品でした。

以下、あらすじと感想になります。



『ぼくの嘘』のあらすじ


笹川勇太は小学生からの親友である龍樹の彼女である森さんに恋をしてしまった。

今まで二次元の女性にしか恋をした経験がなかったため、勇太は森に恋をしてしまったことに戸惑っている。

親友の彼女に恋をしたなんて周りにばれたら大変だと思い隠しながら生活していたが、ある日屋上で森さんの忘れていったカーディガンを抱きしめているところを学校一の美少女である結城あおいに盗撮されてしまった。

勇太の弱みを握ったあおいは、好きな人と会うために勇太に恋人のふりをしてダブルデートしてほしいと頼んできた。

しかも、その好きな人とはあおいの中学生のころの親友で女性であるらしい。

あおいの無茶ぶりに振り回されながらも勇太はしだいにあおいに惹かれてゆく。

そして親友を好きになってしまった勇太と女性が好きなあおいの複雑な二人にある事件が起きる。

男女の恋と友情を描いた甘酸っぱい青春小説がここに開幕。



感想(ネタバレあり)


本作はよくある設定の恋愛小説で人によってはあまり面白くないと感じる方もいるかもしれませんが個人的には結構好きな作品です。

ただ、もう少し笹川君や結城さんの家族関係など風呂敷を広げたけど触れていない部分などもあったのでそういうところにも触れてほしいと感じました。


恋愛経験が少ない人にはすごく共感できる主人公


笹川君は学生時代のオタクに多い二次元以上に良いものがないなんて思い込んでいるオタクです。

この設定は私をはじめオタクあるいは元オタクの人にはすごく共感できる設定なのではないでしょうか。

逆にばりばりうのリア充に人にとっては笹川君の気持ちが分からなくて、『ぼくの嘘』という作品にいまいちハマれないような気がします。

そんな彼でしたが親友の龍樹が森さんと付き合い始めたことで森さんと会話する機会が増えたことがきっかけで森さんのことが好きになってしまいます。

少し仲良くなっただけでその人のことが好きになってしまうなんてオタクあるあるでむっちゃ共感できてしまいました。

森さんが好きな彼でしたが結城さんと仲良くなるにつれて次は結城さんのことが好きになってしまいます。

このすぐに好きな人が移行してしまうあたりも、恋愛経験が少ないにはよくある現象で読んでてまるで
自分のことであるかのように苦い思いが沸き上がってきました。

こんな感じに笹川君は恋愛経験が少ないやオタクにとって共感できるところが多い人物で、読んでいて共感できる部分が多く面白かったです。





友情と恋どちらを選ぶか


笹川君と結城さんが立場や性別が違いますが二人とも同じ悩みを持っています。

それは友情と恋のどちらを優先すべきかということです。

笹川君は親友の恋人に恋をしてしまいますが、そのことが龍樹や森さんにバレてしまい友情が壊れるのを恐れています。

しかし、その一方心の裏には森さんを自分の恋人にしたいという願望があるのも物語を読んでいて伝わってきます。

男女問わず親友の恋人を好きになってしまったという経験がある方は少なくないと思うので、そういう経験がある方には笹川君の気持ちにすごく共感できのでしょうね。

ただ、そのような経験がない私からしてみたらいつ関係が崩れるか分からない恋愛よりも、笹川君のように友情を優先してくれと思ってしまいます。


一方、結城さんは同性愛者で中学生の頃の親友に恋をしてしまいます。

同性愛を描いている作品でよく親友を好きになったことがきっかけで自分が同性愛者であることに気づいてしまったという展開がありますが、現実でもそのような人が多いのかが気になりますね。

もし私が結城さんのように同性の親友に恋をしてしまったらそれは本当に苦しいことだと思います。

親友のことを好きだということを黙っていれば友人として長い間一緒にいることができますが関係がそれ以上上がることはありません。しかし、好きだと言ってしまい自分が同性愛者だとばれてしまえば友情が崩壊する可能性があります。


また、男性間ではあまりないような気もしますが女性間では人の恋愛に口を出したことで友情が崩壊する可能性があるということも本作では触れられています。

結城さんが親友のかすみちゃんに不倫なんてよくないとかすみちゃんの恋愛観を否定したことが原因で二人の友情は壊れてしまいました。

友情と恋が両立できれば良いのですがそれができないということをこの作品では描かれています。


ラストシーンについて


ラストシーンは34歳になった笹川君が結城さんにずっと隠し続けた想いを告白するというよくあるラストシーンでした。

ただどういったらいいのかは分かりませんが、このよくある展開が自分にすごく刺さってしまいむちゃくちゃ感動しました。

近年ではこういった典型的な恋愛小説の終わり方をする作品が少なくなってきているのもあり、キュンキュンさせられました。



まとめ


本作は男女の友情と恋愛を描いた青春小説で、若いころの気持ちを思い出したい人にはぴったりの作品でした。

解説を読むまではしらなかったのですが本作の前作として森さんと龍樹の恋愛を描いた『わたしの恋人』という作品があるみたいです。

解説で順番に読めと書かれていたにも関わらず『ぼくの噓』から読んでしまったので早いうちに『わたしの恋人』も読もうと思います。










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