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逸木裕さんの『星空の16進数』を読みました。

書店で表紙とタイトルに惹かれて買った作品でしたが、読了後本作に巡り合うことができて良かったと思えるほど素晴らしい作品でした。

ここまで登場人物が魅力的なミステリー小説はなかなかないのではないのでしょうか。



逸木裕『星空の16進数』

高校を中退してウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉は、"混沌とした色彩の壁"の夢をよく見る。それは当時6歳だった自分が誘拐されたときに見た、おぼろげな記憶。藍葉は、たびたびそれはいったい何だったのだろうかと考える。

真実を知りたい藍葉は私立探偵のみどりと出会い、誘拐事件の犯人の捜索を依頼する。

己の好奇心を満たしながら誘拐犯の数奇な人生をたどっていくみどりと、"色彩の壁"の再現を試みる藍葉はやがて、事件の隠された真相に近づいていくが——。

藍葉とみどりのいびつな個性を持つふたりが出合い、予想を超えた真実にたどりつく。



『星空の16進数』の魅力


『星空の16進数』は依頼主と藍葉と探偵のみどりのダブル主人公で進行していく作品ですが、このふたりの主人公の両方が個性的でとても魅力的です。

ミステリー小説は、どちらかというとミステリー要素が重いことが多く登場人物が魅力的でない作品が多々あるが、本作は登場人物が個性的で本当に魅力的です。


依頼主の藍葉は、話すことが苦手で社会的にはあまり上手くいっていない人物です。しかし、色を識別することが得意という特徴的な能力があります。

普通の人は色を聞かれれば赤色、青色などで答えると思いますが藍葉は違います。藍葉が色を表現するのに使用するのは16進数カラーコード(赤であれば "#ff0000" など)です。この特徴だけで藍葉が芸術性の強い人物であるということが分かります。

物語が進むにつれて読者は藍葉という人物を好きになるでしょう。藍葉が様々な人物と関わることで自分の才能の活かし方や人との接し方を覚えていき徐々に成長していく姿が魅力的です。


探偵のみどりは、一見ミステリー小説によく登場するカッコイイ探偵に見えるのですが、藍葉の依頼を引き受ける裏の目的として自分の欲求を満たすというものがあるため少しクレイジーな人物にも見えます。

みどりの藍葉のために動いているのか自分のために動いているのか分からない不思議なところも魅力的ですね。

その他に登場する人物も個性的でそれぞれの人物に特有の魅力があります。



感想(ネタバレあり)

最初にも書いた通り本当に素晴らしい作品でした。

私は、藍葉ように色の違いを256の3乗である16,777,216通りで表すことができません。それでも本作を読んだことで美術作品の色彩の違いを藍葉のように感じてみたいと思いました。美術館に行って色彩がきれいな作品を見に行きたいな。

以下ネタバレを含みます。






















本作は終わり方がすごくきれいな作品でした。藍葉と朱里がそれぞれ16進数カラーコードと色の和名で今現在自分が見ている色を言い合う場面がたまらなく好きです。最後の場面で朱里は絵が描けなくなってしまったといっていたが藍葉との出会いで改めて絵を描き始めるのではないのでしょか。

先ほども書きましたが本作は登場人物が本当に魅力的でその中でも私は藍葉という人物が最も好きです。人としてもデザイナーとしても成長していってるのが良いなと感じました。

物語の序盤では、藍葉は会社に上手く利用されているウェブデザイナーとして働いていました。同僚の涼子から会社の指示に従っているだけではダメだといわれてもその意味がよく分かっていませんでした。

しかし、黒須に出会ったことをきっかけに藍葉の才能は開花をはじめました。黒須からの仕事の依頼をよく思っていない成貴にたいしてもみどりと出会ったおかげで人間的に成長した藍葉は会話をして成貴に許してもらうという方法をとれるようになりました。

デザイナーとしても朱里の作品を意識した作品しか作れなかった藍葉は、仕事として芸術に向き合うことで朱里以外の作品を参考にその場に適した作品を作れるようになったのにも成長を感じました。

藍葉と黒須の関係ですが黒須は藍葉にとって最終的に色があわない存在でした。これは黒須の名前に入っている黒という字も関係しているのかなと思いました。藍色に黒色が混ざってしまえば藍葉の色がなくなってしまいますからね。黒須はホテルでの行為がなければけっこう好きな人物だったんだけどな。

朱里に憧れて本棚を作り始めたとき、最初は朱里の真似をしていただけですが最後は自分でパレットをコントロールできるようになっており藍葉の成長の集大成だと分かりました。

記事を書いてて気が付いたのですが藍葉と上手くいっている人物の名前に入っている色は藍色と相性がいい気がしますね。


みどりに関しては途中までは探偵としてかっこいいキャラをしているなと思っていたのですが最後の三瀬にワザと自分を殺させようとしたということをしって本当にクレイジーな人物なんだと思いました。

家族ができ子どもも生まれたわけですから浅川のそろそろ落ち着いてほしいという気持ちが分かります。今回の事件をきっかけにみどりは変われるのかな。



おわりに

『星空の16進数』を読めてよかったです。タイトル買いして正解だったな。

読み終わった人と意見を共有したいな。

まだ本作を読んでいない人はぜひ読んでみてください。