
本屋大賞2018を獲得した辻村深月さんの作品を紹介します。
最初はなんとなく短編が読みたいということで手に取った『家族シアター』でしたが、読み終わったあとはこの本を選んでよかったと思いました。
みなさんは、最近忙しく家族と交流する時間が減ったりしていませんか。そして家族の絆が弱くなっていませんか。
本作はそんな風に忘れしまった家族の絆を思い出させてくれる作品です。
『家族シアター』のあらすじ
最初に本作の構成を紹介します。
- 「妹」という祝福
- サイリウム
- 私のディアマンテ
- タイムカプセルの八年
- 1992年の秋空
- 孫と誕生会
- タマシイム・マシンの永遠

「妹」という祝福
姉からの結婚式での手紙で妹が中学校時代の思い出を馳せる、姉妹の絆を描く物語。
友達からどう思われるかが気になる青春時代。真面目でダサい姉を反面教師として妹は、オシャレな人間でいようとする。対のような二人は、表面上は仲良くないが姉は、オシャレな妹を大切に思っており妹が困ったとき影から支えていた。妹は、姉が自分を支えていると知ったときどんな行動にでるのか。
サイリウム
バンギャの姉とアイドルオタクの弟の物語。
お互いの趣味をバカにしあう姉弟。姉は、アイドルオタクの弟を普段はバカにしているが、同じ誰かのファンであるという立場から誰かを応援することの大切さが分かっている。素直に伝えられない姉の思いを弟は理解することができるのか。
私のディアマンテ
優等生の娘と意識の低い母の物語。
高校の特待生として入学した娘と元キャバ嬢であった母は、昔から価値観が違っていた。しかしある出来事がきっかけで母は娘を支えてあげられる存在へと変化していく。こんな母がいたら幸せだろうと感じさせられる話となっている。
タイムカプセルの八年
教師に憧れる息子と人づきあいが苦手な大学准教授の父の物語。
ある教師のせいで息子の夢が壊れそうなのを防ごうとする父の話。父は、人づきあいが苦手で息子にもあまり興味のないように見えるが、息子を守るために奮闘する父の行動に心がうたれる。色々な種類の父がいるが息子にとってはどんな父であれ憧れの存在であると分かる。
1992年の秋空
宇宙マニアの妹と普通の姉の物語。
妹は小学生にして宇宙が出し好きという自分を持っているのに対して、姉は自分がないことをコンプレックスに感じている。しかしそんな妹も姉に憧れる部分があるという姉妹の素敵な話。それぞれのコンプレックスが、自分にない魅力を互いに尊重しあえるように変化していく。
孫と誕生会
昔ながらの考えを持つおじいちゃんと孫の物語。
海外赴任でほとんど会う機会がなかった息子家族と同居することになったおじいちゃん。孫とおじいちゃんのそれぞれが仲良くしたいという風に思っているがどう接したらよいのか分からない距離感が絶妙に描かれている。おじいちゃんが孫のことを一番に思っているという風な思いが素直に語られたとき思わず涙してしまう。
タマシイム・マシンの永遠
藤子・F・不二雄を敬愛する夫婦が赤ちゃんを連れて帰省する物語。
父が実家で赤ちゃんが大切にされている様子を見て、自分がどんな風に育てられたのかを実感する物語。最も短い短編となっているが、じんわりと胸の奥が温かくなる作品に仕上がっている。
感想
家族シアターのテーマは分かりやすく家族の絆です。
短編一つ一つにそれぞれ違う絆が描かれており、どの作品を読んでも読了後には爽やかな気持ちが残る。
ずっと当たり前のように一緒にいるから、喧嘩したりすることもあるが、長く一緒にいるからこそ仲直りする時間があると気づかされる。
家族同士の衝突は、その時は嫌なものだがそれが解消されると愛情へと変化する
また、家族の絆だけでなく家族以外との絆も描かれているのがこの作品の素晴らしさであると思う。
友人同士の絆、親同士の絆など色々な絆があり、本作を読むことで人とのつながりの大切さがわかる。
最後に
本作は、すべての短編が本当に素晴らしい作品となっている。
現在、昔の時代と比べると家族や近隣住民とのつながりは希薄になっている。
そういった関係はあまりよろしくないと思うので大人から子どもまで多くの人に本作を読んでもらい絆を取り戻してもらいたい。