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最近、自然言語処理の参考に言語学を勉強したいと思った矢先に本書を見つけたので手に取ってみました。

言語学という学問について基本的な内容が語られており面白い一冊となっていました。


黒田龍之介『はじめての言語学』の要約


本書の構成は以下のようになっています。
  • 第1章:言語学をはじめる前に—ことばについて思い込んでいること
  • 第2章:言語学の考え方—言語学にとって言語とは何か?
  • 第3章:言語学の聴き方—音について
  • 第4章:言語学の捉え方—文法と意味について
  • 第5章:言語学の分け方—世界の言語をどう分類するか
  • 第6章:言語学の使い方ー言語学がわかると何の特になるか?

第1章では、我々が考えている言語学と学問としての言語学のギャップを解説してくれます。

本書を読むまで私の言語学のイメージは現代語や文法についての研究をしているイメージがあったのですが、その他にも語源をたどったりしてるんですね。

意外だったのは、言語学者は言葉の厳密さに対して厳しそうなイメージがあったため若者言葉などは嫌がるのかと思っていましたがそうではないんですね。

言語は常に変化していくものであるというのが言語学者の考え方みたいです。なので若者言葉が存在するのは当然みたいです。

第2章では言語学にとっての言語とはどういったものであるのかを解説しています。

人によっては、猫や犬の鳴き声も言語であると主張する人がいるかもしれませんが、言語学にとっての言語はあくまで人間の喋ることばのみみたいです。

また黒田龍之介さんは、言語は記号の体系であると主張しておりこれはすごくよい表現であると思いました。

言語が記号の体系であるからこそ自然言語をコンピュータで扱うことができるんだと納得いきました。

第3章では言語の音について解説されています。

この章を読んでいて昔第二外国語でフランス語を勉強していたとき上手く発音できなかったのを思い出しました。

言語学を学んでいる人も新しい言語を発音するために苦労しているのが分かりおもしろかったです。

第4章では、文法やことばの意味を言語学ではどのように考えているのかについて言及されています。

教科書に載っているような文法は言語学者の中で絶対のルールであるのだと思っていたのですがそうではないみたいですね。

言語学者によって文法に対する考え方が分かれているみたいでこれを読んで改めて言語学って変な学問だと思いました。

また、言語学者が一番小さい言葉の意味について研究してくれているおかげで形態素解析の技術の発展につながっているんだと改めて思いなおせてよかったです。

第5章では、言語学では世界の言語をどう分類するのかについて解説されています。

言語を分類する方法って政治的に見たりするなど色々あるみたいですが、私は語源に基づいて分類するのが言語と歴史の関係を表しているみたいでいいなと感じました。

日本語の語源ってまだよく分かっていないみたいですがどんな言語と親戚であるのか気になりました。

第6章では言語学を学んだらどういう場面で役立つか語られています。

著者の黒田龍之介さんは、現在外国語学習者を応援する活動をしているみたいなので外国語の勉強の役に立つという考えはすごく説得力があるなと思いました。




どういった人が本書を読むべきか


私が本書を読んだうえで本書を勧めたい人は下記に該当する人だ。
  • 何かしらの外国語を学習している人
  • 言語学に興味がある人
  • 世界史などの歴史に興味がある人

まず外国語を学習している人に勧める理由は、著者の黒田龍之介さんも第六章で語っていたが言語学を知ることは外国語学習者にとってとても有意義なものになると思う。特に世界対応で音を示している国際音声字母(IPA)を知っていればほとんどの言語の発音ができるようになるのでかなり有利に働くのではないのだろうか。

次に言語学に興味がある人に勧める理由は、本書はよく販売されている入門書より一段階優しい本だと感じたからだ。いきなり難しい本を読むより本書を読んだほうが言語学について深く興味が持てるのではないのだろうか。(私は、昔言語学の入門書を読んでいる段階で挫折したことがある)

最後に歴史に興味がある人に勧める理由だが、言語の語源を歴史とあわせて見ていくことができれば非常に楽しめると思ったからだ。語源をたどることで政治的関係なども新たにみつけることができるかもしれない。


本書をお勧めできない人


先程と逆で本書をお勧めできない人は何かしらの形で言語学を学習したことがある人だ。

言語学を学習したことがある人からしてみれば本書は基本的なことについてしか語られていないからあまりためにならないと思う。

本書は様々な言語を例にして説明しているのでそういうのを楽しみたい人であれば読んでいて楽しめるのかもしれない。



まとめ


本書を読むだけでは私の当初の目標であった自然言語処理への応用は叶わなかったがそれでも本書を読んでよかったと思った。

言語学という学問が置くが深くとても面白いものであると知ることができたのは大きい。また今後私が自然言語処理に応用するためには、文法についての言語学を研究している人の書籍や論文を読めばいいと理解することができた。

本記事を読んで言語学に少しでも興味が持てた人にはぜひ本書を読んでもらいたいです。